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輸出管理厳格化の謎  作者: やまのしか
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輸出管理厳格化の謎⑤

「半導体3素材・対韓輸出管理厳格化措置」の謎について、

「6月30日の産経新聞と日経新聞のスクープ」から読み解いていこう。


産経新聞と日経新聞は、同じスクープで、同じ誤報を出した。


経済産業省の正式発表は7月1日であり、スクープは6月30日なのだが、不思議な事に、

産経新聞と日経新聞は「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」という3つの誤った単語を、

何故か、同じように使ってしまったw


このような特ダネは、恐らく政府関係者からのリークであろうが、

これをリークした人は何故「輸出規制」とか「元徴用工問題」とか「対抗」とかの言葉を使用する事を許したのか?


よっぽどの「アホ」でない限り、これらの言葉がWTOで、日本の不利になることぐらい想像できると思うのだが・・・


7月1日に発表される予定の「半導体3素材・対韓輸出管理厳格化措置」は、

半導体を作っている企業には絶対欠かせない「フッ化水素」「フッ化ポリミイド」「レジスト」の3素材の輸出が厳密に管理されるという内容であった。


中でも「99.9999999999%の超高純度フッ化水素」は半導体の微細化開発競争には欠かせない材料で「森田化学工業」「ステラケミファ」「ダイキン」の日本の3企業しか作れない素材であった。


しかも保存がきかないので、これが入手できないと、サムスンとSKハイニクスはロジック半導体の微細化競争に破れ、株価が暴落する恐れがあった。


それゆえ、この「輸出管理厳格化措置」の発動はWTOに提訴される恐れが十分にあった。

ゆえに、決して「制裁」などの疑いがかかるようにやってはいけなかった。

そんな疑いのかかる言動も、絶対慎むべきであった。

にもかかわらず、なんと、その絶対やってはならないミスを、日本はおかしてしまった。


産経新聞と日経新聞は、その危険なワード「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」の入った文章をスクープしたのである。


産経新聞は6月30日AM10:44『半導体材料の対韓輸出を規制 政府 徴用工問題に対抗 来月4日から』という見出しで記事にした。

日経新聞は6月30日PM22:10『半導体材料の対韓輸出規制へ 政府、元徴用工巡り対抗』

という記事を書いた。

https://www.sankei.com/article/20190630-ZGVQX4JAMVLIHBIPYAQ2KIMELA/

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46781000Q9A630C1MM8000/


2つの見出しを並べてみると、不思議な類似点に気づく。


産経『半導体材料の対韓輸出を規制 政府 徴用工問題に対抗 来月4日から』

日経『半導体材料の対韓輸出規制へ 政府、元徴用工巡り対抗』


ほとんど同じ文言が使われているのだ。


「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」という、WTO危険ワードを、何故か両新聞とも、同じように使っている。

これは明らかに、リーク元が、このように書くように、指示したからであろう。


いったい誰が、こういう文章をリークしたのか・・?


経済産業省の職員ではない事は確かだろう。

もし彼らがこのようなリークをしたなら、見つかれば間違いなく懲戒解雇である。


では、首相官邸の誰かか?

確かにこの「輸出管理厳格化」は今井秘書官と長谷川補佐官が主導したといわれている。

しかしながら、彼らがこんなポカをおかすだろうか・・・?

彼らは優秀な経済産業省の官僚である。

WTO提訴に発展した場合、こんなリーク記事が、日本の命取りになる。

それでなくとも日本はWTOで韓国に逆転敗訴したばかりだった。

福島原発事故に基づく福島県を含む(8県)の水産物輸入規制問題において、日本は2015年WTO違反だと韓国を提訴した。

2018年小委員会(第1審)では日本は勝訴した。

しかし、韓国が上告し、2919年4月11日大委員会(第2審)で、なんと逆転敗訴してしまった。


WTOは2審制なので、これで判決が確定し、韓国の福島原発事故による水産物輸入規制は合法だと、WTOがお墨付きを与える形になってしまった。

それから2ヶ月も経っていない2019年6月30日に、今井尚哉や長谷川榮一といった優秀な官僚が、あんなメリットのない、危ないリークをするだろうか・・・?

まずあり得ないだろう。


彼らの在籍する経済産業省は2006年にもSKハイニクスのDRAMに対して相殺関税を課し、韓国がWTOに提訴し、課税は違法と敗訴していた。

要するに今井秘書官と長谷川首相補佐官はWTOにおける韓国の怖さを十分にわかっていた。

今回発動する「輸出管理厳格化措置」は、決してWTOで楽勝できるような案件ではない事は、彼らはよく知っていたはずである。

ゆえに彼らがこのような危ないリークをするはずがないのである。

元徴用工問題に対する「経済制裁」「対抗措置」だと思われてはいけない。

韓国の安全保障上の貿易管理の問題だとしなければいけないことは、この二人は、誰よりもよくわかっていたはずである。

ゆえに、決して「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」などという言葉を使ったリーク記事を産経新聞や日経新聞に書かせるはずがないのである。

では、誰が、産経新聞と日経新聞にリークしたのだろう。

もうお分かりだろう。

そんなアホなリークをする人は、安倍晋三しかいないのである。


愚かなことに、安倍晋三が、7月1日の経産省の発表を待たずして、6月30日に産経新聞と日経新聞に「対韓国半導体3素材・輸出管理厳格化措置発動」をリークしてしまった。

それも今井秘書官や長谷川首相補佐官がWTO対策のため入念に立てた計画を無視して、安倍は「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」という危険なNGワードを使った文章で、大々的に韓国に脅しをかけるようなスクープを産経新聞に書かせてしまったのだ。


G20大阪サミット閉会直後に、トランプ大統領と金正恩が板門店で会談をすることをメディアが流した。

このせいで安倍さんの閉会式のスピーチが翌日の朝刊に載ることはなくなった。

世界のトップニュースから大阪サミットは弾き飛ばされてしまった。

安倍さんの文在寅への怒りは輸出規制スクープという仕返しを産んだ。

安倍さんは、翌日の産経新聞朝刊に韓国の半導体メーカーが震え上がるであろうフッ化水素禁輸が頭をよぎるような記事を書かせた。

『半導体材料の対韓輸出を規制 政府 徴用工問題に対抗 来月4日から』という見出しがそれだ。


恐らく、今井秘書官、長谷川補佐官らは、なにも知らなかった。

6月30日の朝刊を見てびっくりしただろう。

それでなくても両名は、今回の輸出管理厳格化によって半導体市場が混乱しないように、

前もって半導体、株式市場関係者に、入念な根回しをしていた。

彼らは本気でフッ化水素を禁輸するつもりはなかった。

あくまで文在寅への恫喝が目的だった。

市場がパニックにならないように「輸出管理厳格化」はポーズであると根回ししておいたゆえ、

6月30日のスクープでも、サムスン、SKハイニクス株は変動すらしなかった。

半導体市場は全く記事に反応しなかった。

しかし、今井秘書官らのこれらの根回しは、残念ながら文在寅にも知られてしまった。


文在寅は日本の輸出管理厳格化措置が発動されることを恐らく予期していた。

そしてそれはハッタリでフッ化水素は実際には止まらないということも。

ゆえに安倍の流したスクープにオーバーリアクションをすることで、

WTOへのアドバンテージを取る作戦に出た。


安倍晋三も回顧録では「元徴用工問題」と「輸出管理厳格化」がリンクするよう仕掛けた、と述べているが、あれはたぶん安倍さんの嘘である。

実際は、感情的に輸出管理厳格化措置をリークし後悔したのだと思う。

文在寅を恫喝するつもりが、そのハッタリが見破られ、逆にWTOに提訴すると大騒ぎされ、

半導体素材の輸出許可を止めて脅かすことすらできなくなった。

ゆえに輸出管理厳格化措置は最初はハッタリではあったが、

元徴用工問題の対抗措置として発動されたのである。

ただ、すぐにハッタリだと文在寅に見破られ、WTO違反だと大騒ぎされたので、

対抗措置だという姿勢は引っ込めてしまった。

ゆえに、対抗措置であったにもかかわらず、実際には全く輸出は止まらなかったのである。


安倍の稚拙なNGワードを含んだリークが、今井と長谷川のせっかくの計画を台無しにしたのだ。

「元徴用工問題」「輸出管理厳格化措置」この2つは決してリンクさせてはいけなかったのだ。

首相官邸も経産省職員もみんなわかっていたのに、一人、安倍晋三だけが、それを理解していなかった。


安倍晋三は文在寅を恫喝をしようと、産経新聞と日経新聞に「半導体3素材輸出規制」と書かせた。

それを知った今井と長谷川は、大変なことになったと必死で打開策を検討した。

その結果、捻り出した案が、「元徴用工問題」は「輸出管理厳格化措置発動」の原因の1つではあるが、対抗措置ではない、という屁理屈である。


新聞に出た「輸出規制」は誤報だとし、誰もが皆、口裏を合わせ「元徴用工問題の対抗措置だなんてとんでもない誤解だ」と言い張るという作戦に出た。


それで文在寅がWTO提訴をせずに折れてくれれば万々歳だが、稚拙な計画となった。

文在寅はおれなかった。

すぐにWTO提訴を叫び大袈裟に被害者を演じて見せた。


経産省は粛々と個別許可を出さざるをえなくなった。

少しても輸出許可が滞り、韓国半導体企業に影響が出れば、それがWTOに違法な輸出規制と見られるリスクが出てきたからだ。

新聞に「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」と書かれた事は、大きなマイナスであった。


7月3日の安倍晋三の記者会見がおこなわれた。

このときには全てが終わっていた。

同日、世耕弘成のツイッターに解説が載った。

安倍さんは「元徴用工問題」によって国と国の信頼関係が損なわれたので、輸出管理を強化するのは当然だ、「元徴用工問題」と「輸出管理厳格化措置」は次元の違う問題だ、その発動要因はあくまでも「韓国の安全保障上の貿易管理の信頼性が揺らいだから」であると説明した。


しかし、どう考えても、次元の違う問題ではなく、元徴用工問題は輸出管理厳格化措置の原因の1つであり、同次元の問題であった。


世耕弘成はツイッターでこう呟いた。


「更に今年に入ってこれまで両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ、その上で、旧朝鮮半島出身労働者問題については、G20までに満足する解決策が示されず、関係省庁で相談した結果、信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない。」


元徴用工問題と輸出管理厳格化措置は原因と結果であり、いくら輸出管理厳格化措置発動の理由を国と国の信頼関係の欠如だと強調したところで、その国と国との信頼関係を壊したのが元徴用工問題である以上、元徴用工問題の対抗措置として輸出管理厳格化措置が発動されたと見なされるのは、避けようのない流れである。


今井・長谷川の当初の計画では、フッ化水素などの重要物質を個別許可にすれば、あとは個人の裁量で輸出を滞らせることは容易にできる。

十分に脅しの材料として使える。

たとえ韓国側がWTO違反だと大袈裟に騒いだとしても、

こっちは安全保障の問題だと突っぱねる事もできる・・・はずだった。

しかし、現実は、下手なスクープのせいで「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」という言葉が独り歩きし、WTOに大きな影響を与える流れになってしまった。


日本政府は困っていたが、逆に日本国民は大いに盛り上がっていた。

「安倍さんがついに経済制裁に出た」と安倍さん応援団がネットに溢れ、安倍さん頑張れと支持する声がパブリックコメントに溢れた。


経済産業省はWTO対策のためフッ化水素輸出量を減らすわけにはいかず、かといって減ってなかったら日本国民に「輸出管理厳格化」はただのポーズだったのかと強い失望と怒りを買うので、まさに板挟みの状態であった。


ゆえに貿易統計で記載されるフッ化水素の項目を「フッ化水素」(SH2811.11-000)を「再輸出品」(SH0000.00-190)に変更するように企業に指導し、貿易統計ではフッ化水素の対韓輸出量が激減してるように見えるように細工した。

ゆえに8月のフッ化水素の対韓輸出量は0になった。



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