ドリフトする一般兵士
人生とは、果敢な冒険かつまらないものかのいずれかである、であれば俺は恐らくつまらない方なのだろう。
これまでは
夜が明ける頃、城の門番の交代として先輩がくる
「よう、底無し今日も夜の当番ご苦労さん」
「だから底無しって呼ぶの止めてもらえませんかね、大喰いに見られるんですよ…」
「実際に大喰いじゃねえか、これが終わったら食堂の定食を大盛り食うんだろ?」
「うっ…まぁそうですけど…」
事実だが若い男だから許してほしい…
「まぁ、お前さんの底無しの由来はみんな知ってるって」
と笑いながら肩を叩く
国の兵士になるための体力テストで延々と走り続けたことから付いたあだ名が底無しそれ以外のテストでは他の兵士となんら変わらない結果だった、だからだろう夜の番が一番多くなっている、自分も夜に門番をして昼は個人的なトレーニングや食べ歩きなどをしてそれに満足している。
「では、お疲れさまです先輩」
「おう、おつかれさん」
さて今日は食堂で何を食おうかと考えながら兵舎に戻ろうとした時だった。
ドーンッと大きな音が城から聞こえてきた。
あの場所は姫様の寝室だ!
「先輩!確認してきます!」
「急げ!厳戒態勢だ!」
急いで姫様の寝室に向かう途中更に大きな音がした、何が起きているか分からないが急ぎ姫様の部屋に向かわねば!
「姫様!ご無事ですか!?」
と言いながら扉を開けるすると魔物と気絶して魔物に担がれている姫様がいた。
「魔物だと!?姫様から離れろ!」
魔物はこちらには目もくれず破壊された壁から飛び立っていった。
「くっ!早く王に知らせねば」
王の寝室はそこまで遠くない先程の音と言いなにが起きているのかは気になるがまずはこのことを知らせねば
「王よ、至急の知らせがございます!」
「わかっておる、なにがあった?」
「姫様が魔物に攫われました!」
「なに?すぐに捜索の手配…」
言いかけたところで別の兵士が慌てて入ってくる
「王様!魔物が街だけでなく城内も攻撃を受けております!」
王様が外を見る、そこは多くの魔物が街を蹂躙している光景だった。
「兵士たちはどうしている」
「城内の魔物と交戦中です!街にも兵を出していますが苦戦している模様です」
「他国から救援を呼ぶしかあるまい…誰か行ける者は居らぬか?」
「でしたらこちらの底無しのヴィッツがよろしいかと」
と先程入ってきた兵士が言う
「なるほど…では王によって命ずるこのディストラ国の危機を隣国ジェネレ王国に伝えるのだ!」
俺は立ち上がり敬礼する
「はっ!その命令、命を賭してでもやり遂げます!」
「急ぐのだ頼むぞ!」
俺は急いで城を飛び出した、門を見ると先輩が戦っている
「行け!ヴィッツ!お前が救援を呼ぶんだろう?早く行け!」
「はい!」
俺は走り出した、街中では悲鳴や破壊音が聞こえる、途中ちらりと馴染みの店が破壊された跡を見つけた、店主は無事だといいのだが…って急がねば!
道中は険しい森や山、自分の武器や技量では太刀打ち出来ない魔物が多くいた逃げつつ怪我を負いそれでも走り続けた
隣国ジェネレ王国
「誰だ!」
と門番が言う当たり前だろう血だらけで目の前に現れたのだから
「ディストラ王国の兵士、ヴィッツと申します!救援を要請したいため国王に面会を願いたい!急ぎの件なんだ、頼む!」
と血を吐きながらいう、最後に現れた魔物の一撃が響いたようだ。
そして
「報告します!ディストラ王国で魔物が現れ姫様が攫われ国を蹂躙しています!どうか救援を…」
視界がグラリと揺れる辿り着き力が尽き果てたようだった
かすかに聞こえるのはジェネレ国王が何か指示を出し俺になにか話しかける声だった
こうして忠義の兵、底無しのヴィッツの人生は幕を閉じたのだった…