輸出管理厳格化の謎④
「輸出管理厳格化措置」を経済産業省が正式発表したのは7月1日でした。
7月1日、経済産業省HP『大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて』
https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190701006/20190701006.html
しかし、日本国民は、前日6月30日に、新聞報道で知った。
6月30日、産経新聞、AM10:44『半導体材料の対韓輸出を規制 政府 徴用工問題に対抗 来月4日から』
https://www.sankei.com/article/20190630-ZGVQX4JAMVLIHBIPYAQ2KIMELA/
日経新聞、6月30日、22:10
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46781000Q9A630C1MM8000/
『半導体材料の対韓輸出規制へ 政府、元徴用工巡り対抗』
さて、ここで皆様に考えてもらいたいのは、
①何故、産経新聞も日経新聞も、経済産業省の発表前にスクープできたのか?
②何故、両新聞とも「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」という言葉が使われているのか?
皆様、よく考えてください。
普通、新聞社がスクープを出すとき、だいたいリークがネタ元です。
政治関係のスクープの場合ほぼ100%が関係者のリークです。
では、ここで考えられるリーク元はどこでしょう。
たぶん首相官邸です。
「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」のワードは、リーク元の指示で使われた可能性が高い。
そうでなければ、産経新聞と日経新聞が、同じワードを間違えて選ぶはずがない。
つまり、首相官邸の誰かが、何らかの狙いを持って、産経新聞に「輸出管理厳格化措置発動」を「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」を絡めて記事にするようリークしたわけです。
日経新聞は産経新聞のスクープの裏を取って「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」というワードを使って6月30日22:10に記事にした。
首相官邸に指示された新聞社および記者は「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」という文言を使うよう首相官邸に誰かに指示されていたわけです。
つまり新聞社や記者が、先走って使ったのではなく、首相官邸の要望で、「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」が使われたと推察されるのです。
そして、その発信元は安倍総理ではなかったか・・・と、カニは推察いたしておる次第です。
では、なぜ、安倍首相は、「輸出管理厳格化」を「輸出規制」に、さらに「元徴用工問題」に「対抗」した措置であるかのように、スクープ記事を書かせたのか?
そこには、ちゃんと理由があります。
まず、安倍さんは、回顧録で供述してるように「輸出管理厳格化措置」が「元徴用工問題」への対抗措置であるかのように、敢えて、わざと、見せかけようと、仕組まれたものであることを、安倍晋三回顧録の原文から理解したいと思う。
安倍晋三回顧録の第10章一部を掲載します。
韓国、GSOMIA破棄へ 日韓関係は悪化の一途
ー韓国向けの輸出管理の厳格化について聞きます。
まず、7月1日経済産業省は半導体の洗浄に使うフッ化水素など3品目について不適切な事案が見つかったとして外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいて規制を強化し、個別の申請と許可を必要としました。
実質的な輸出制限ともいえます。
8月2日には政令を改正し輸出手続きの簡略化という優遇措置を受けられる対象国27カ国から韓国を除外し、3品目以外についても個別申請を求めることにしました。
一連の対韓措置の理由は何ですか。
韓国は日本との関係の基盤を損なう対応をしてきたわけです。
2018年秋に、日本企業に元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)への賠償を命じる判決を確定させ、その後も何ら解決策を講じようとしていなかった。
そうした文在寅政権にどう対応していくかという問題が、輸出規制の強化につながりました。
もちろん韓国の半導体材料に安全保障上の懸念があったのは事実です。
でも、信頼関係があれば、もう少し違った対応を取ったでしょう。
政府としては、輸出管理の厳格化と徴用工問題は「全く次元のことなる問題だ」という立場を取りました。
ただ、私は「国と国との約束が守れない中において、貿易管理は当然だ」とも述べました。
敢えて二つの問題がリンクしているかのように示したのは、韓国に元徴用工の問題を深刻に受け止めてもらうためでした。
ー韓国政府は8月22日、日本への対抗措置として日韓間で秘密情報を交換するための軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めました。
米国からの強い要請を受けて、結果的に韓国は協定の有効期限が切れる11月に破棄を撤回しましたが、この韓国のGSOMIA破棄を日本側は織り込み済みでしたか。
いや驚きました。
安全保障の問題を理由に輸出管理を厳格化する日本の措置は、自由貿易を原則とする世界貿易機関(WTO)のルールでも認められているわけです。
一方、彼らは、単に感情的になってGSOMIAの破棄を言い出しました。
対抗措置を取るなら、普通はもう少し建設的なことを考えるでしょう。
しかも、米国にとっても日韓間の情報共有が重要だという視点が抜け落ちていたから、米国の不信を買ったのです。
ー米国にとって日韓はともに東アジアの重要な同盟国なので、両国の対立激化は、アジア太平洋地域における米国の影響力低下につながりかねません。
このため、米国はマーク・エスパー国防長官が訪韓し文在寅大統領にGSOMIAの継続を迫りました。
米国の韓国に対する圧力はすごかった。
日米韓の安全保障協力が台無しになれば、北朝鮮政策を見直さなくてはならない。
それにミサイル発車情報などを日韓で共有できなくなったら、常に米国を介して日韓で情報を交換することにもなりかねません。
そんなことまで米軍は、やっていられないでしょう。
ー輸出管理の厳格化を発案したのは誰ですか?
経済産業省です。
経産省出身の今井尚哉政務秘書官と長谷川栄一首相補佐官がかかわりました。
かつて中国が、ハイブリット車のモーターなどに必要なレアアース(希土類)の輸出枠を削減し、WTOのルールに違反すると認定されたことがあります。
日本の韓国への措置は、輸出の手続きを厳しくするだけで、輸出制限とは異なるので、WTO上、問題ありません。
こうした手法を考え出した今井さんや長谷川さんはさすがだなと思いました。