第6話 俺の好みはお姉さんだけ
俺の名前は松平康太。
一般的な高校生だが、1つだけちょっと違うことがある。
「なぁ康太。なんでそんな大人の女性向けの雑誌を読んでるんだ?」
「そりゃあ俺好みの年上のきれいなお姉さんが見たい放題だからに決まってるだろう。それに年上のお姉さんと仲良く話すなら、その人達と話しやすくするために流行を知ることも大事なはずだ」
そう俺は昔からずっとずーっと年上のお姉さんが好きなのだ。知と美をきちんと身に着けた女性が好きなのだ。よってJKには全く興味がない。
「はぁ、まったくお前は、まぁ一貫してるからむしろすがすがしいといえばすがすがしいが」
クラスメイトに呆れられることも多かったが、そんなことは気にしない。
そんなある日、うちのクラスに転校生がやってきた。
「皆様始めまして、中山桃です。よろしくお願いします」
転校生がかわいらしい女子ということもあって、男子を中心に非常に教室が浮足立った。
まぁ確かにかわいい子ではある。だが俺には全く響かない。
全体的に小さめの体格で、完全に妹キャラである。
俺はそれより……。
「そして実習生の武藤先生だ。しばらく実習生として授業に参加するからよろしく」
「武藤裕子です。よろしくお願いします」
実習生のお姉さん先生の方が好みだ。
転校生の中山はかわいらしくて、すぐに人気者になったが、俺は武藤先生に話にいくので夢中だった。
するとちょっとおかしなことになってしまった。
クラスの男子もほぼ全員がちやほやしている中、ほぼ興味を示さない俺に逆に気になったのか、俺に中山が絡むようになってきたのだ。
「ねぇねぇ松平君。放課後に買い物に付き合ってくれない?」
「いやいやほかの人に頼んだ方がいいと思いますよ。みんな喜んで引き受けてくれるだろうし」
「いやいや、私は松平君がいいから松平君を誘ってるんだけど」
「すいません、放課後は忙しいので」
「えー、松平君は帰宅部でしょう?」
「はい、だから頑張って帰宅するんです」
「へー、じゃあいつなら空いてるの?」
「さぁ?」
「もう! 今度空いてる日があったら教えてよね!」
俺が適当に答えてると、中山は怒ってあっちに行ってしまう。しかしあれだけ適当に突き放したのに、あきらめてくれないのか。
「おいおい、桃ちゃん側から誘ってくれてるのに断るのかよ……」
クラスメイトからは相変わらず呆れられるが。
「うーん、でも俺は騒がしい子は苦手だし、子供っぽいし……俺は是非武藤先生みたいな美人さんとデートしてみたい……」
「桃ちゃんかわいそうすぎる……」
そんなこんなで中山の攻撃を避けていたある日、
中山が下校中に他校の男子生徒に絡まれているのを見てしまった。
ナンパされてるっぽいな。まぁ小さいけど見た目は少なくともかわいいからな。
「すいません、急いでいるのでどいてください……」
「はぁ? もったいぶってるんじゃねぇよ。連絡先くらい教えてくれ」
「中山、どうした?」
まぁ好みの女性かどうかは別として、クラスメイトである以上は助けの手を差し伸べる。
「松平君!」
中山は涙目だったが、俺を見て少し安心そうな顔を浮かべる。
「な、なんだお前は関係ないだろ」
「いえいえ、俺は中山のクラスメイトで、中山、この後確か家に行く用事があったよな。忘れて先に帰っちまったのか?」
「う、うんごめんうっかりしてて」
「というわけで、俺と用事があるので、ここはおかえりください」
「ちっ」
俺はもちろん中山の家に行く用事などない。適当なことを言った。それに中山ものってきて、うまくあしらうことができた。
「松平君、助けてくれてありがとう」
俺の制服の裾をつかんで中山がお礼を言ってくる。
「いえいえ、このままじゃ心配ですから、家まで送りますよ」
こうして俺は中山を家まで送ることになった。
「まぁ! 桃、どうして泣いてるの」
中山家に到着して、ドアを開けると、きれいな人が出てきた。
「お姉ちゃん……、下校中に変な人に絡まれて……、クラスメイトが家まで送ってくれたの……」
「まぁ、じゃああなたがそのクラスメイト、本当にありがとう……。桃は昔から絡まれやすくて……、天候の原因になったのもあるの、本当に良かった。私は中山林檎っていいます。君の名前は…?」
「松平康太と申しますお姉さん」
俺はできる限りのキメ顔とイケボイスであいさつした。
「今後は桃さんに変な奴が寄り付かないように俺が桃さんを守っていきます」
「松平君……」
なぜかちょっと中山から目線を受ける。
「なので桃さんを守り抜いた際にはお姉さん、いえ林檎さん俺と付き合っていただけないでしょうか」
「え?」
「あらあらまあまあ」
俺の発言に多少リアクションは異なるが、2人とも驚いていた。
「ちょちょちょっと待ちなさいよ。私を守るために、私と付き合うのが普通の流れなんじゃないの?」
「うん、俺は林檎さんに興味があります。数あるお姉さんの中でもここまで俺にスマッシュヒットしたお姉さんは初めてで……」
おっとりほわほわながら包容力抜群で、スタイルもとても出るとこ出ていてバランスがよく、大人っぽい香りもしてまさに俺がいろいろなお姉さんを妄想して理想を考えていたお姉さんの理想がそこにいた。
「まさかのお姉ちゃん狙いなの?」
「桃さんの件はおいておくとしても、俺は今からでもお付き合いをしてもかまいません。彼氏になる覚悟はできてます!」
「ちょっと、私の話なのに、私を置いておくんじゃないわよ!」
「あらあらどうしましょ~」
林檎さんと話しているのに、ものすごく中山が入ってくる。
「な、なんで私じゃダメなのよ……」
「え、だって中山……いや、林檎さんも中山だから、桃さんって呼ぶけど、桃さんは全く大人の魅力が足りないから、……簡単にいうとタイプじゃない」
「桃さん……えへへ……、じゃなくて! あーそう、でもね考えてみなさいよ。私はお姉ちゃんの妹なのよ。あと数年したら私もお姉ちゃんみたいになるんだから!」
「なりますかね……ならないんじゃないですか?」
俺は林檎さんと桃さんを交互に見比べる。桃さんは普通に高校生としてもスタイルはよくないし、ぶっちゃけまな板である。
「な、なるもん! 多分なるもん」
「うふふ、よかったわね。転校してすぐにそんなに話せるお友達ができて」
「ち、ちっとも今の状態は良くないし」
「それより林檎さんデートしません?」
「すきあらばお姉ちゃんを口説くんじゃないわよ!」
「……うーん、そうね、デートしましょう……3人で♪」
「「へ?」」
その日から、俺は林檎さんと桃さんと三人でお出かけをするようになった。
「はい康太君あ~ん」
「あ~ん」
今日は公園のベンチで三人でアイスを食べている。
超好みのお姉さんからあ~んしてもらえるなんて俺はなんて幸せなんだ。
反対側の桃さんが若干邪魔な気がするが、お姉さんの林檎さんが楽しそうだから今は良しとする。
そのうち2人きりでデートをして、俺の本当の気持ちを聞いてもらうんだ!
そして結婚してもらうことにしよう。
「ちょっと! そっちばかり向いてないで、こっちのあーんも受けなさいよ!」
林檎さんが喜ぶから、桃さんのも食べてあげるか。
「む~、あれだけ本気のアプローチをしてたら、お姉ちゃんももしかしたら、落ちちゃうかも……。お姉ちゃんが本気になる前に絶対私に振り向かせて見せるんだから!」
なんか桃さんが言っているような気もしたが、気にしないことにする。
「ふふふ、青春ね~」