輸出管理厳格化の謎③
荘子の言葉にこういうのがあります。
物は彼に非ざるは無く、物は是に非ざるはなし。
彼よりすれば則ち見えず、自ら知れば則ち之を知る。
故に曰く、「彼は是に出で、是もまた彼に因る(よる)」と。
[現代語訳]
物はあれ(他)でないものはなく、物はこれ(私)でないものはない。他の立場からすれば見えないものも、私の立場から知ろうとすれば知ることができる。だから、「あれはこれから出て、これもまたあれに拠っている」というのだ。
さて、
「輸出管理厳格化措置」の発動原因に「元徴用工問題」があることを証明してみよう。
ちょっと長くなるが、皆様の記憶を2019年6月29日に巻き戻してもらいたい。
当時、G20大阪サミットに出席するため日本を訪れていたトランプ大統領は29日午前8時ツイッターに「もし北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長がこのツイートを見れば、南北の軍事境界線でキム委員長と会い、挨拶と握手をするだろう」と書き込み、キム委員長との会談に突如意欲を示した。
29日午後、G20サミットが終わるとトランプ大統領は韓国に向かい、晩餐会に出席した。
30日午前11時すぎからソウルでムン・ジェイン大統領と首脳会談を行った。
午後1時すぎ、会談後に行われた共同記者会見でトランプ大統領は「このあとDMZに向かい、キム委員長に会う」と述べ、米朝首脳会談が行われることを明らかにした。
これらは後に報道された「板門店会談」についての時系列だが、まさか信じる人はいないだろう。
分刻みでスケジュールが決めてある米大統領が、思いつきで停戦中の朝鮮半島DMZへ乗り込み首脳会談ができるわけがない。
ましてや米朝首脳会談がツイッターでセッティングされるはずもないw
ちゃんと数日前から準備は整っていたはずだ。
要するにG20大阪サミット閉会式の安倍さんのスピーチが、翌日の朝刊にも載らず、世界から見向きもされずに色褪せたものになってしまう事は、この板門店会談が設置された時点で既に決まっていたのです。
ただ安倍さんはまだその事を知らなかった。
さて「半導体3素材禁輸」最初にこのような突拍子もない飛ばし記事を流したメディアはどこだったか・・・残念ながら「禁輸」の文言の入った記事の魚拓は残ってない。
しかし、カニ太郎の記憶には『禁輸』という飛ばし記事が6月30日朝にネット上にあった事をちゃんと記憶している、残念ながらもう消えてしまった。
しかし、『輸出規制』『元徴用工問題』『対抗』の入った飛ばし記事の魚拓はまだ残っている。
6月30日、産経新聞のスクープはAM10:44
『半導体材料の対韓輸出を規制 政府 徴用工問題に対抗 来月4日から』
という見出しであった。
次に早かったのが日経新聞 6月30日22:10
見出は『半導体材料の対韓輸出規制へ 政府、元徴用工巡り対抗』
そして、翌日7月1日、経済産業省HPに
『大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて』とプレスリリースが載った。
さて、ここで皆さんに考えてもらいたいのは・・・
①何故、産経新聞も日経新聞も、経済産業省の発表前にスクープできたのか?
もう一つ、
②何故「輸出管理厳格化」ではなくて「輸出規制」と書かれ、「元徴用工問題・対抗」とNGワードが2紙共に使われているのか?
さあ、どう推理しますか?
このスクープは、普通に考えたら官邸周辺からのリークであったとしか考えられないでしょう。
それでは、何故、「輸出規制」「元徴用工問題」「対抗」というワードが使われたのか?
これも簡単に推測できる、「恫喝」でしょw
新聞社が勝手に勇み足で付け足したのか?
いやいや、まさか、そんなことはしないでしょ、そんなことすれば2度とスクープはもらえなくなる。
だとすると、ワザとそのようにリークし書かせた、とみるしかないでしょう。
もう見つからないと思っていた経済産業省の2019年9月27日の通達、
「8月の韓国向けフッ化水素について」のプレスリリースが見つかりました。
やっぱり魚拓は本物がいいと思い添付します。
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11482617/www.meti.go.jp/press/2019/09/20190927005/20190927005.html
これを見て、わかるように「フッ化水素」は国内における加工・製造の工程等によって、「フッ化水素(HS2811.11-000)」以外にも「再輸出品(HS0000.00-190)」として計上される場合もあります。
ゆえに貿易統計だけを見ても、韓国への輸出量はわかりません。
「SH2811.11-000」(フッ化水素)「SH0000.00-190」(再輸出品)のグラフがこれです。
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nou_yunyun/20191002/20191002161236.png
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nou_yunyun/20191002/20191002161153.png
この二つを見比べるとわかるように、2019年のフッ化水素「SH2811.11-000」の対韓輸出は金額ベースでも量ベースでも大きく落ち込んでいます。
2019年6月は3,000t、6億円あった「SH2811.11-000」(フッ化水素)が、
2019年8月には0t、0円になっています。
しかし、再輸出品「SH0000.00-190」の対韓輸出データを見れば、金額ベースでも量ベースでも変化ないということがわかると思います。
2019年6月は3万t、680億円あった「SH0000.00-190」(再輸出品)が、
2019年8月は5万t、630億円となっています。
これでは、対韓輸出管理厳格化で、フッ化水素の対韓輸出が減っているのか、全くわかりません。
再輸出品「SH000.00-190」の総額はフッ化水素「SH2811.11-000」の約100倍あるゆえ、少々フッ化水素の輸出が減少したって、わからないということです。
「SH0000.OO-190」(再輸出品)の中に「フッ化水素」がどの程度占めてるのかわかればいいのですが「SH0000.OO-190」(再輸出品)の中はブラックボックスになっていて、私たちには内容まではわかりません。
さて、だいたいのフッ化水素輸出関連において、
貿易統計のデータの見方はわかったと思います。