第31話 お化け屋敷で始まるラブコメ
俺の名前は小森源治
普通の大学3年生である。
夏休みが始まる楽しい時期に男3人でテーマパークに来ていた。
「夢の国で男3人でこれでいいのか」
友人の博と卓夫と一緒に遊びに来ているのはいいのだが、女っけがまるでない。
「源治は女がいると地蔵になるくせに、仲のいい男3人で気を遣わず夢の国、楽しいぞ~」
「そもそも今日は源治を励ます会でもある」
元気な博とクールな卓夫、卓夫がいうようにこの2人は俺を慰めに来ているのだ。
理由はというと、実は俺には3日前までは美奈という彼女がいた。
夏休みも本来は彼女と楽しい思い出を作るつもりだったが、
~回想~
「ごめん、別れよ」
「は、昨日旅行とかの話をしたばかりだろ!」
「それは行くつもりもうその時点でなかったというか……」
「なんでだよ、俺何かしたか?」
「何かしたというより……」
「何もしなさ過ぎたのが原因だな」
すると後ろから豪介という同学年の男が現れて、美奈の頭を触る。
「豪介? 何勝手に美奈に触って……」
「デートも平凡、頭も悪い、トークも下手、全部俺以下のお前が悪いってことだ」
「は?」
「ごめん、豪介と一緒にいる方が、源治といるより楽しくて」
「じゃあな、またいい相手でも探せよ」
「源治ならすぐいい相手見つかるから……」
~回想終了~
まぁこんなことが夏休み前に合って、俺は傷心中というわけだ。
俺はもちろん失恋のことを話してはいないのだが、それを察して2人は俺を連れ出してくれたわけだ。本当にいい友人だ。
豪介はイケメンだが女癖が悪い話があった。
それでも美奈があっちを選んだことにショックは隠せない。
「というわけで、俺はメルヘンメリーゴーランドに乗りたい」
「卓夫、クールな顔して何を言ってるんだ」
卓夫はクールキャラだが、かなりの可愛いもの好きである。
「さすがに1人で乗る勇気は出ないから巻き込まれてくれ」
「いや俺を慰める会で俺のメンタルにダメージ与えに来るなよ」
「これくらいはっちゃけた方が気がまぎれるかなと」
「お前の趣味に口は出さないが……」
「男3人でメリーゴーランドとかさみしいしかないな」
まさかのここに豪介と美奈が来ていた。
俺の傷心が悪化しそう。
「美奈……」
「……」
「まぁ逮捕とかされないようにな!」
わざわざあおるだけあおって離れていった。
「ちっ、嫌な奴。うっかりガムでも踏んでしまえばいい」
卓夫は悪口が優しいな
「美奈ちゃんもなんであいつにいっちゃうかな~。女癖悪いこと知ってるはずなのに」
「それでも俺といるよりは楽しいらしいからさ」
「ちっ、メルヘンをバカにしやがって、スリーポイントシュートが一生決まらない呪いにでもかかればいい」
だから卓夫は悪口が優しい。いいやつなんだよな。
そのあとできるだけ2人に合わないように2人と回った。
ジェットコースターやウォーターライドなど絶叫系は気分が晴れていくようで、特に気を使わない2人と一緒なのも心地よかった。
そして、
「さて、季節は夏、夏といえばホラー、というわけでお化け屋敷だ」
「ここのは中々レベルが高いらしいぞ、どんなものか見てやろう」
2人はお化け屋敷に入ろうとしていた。
俺はちなみにホラーが苦手だ。
「……ここ入らないとだめ?}
2人は俺を見て別に無理をさせようとする表情ではなかったので、待ってるつもりだったが、そこにまた豪介と美奈が来た。
「ははは、お化け屋敷にも怖くて入れないんじゃやっぱりつまらない男だな」
「……別に入れるけど……」
「無理すんなよ。お前はここで1人おびえてればいいさ。行くぞ美奈」
そして2人は先に入っていった。
「入ろう」
「大丈夫か、無理しなくてもいいぞ」
「大丈夫だから」
俺はホラーは本当は苦手だ。
別にここで俺が男らしい部分を見せたからと言って美奈が戻ってくるわけでもない。誰かにそれを見せたいわけでもない。でも俺にも意地はある。
「ひ~、2人とも待ってくれ~」
さすがにレベルの高いお化け屋敷ということもあって、一本道でもなかったため、2人に置いて行かれてしまった。別に2人が悪いというわけでもなく、暗い上に俺の歩みが遅すぎたのが原因だ。
「うう、暗いし、雰囲気怖いし、なんでこんな空気を作り出せるんだよ……」
1人であることを自覚すると本当に恐怖心を煽られる。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』
「ぎゃああああああ! 出たぁ!」
ふいに後ろから貞〇風の幽霊が出てきて俺は叫んでダッシュした。
『オイテカナイデ』
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
『ワタシノアシヲカエシテ』
「ぎょわー!!!!」
行く先行く先に幽霊がいるので、俺は右往左往して逃げ回って完全に迷子になっていた。
「はぁはぁ、やっといなくなった……」
とにかく逃げ回って、何とか気配がなさそうな場所に来た。
「これはスタッフさんに助けを求めたいけど、スタッフさんが幽霊じゃん……、詰んだ」
こういう場合はどうすればいいのか。
かたっ。
するとすぐ横で音がした。
「え、また何かいる!」
「え、え何?」
「うわぁぁ、普通にしゃべった! もうヤダ!」
さっきまでの幽霊風の雰囲気ではなく、普通に話してくるのまでいるなんて……、普通に?
「ち、違います。お化けじゃないです!」
「え」
「道に迷って、奥まで来てお友達ともはぐれて足もくじいてしまってどうしようもなくて……、怖い……怖い」
暗くてよく見えないが、髪の長い女性のようだ。それに泣いているようである。
「大丈夫ですか……本当にお化け出ないんですよね」
「違います……、でもお化けになるしかないもって……ずっと叫び声も聞こえてるし……怖くて」
多分叫び声は俺が悪い。ただ、こういう状況で冷静じゃない人がいると逆に冷静になるってよく聞くけど本当なんだな。恐怖心がなぜか薄れてきた。
「俺が出口まで付き添いますよ。手取れますか」
俺は女性の手を取る。すべすべのきれいな手だったので、違う意味でドキドキした。
「こ、怖かったです……」
「おっとっと」
その女性は俺に抱き着いてきた。普段だったら止めるが状況が状況なので離れてもらうことなどできなかった。
「足痛いんですよね。俺の背中に乗れますか」
「ご、ごめんなさい」
「いえいえ、けがをして怖がっている女性を1人でおいていくなんてそれこそありえませんから」
俺は顔もよくわからない女性を背負って歩き出した。
怖いものは怖いのだが、背中から感じる震えとすすり泣く声に、俺は頑張らないといけない気持ちになって歩き続けることができた。
それになんか知らないがあまり幽霊が出てこなくなった。この状況を察してスタッフさんが気を使って
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』
「うわぁぁぁぁ」
油断してたところにまた貞〇風な人が出てきて俺はダッシュした。
ただ、今度は明るいほうが見えたので無事出口に行くことができた。
「源次、後ろにいたのか心配したぞ」
「大丈夫か、それに誰か背負って何があったんだ」
出口では博と卓夫がいて、俺が出てきたところに声をかけてくれた。
「ああ、大丈夫だ。あ、外に出れましたよ」
「はい……、本当にありがとうございました」
俺は女性を下ろす。
「門脇瑠偉先輩!?」
「門脇先輩だ!」
すると2人が大声を上げた。
「お、おい、どうしたんだよ2人とも」
「どういうことだ。なんでお前が大学のミスコン優勝者の門脇瑠偉先輩を背負ってここから出てくるんだ」
「へ?」
俺は改めて助けた女性、門脇瑠偉先輩を見る。
可愛らしさと美人さを兼ねた顔に気品のあるしぐさ、きれいな髪にすらっとしたスレンダーな体系、とてつもない美人だった。そういえば背負ってる間もずっといい香りしてたしな。
「源次は美奈ちゃん一筋だったからな。俺たちも普通に会話で門脇先輩の話をしてたはずなんだが、何にも聞いてなかったんだな」
「そ、そうだったのか」
「えーと、源次君でいいのかな。いろいろありがとね。それで美奈ちゃんっていうのは彼女?」
「…………」
「ああ、門脇先輩、美奈ちゃんは元彼女です。振られたてほやほやです」
俺が言葉に詰まったので、博が代わりにこたえてくれる。まだなんだかんだ傷心だったようだ。
「…………、ということは連絡先を聞いてもいいよね。助けてくれたお礼に遊びに誘ったりしてもいいよね?」
「え、ああ、はい」
「えへへ、やったぁ。じゃあ源次君、私の事は瑠偉でいいからね。すっごく男らしかったし、背中もがっししててて頼りになったよ。これからよろしくね」
「あ、はい、瑠偉先輩……」
なんか急展開過ぎていろいろついていけない。
ただ俺に向けてくれた笑顔はめちゃくちゃかわいかった。こんな美人な瑠偉先輩がまったく目に入っていなかったとは俺はいい意味では一途ともいえるし、悪い意味では節穴である。
「おい、なんで大天使門脇瑠偉先輩とお前がそんなことになってるんだ」
「慰める会はもういらないのか……」
「違う違う。ちょっとお前らとはぐれたときに困ってる女性がいて、それを助けたら瑠偉先輩だったんだ」
「怖いところは苦手だったんだけど、友達と一緒で断り切れなくてしかもはぐれちゃって……、源次君が来てくれなかったら怖くてどうなってたか……。本当にかっこよくて頼もしかった……」
「あ、あの近いです」
いい顔で上目遣いでうるうるは反則です。
「こんなにかっこいい男性が同じ大学にいたなんて……、今フリーで本当によかった……」
「あ、あのー」
手をぎゅっと握られる。やわらかい。
「手も大きいし、声もかっこいいし……素敵」
なんか俺の評価高すぎるぞ。お化け屋敷で吊り橋効果になってないか心配だ。
「あー、もう最悪、ありえないんですけど」
「はぁ? 最悪はこっちだよ。何回俺の足を蹴ったり踏んだりしてんだよ」
そんな空気の中、豪介と美奈がお化け屋敷から出てきて揉めていた。関わりたくねぇ……。
「大体男のくせにギャーギャー叫んで女々しいのよ。源次は怖がりだったけど、私の前では男らしくはしてくれてたんですけど」
「はぁ? 元カレと比較するとか何様? 比較対象なら俺のほうが多いんだけど」
「ほんとサイテー!」
「お前が言い出したんだろうが、……あ、瑠偉先輩!」
「ちょっと! どこに行くのよ!」
うわ気づかれた。
「瑠偉先輩! 奇遇ですね今ちょうどフリーになったので、もしよろしければ俺と一緒に回りませんかってなんで小森の手をにぎってるんですか?」
「ちょっと源次は私の彼氏なんだから気安く触らないでよ」
「いや、お前俺を振ったじゃん!」
うるさい上に言いたい放題である。
「あ、あれは冗談だもん! やっぱり源次の方がいいかなって!」
「うーん、修羅場だ」
「しかし2人とも面の皮が厚いというかメンタルが強いというか」
博と卓夫がのんびりと実況している。助けてくれ。
「……より戻すの?」
瑠偉先輩にそう聞かれたが俺の答えは決まっていた。
「いいえ」
「よかった。じゃあ夏休みは私に時間をいっぱい頂戴♪ いろいろ君のこと知りたいな」
「はい!」
「やだぁ! 考え直してよ!」
「瑠偉先輩! 俺のほうが楽しませられますよ!」
「美奈ならまたいい人すぐに見つかるよ。じゃあな」
「ごめんね。君が大学の女子をひっかえとっかえしてるの知ってるから。私そういう人嫌いなんだ」
その後瑠偉先輩は無事友人と合流できて、俺はすごくお礼を言われた。
この夏休みをきっかけに俺は瑠偉先輩と付き合うことになった。
ちなみに、この騒動で瑠偉先輩の友人とも親交を深めることになった結果、博と卓夫にも彼女ができることになった。本当にいいやつらだから報われて何よりだった。
~
~数年後~
あの時だけの吊り橋効果かと不安はあったが、俺と瑠偉先輩……瑠偉はきちんと付き合い続けることができた。今日はあの思い出の遊園地に来ている。
ここにはデートで一番よく一緒に来ている。
「今日はどこから回るの?」
「ジェットコースターからだね」
「うん、やっぱりそうだよね」
「それと今日はパーク内のホテルとってあるからそこに泊まろう」
「そうなの?」
「前来た時泊まってみたいって言ってたからね」
「うん、ありがと」
前ここでプロポーズされてた人見てた時に、もらい泣きしてたもんな~。ここで決めるぞ
(ふふ、前家でここの予約をしてたから実は知ってるんだけど、きちんとこういうことしてくれるの好きだなぁ)
「ん? 何か言った?」
「ううん、なぁんにも」
そしてこの日の夜俺は瑠偉にプロポーズすることになる。
俺の計画がバレバレだったのは、結婚式の笑い話となるのだった。




