第28話 空?から女の子が
俺の名前は吉富大吾
一般的なサラリーマンである。今日も朝の満員電車を乗り切って会社の最寄り駅の階段を上ろうとすると、
空から女性が降ってきました。もとい階段の上から女性が落ちてきました。
「うぉぉぉぉぉ!?」
回避の選択肢はなかった。俺はどこから出たかわからないバカ力でその女性を見事お姫様抱っこで抱えることに成功した。
ナイスキャッチに回りからちょっと感嘆の声が上がった。
「す、すいません。立ち眩みをしてしまって」
「いえいえ、無事受け止めれてよかったです。気を付けてくださいね」
「ごめんなさい。絶対私のほうが体重重たいのに立ち眩みをして支えさせてしまってごめんなさい」
「いえいえそんなことを気にしないでください」
確かに俺があまり体系が大きくなくて、身長は並みにあるが体重が50キロ前半である。
足がプルプル震えてはいる。だが、それ以上に歓喜はしている。
俺の好みは肉付きのいいいわゆるぽっちゃり寄りの女性。
助けた女性はかわいらしい童顔ながら、全体的にスタイルのいいふわふわな女性だった。
顔も好みで理想である。
女性に対して求めるものはもちろん個人によって異なるので、俺の考えとは違うのだろうが、俺は包容力を求める。女性は一般的には痩せている方がいいのかもしれないが、俺は抱きしめたときにふんわりしてる方がいいと思う。
俺自身が太りにくくてやせ型だし、家族も痩せ方なので、自然と求めてしまうのかもな。
そんな女性を結果的にはお姫様抱っこできたことに俺はものすごく喜んでいた。
もちろん顔には出さなかったがな。
その後俺は女性をおろして、会社に向かった。ちょっと腕が重かったが、いつもより気分よく仕事が始められそうだった。
「吉富さん、見てたよ~。階段から落ちた重量級のシー〇を受け止めた〇ズーになってたでしょ。あの重量級をよく受け止められたもんだね」
会社に出社すると、どうも朝のシーンを見ていた人がいたらしくて、さっそく俺はいじられた。
「え、別に重いとは思わなかったけど」
正確には思わないわけでもなかったが、それ以上に歓喜の心が強くていい思いをしていたので気にならなかった。
「嘘をつけよ。総務課の堂上愛実さんは絶対に体重が60キロ以上あるぞ。普通にデブなんだから重くないわけがないだろう」
「え、彼女は同じ会社なのか」
「知らなかったのか。知らなくて受け止めるとかやるなーw」
俺にさっきから絡んでくるのは同期の本木である。
仕事もできて顔もいいのだが、若干口と態度が悪いやつだ。
いつもはその発言にイライラするのだが、今は俺はそれどころではなかった。
まさか俺の勤める会社にあんな好みの女性がいたなんて! 俺の視野はどれだけ狭かったのか。
確かに俺の部署と彼女の部署では接点があまりないので、仕方なくもないのだが、ただそれでも同じ会社にいるのなら、これからは気にしていればお近づきになれるかもだ!
そう思って心躍っている俺を本木はきょとんと見ていた。
しかし、そう思っていた俺に更なる思いがけない展開が起こった。
「あの、吉富さん、今朝はありがとうございました」
なんと堂上さんがわざわざ今朝のお礼をしに来てくれたのである。
「ど、堂上さん、俺の名前存じてたんですか」
「はい、総務部では社員全員のことはある程度は共有してますし、同じ電車に乗ってるので顔を知ってました」
「むしろ俺は知らなくてすいません。わざわざご丁寧に来てくれるとは思いませんでした」
「いえいえ、吉富さんの部署は会社の外の方とのお話も多いでしょうから。それに今朝のことが心配でして」
「心配ですか?」
「はい、腰とか痛めてないですか?」
「はい、まったく問題ありませんよ」
「でも一応病院に行かれた方がよくないですか。検査したら骨にヒビでも入ってるかもしれないですし」
「そんな大げさな」
「でも私本当に重かったと思いますよ。逆に吉富さんはこんなにスリムですし……」
「俺は何かに気を使ってこうなってるわけじゃないんで。むしろもっと鍛えないと思ってるくらいですよ」
「そうなんですね。私からしたらうらやましい限りです」
やべ、笑顔も可愛い。
ほんわかいやし系だな。
「あの……、本当によろしければなんですけど……お礼にお食事にお誘いしてもよろしいですか」
「え!?」
俺史上で最大規模の声が出た。
「す、すいません。やっぱりこんなに太っている女性が横にいるのは嫌ですか?」
しまった。大声を出しすぎて変な誤解が発生した。
「行かせてください! とてもうれしいです。ぜひお願いします」
俺はむしろ土下座せんばかりの勢いでお願いした・
「は、はい! では今夜でもいいですか」
「はい是非。では本日終業後に会社のコンビニの前で」
そして、堂上さんは戻っていった。
俺は細胞全体が喚起していた。
助けた女性が同じ会社にいるだけでもすごいことなのに、すぐにお礼を言ってもらった上に、まさかお食事にも誘っていただけるとは。
俺はとてもテンションが上がって、今日の仕事をさっさと片付けるためスキップをしながら自分の仕事をする机に戻った。
ところが俺のその気分を木本さんが水を差してきた。
「見てたよ。さっき例の堂上さんに食事に誘われてただろ」
「そうだけどそれが何か」
というか俺のことこの人見すぎだ。
「何って……、デブでネガティブな女性に誘われると断りづらいでしょ」
「ちょっと何言ってるかわからない」
「わからなくないだろ。誘いを受けて断るか受けるかは本当は自由のはずなのに、断ったら女性の間で悪者にされそうじゃん。それにああいうタイプはメンヘラ化しやすいし、スリムで可愛い子のメンヘラならいいけど、デブのメンヘラとか迷惑じゃん」
「すみません。仕事に戻るのでほっといてください」
聞いてていい気分がしないので離れようとする。
「おいおい。俺は吉富さんを心配してるんだぜ。断りにくくて話に乗っちゃったんだったら、俺があのデブにびしっといってやるぞ」
「あの、自分の価値観でものをいうのは止めてくれないか。木本さんがどんな女性を理想のタイプとしてるかは俺と違うのは当然だと思うけど、それでタイプじゃない女性を貶めるような発言をするのは絶対違うだろ。不愉快だ」
「な、なんだよ。お前本気であんなのが好みなのか。悪趣味だろ」
「俺はすごく可愛いし好きだよ。それに木本さんの方が趣味が悪いじゃん。この前仕事が少し暇だった時に、一部の男性社員と一緒に女子社員のランキングみたいなのを作って」
「わわ、止めろバカ」
俺の口を急いで止めるが、周りにいた一部の女子社員がこの話を聞いていてドン引きしており、しかも運の悪い(いい)ことに、女性の部長もいた。
「へぇ~、そんなランキングを作ったの?」
そして女性の部長が肩をたたく。
「あなたは女性のことをランク付けできるほど高貴な人間なのかしら。あなたの普段の言動を見ていると、むしろあなたはランキング下位になるのは避けられなさそうだけど?」
「す、すいませんでした!」
女性の部長は本当に怖かった。
その夜、俺は堂上さんと食事にいった。
かなりおしゃれなレストランで、堂上さんのセンスの良さがうかがえた。
俺はメニューを見てワクワクしていたが、堂上さんは何かソワソワしていた。
「どうかしましたか?」
「え、何がでしょうか」
「いえ、何か落ち着きがない様子でしたので」
「は、はいすいません。実は……」
堂上さんは指をつんつんしながら、俺を上目遣いで見てきた。しぐさも可愛い。
「吉富さんが同僚の方と言い合いになったお話をお聞きしまして……」
「え、もう話が広まってるんですか」
あの場にいた女性社員は3人くらいしかいなかったのに。
「女性は噂を広めるのが早いですから……、それで聞いちゃったんです。吉富さんが私のことを……可愛くて……好きだって言ってくださったって。それがとてもうれしくて」
「うわぁ……、確かに勢いで言っちゃいましたね……、あ、でも気持ちは本当です。せっかくなので、きちんと言わせてください。俺は実は堂上さんみたいな人がタイプで……、同じ会社にもいてお礼に来てくれたのうれしくて……、もしよろしければ急にですけどお付き合いしていただけませんか」
「……本当に大丈夫ですか……、私63キロもあるんですけど」
「大丈夫です。俺は堂上さんのそのままが好きなんです」
こうして運命的な出会いとも言える形で俺は堂上さんと交際することになった。
ちなみに木本さんは対女性に対して非常に肩身が狭い状況になったらしい。悪い噂も広まりやすいようだ。
そして俺のあの発言は女性社員にものすごく堂上さんと合わせていじられる羽目になったが、総務部との関係がよくなった。




