一般兵士、村の危機を救う
18歳になった俺は農作業を手伝いながら、カイトは村長の仕事を手伝いながら共に剣の修行をしていた流石に息切れまで打ち込ませるとは行かなくなってきたため、隙を見つけては反撃を繰り出すようになっていった。
ガァンと木剣が飛ぶ今回もギリギリのラインで勝てた、危なかったなと冷や汗をかいていると
「流石だな相棒」
「カイトこそ前より隙が無いじゃないか次は負けるかも知れないな、もっと練習を重ねないとな」
「うげぇ、まだ強くなるつもりかよ」
「当たり前だ、死にたくないからな」
時々だが俺とカイト、村の番兵達とで村の安全の為森の中を探索するようになった主に狼の魔物が現れるが猪の魔物、ゴブリンを時々見ることがあった特にゴブリンと戦って切り倒したときカイトは自分が人を切ったと勘違いして怯えていたがゴブリンの生態について話すと「それはなんて下劣なやつなんだ!」と激昂していた、元気になったのはいいがゴブリン専門のハンターになるとか考えるなよ…?
「そういやカイト、魔法練習の調子はどうだ?」
「もう少しでコツが掴めそうなんだ、ジョンが言ってた通り杭みたいなものがなかなか抜けなくてな」
「俺も魔力を感じるまで時間かかったし気長に行こうぜ」
「ジョンはいつも身体強化と魔法防御ばっかり練習してるよな攻撃魔法とか使わないのか?こう、おばさんがしてたドカーンといく魔法とか使わないのか?」
「咄嗟に自分の身を守れるようにしたいからな先ずは防御を出来るだけ鍛えようと思ってね何れは攻撃も覚えるつもりだよ」
魔力を使えるようになって以降、俺は特に身体強化、防御魔法を鍛えていた、今の軽装でも前世の重騎士並の防御力はあるだろうな、
しかし母さんは「魔法は型に囚われないものよもっと自由になりなさい」と教えてくれていた
自由、ねぇ前世の兵士としては型に当てはめたことが多かったからか中々うまく行かないものだ、
母さんになんで炎の槍が得意なのか聞いたら後ろから親父が「説明しよう!それはおれが冒険者の頃槍使いだったからだ!」とドヤ顔をしていた
母さんは恥ずかしそうに親父に炎の槍を連射していた、照れ隠しにしては激しいな…
それで肝心な攻撃魔法は炎の球を投げることはできるようにはなったのだが焚火程度にしかならなかった「練習あるのみね」と母さんは懐かしそうに見ていた
ある日、親父が
「これからしばらく森に入らないようにな」
「どうして?」
「どうやら強力な魔物が現れたようなんだ、冒険者を雇って退治してもらうから暫くはだめだぞ」
「了解、森には入らないようにしとくよ」
「カイト、森に強力な魔物が現れて冒険者を雇うらしいな」
「そうなんだよ!冒険者かぁ、楽しみだなぁ」
「なんだよ、冒険者まだ諦めてなかったのか」
「うーん、憧れではあるけど今は村の為に働きたいかなって思っててさ、どんな装備をしているとかどんな生活をしているとか知りたいだろ?」
「それはわかる、俺も気になるなぁ、親父は冒険者の頃の話になると母さんとの惚気話になるし全然どんな感じだったかわからないんだよ」
「だろ?」
数日後例の冒険者達がやってきたカイトは興奮気味に装備はどうだとかどんな所に行ったのかあの魔物とは戦ったのかと質問攻めをしている、冒険者達が困ってそうなので
「そろそろ、そこまでにしておけよカイト、冒険者達が困っているじゃないか」
「えー、でもジョンも気になるだろ?特に魔力の使い方とかさ!」
「それは、まぁ確かに気になるが…」
冒険者パーティは剣士、魔法使い、弓使い、僧侶とバランスが取れたチームだった、今はカイトは剣士の戦い方が知りたい用でその人ばっかりに話を聞いていた
「すみません、友人が昔冒険者に憧れていたもので…」
「いえいえ、いいんですよーわたしたちも冒険者に憧れて始めたので、良ければ今日だけ魔法や魔力の使い方お教えしましょうか?」
「いいんですか!?」
「もちろん、貴方も本当は聞きたそうにしていていたので」
と笑いながら魔法使いは笑っていた、そんなに表情に出ていたかな、ちょっと恥ずかしいなと思いながら、魔力操作や炎以外の魔法、僧侶に治癒の魔法のやり方を教わった、勿論すぐには使えるわけでないそれでも魔法を使いたいという好奇心が心を動かしていた。
次の日からは冒険者達が森の中に入っていったカイトも行きたそうにしていたが止めた
「なんで行かせてくれないんだよー」
「いやいや村長の後継ぎが怪我でもしたらまずいだろ」
「ちぇっ、つまんねぇの」
「まぁまぁ、あの剣士からいろいろ教えてもらったんだろ?手合わせしようぜ」
「おう!今日こそは勝ってみせるからな!」
と機嫌取りに成功した俺は今日もカイトと手合わせをする、まぁ元兵士としては足払いとかしてなかったしそれを仕掛けてくるだろうな、と思っていたら案の定仕掛けてきたのでジャンプしてそのままがら空きのカイトにポカリとしてやった
「いてっ」
「いきなり仕掛けてくるとはまだまだだな」
「くそーまぁいきなり小細工仕掛けるのもおかしな話だしな所で魔法の授業はどうだったんだ?何か掴めたか?」
「全体的にショボい球を出せるようにはなった、牽制にしかならないけどな」
「それでも覚えられたのならすげぇよジョンはいつかすげー魔法もつかえるって!」
「ははっ、だといいな」
実際に色々な属性の魔法が使えるようになった炎、水、雷、風、土、そして治癒魔法どれも球を投げつけたり擦り傷を治したりする程度だが使えるようになった魔法使いと僧侶の教えが良かったのだろう「魔法の威力を上げるには魔力の質を上げていくことが必要だよ、毎日お祈りや精神修行など自分の魔力と向き合うのがおすすめだよ」なるほどと早速訓練に取り入れようとしたが中々時間が取れないうえ前世からの訓練内容を変えるのに抵抗があったため中々決心がつかないのだ、取り敢えずゆっくり考えようと思いながらカイトと手合わせを続けていた
冒険者達がボロボロになって帰ってきた、訳を聞くとブラッドベアーなる魔熊だったそうだこの魔熊は並の攻撃では歯が立たず追い返す程度が精一杯だったようだ村長が冒険者でも太刀打ち出来ないとは王国に連絡するか?と呟いていると村中に響き渡るような鳴き声が聞こえた、
まさかと思い外に出るとそこには血に濡れたような赤い色をした熊がいた
「まさか、あれがブラッドベアーですか!?」
「そうだ追い返したはずなのになぜ、ここに!」
「そんな事はどうでもいい村を守るぞ!」
冒険者達が家を飛び出し魔熊と戦い始めるが苦戦しているようだ、俺とカイトは目を合わせ頷く
「ジョン行くぞ!」
「あぁ、行こう!」
「なにをする!止まれ!」
「俺たちも加勢します!」
「だが、君たちは冒険者じゃ…」
「気を引く事はできます!」
「くそっ、わかった無理するなよ!」
「わかってますよ!俺もジョンも死ぬ気はありませんよ!」
斬りかかるがびくもとしないなるほど生半可な攻撃では通用しないということか、ならば身体強化での斬撃ならどうだ!
全身に魔力をまとい右腕に斬りかかると切り落とせは出来ずとも少しだけ切り傷が入った、長期戦になるかもしれないが行けると思っていたが傷つけられたことに激昂し更に暴れ始める
「ぐおっ」
冒険者の剣士がふっ飛ばされ真ん中が空いてしまった、このままでは魔法使い達が標的にされてしまう彼らは近接戦が得意ではない、急いで魔熊の真正面に立つ
「ジョンなにをしてるんだ!」
「回復させるまで俺たちで時間を稼ぐんだ、やるぞ!」
魔熊が爪を振り下ろす身体強化をしていてもふっ飛ばされそうな衝撃が襲ってくる、魔法使いが風の槍をぶつけるもあまり効いてなさそうだった、剣で受け止めるたび折れそうになる、あと何度耐えられるのかと思いつつカイトの方を見るカイトは目を閉じ何かをしているようだ、…今ここで魔力を掴むつもりか?
無茶苦茶だがなんだかやってくれそうな気がする…信じてるぞ相棒!
ガァン!と大きな音がするパリッと何がが砕ける音がする、当たり前だ、この魔熊との撃ち合いで刃が砕けていっている大切な剣だがもう使えないだろうな…だが時間を稼ぐことはできる、魔熊が大きく爪を振り下ろしてくる、よしもう一発弾き返す!
ガァン! ピシッ…
ん、ピシッ?ガランと剣が真ん中から罅が入っていた、まずい!
この剣は次は受け止めることができずに折れるぞ!
止めと言わんばかりに反対の爪を振りかざす、どうする受けるか、避けるか?と考えたその時、カイトから光の柱が立ち昇る、アイツあんなに魔力あったのか…そんな事より避けなければ!
ギリギリのラインで躱し魔熊の目に折れかけた剣を目に突き刺す、すると罅がはいったところからポキリと折れてしまった、しかしこれで魔熊に隙ができた!
「カイト!とどめを刺してくれ!」
「任せろ!相棒!」
全身に包まれる魔力が剣に集中していく、剣に魔力を纏わせることもできるのか…カイトが剣を振り上げる
「トドメだっ!」
ザンッッと魔熊の首が切り落とされるあっさりと切り落としてくれるものだ
「すげぇ、技だったなカイト、今度教えてくれよ」
「もちろんさ!でもまずは叱られるところからだな…」
村長と親父が怒り顔でやってくる、剣も折っちゃったしこれはまずいなぁ、しかし村を守れて良かったな