第25話 2人の幼馴染がいわゆる修羅場
俺の名前は一ノ瀬徹
高校2年生だ。
突然だが俺の家に突然金髪美少女がやってきた。
「今日からここに住むことになりました! 会いたかったですよトオル!」
そしてその金髪美少女に抱きつかれる。
彼女の名前はリリアン=リー。
実はかなり遠いのだが血縁関係にあり、リリーにはわずかながら日本人の血が入っている。
とは言ってもほとんどがアメリカ人で金髪、青い瞳、細見ながら出るところは出ている体系で足と手が長いところにほぼ日本人の要素がない。
小学生くらいの時は俺の家によくリリーは遊びに来ていて、関係的には幼馴染にあたる。
当時からスキンシップが強かったが、
「お、おい、もうお互い高校生なわけだし、昔みたいに抱き着くのはちょっと……」
「何でですか? アメリカでは普通ですよ」
「まじかよアメリカ最高だな、じゃなくて、なんでリリアンが急にうちに住むことに?」
「? トオルの両親から聞いてませんか? 私日本に行きたくてその時ちょうど留学の話があったんです!」
それでその留学先がまさかの俺の通っている学校というわけで、だったらうちに住むことを両親が提案したらしい。ちなみに俺は聞いてない。一切1mmも聞いてない。
「というわけでよろしくお願いしますねトオル♪」
「よろしくお願いしますって……、今俺の両親がどうしてるか知ってるか」
「はい、聞いてますよ。海外でお仕事をされてますよね、だからあっちで良くしてもらいました」
そう俺の両親は今アメリカで仕事をしている。そしてリリアンの家族と家族ぐるみの付き合いをしている。
「そうだよな。つまりこの家には今俺が1人暮らしというわけだ」
「はぁ……それがどうかしたんですか」
「つまり俺と2人で1つ屋根の下に暮らすことになるんだぞ。それはいいのか」
「はっ、それはいけませんね」
「そうだろ。だからこの話はなかったことにして、ほかの案を」
「私が洗濯物の中のトオルの服を盗んでしまったり、トオルの入浴中にうっかり出くわしてしまったり、トオルの着替えを覗いてしまったり…するかもですね」
「そうそう……、って状況が逆だろ!」
「大丈夫です! 据え膳食わぬは女の恥をいいますが、私はそんなことしませんからね」
「恥なのは男なんだよ。ちょっと間違えてるから」
「ニッポン語は難しいですね」
「いや、めちゃくちゃ流ちょうになってる。昔はぞんなには話せなかったのに」
「いっぱい勉強しましたから! 日本大好きです!」
まぁ別にいいか。
こうして俺は突然金髪の美少女と同棲することになったのだが。
「トオル! お背中を流しに来ましたよ!
「ちょっと待て! 百歩譲って背中を流しに来てくれてるのはいい。だがせめてバスタオルを巻いてくれ!」
「? ニッポンには裸のおつきあいというものがあるんですよね。それに江戸では男女混浴が普通と聞きました! 郷に入っては郷に従えです!」
「難しい慣用句を知ってるのはすごいが、それ以外がいろいろ間違ってる!」
アメリカ人としては十分すぎるほど勉強はしているが、いろいろ日本を誤解している節がリリアンにはあった。
「リリアン、一緒に暮らすにあたり、いろいろ決めておこう。初日からこれでは疲れる」
「そういえばですけど、昔みたいにリリーとは呼んでくれないんですか?」
「……リリー」
「? 何で名前を呼ぶだけで顔を赤くするんですか?」
「俺みたいなやつは女の子の下の名前を気軽には呼べないんだよ」
「ああ、ドウテイというやつですか!」
「ほっといてくれ、そんなことより、日本にはもう江戸はないし、武士もいないし、侍もいないんだ」
「何を言ってるんですか? そんなことは知ってますよ」
「なんでだよ」
リリーの日本の知識はよくわからなかった。
「はぁ……
次の日の朝もリリーに振り回されたが、そのあたりは割愛。
金髪の女の子との同棲はメンタルにくるものだ。
「おはよう、今日はずいぶん疲れてるわね」
俺が疲労困憊な中で投稿していると声をかけてきたのは、七井初美
スレンダーなスタイルにクールなルックスで学校でもトップクラスの人気の少女だ。
そんな子と俺がなぜ会話ができるのかといえば、彼女と俺は幼稚園の頃からの幼馴染だからである。
「心配してくれるのか」
「はぁ? バカも休み休みいいなさい」
ただ、幼馴染関係というだけで、好かれているわけではないようだが。
「それで、どうしてそんなに疲れてるの?」
とはいっても心配は一応してくれているのか。
「実は金髪の女の子がうちにやってきて一緒に住むことになって大変だったんだ」
「……妄想するくらい疲れてるのね」
「悲しい目で見ないで! 嘘みたいな話だけど本当なんだ」
改めて言ってみると荒唐無稽な話ではある。俺も友人から聞いたら最初は信じられない。
「はいはい妄想はいいから」
頑張ったが信じてもらえなかった。
その日のホームルームにて
「本日は転校生を紹介しよう。アメリカからの留学生のリリアン=リーさんだ」
リリーがこの学校に来ることは知っていたが、何の縁か俺のクラスになった。
金髪の美少女の突然の来訪にクラスは色めきだった。
確かにリリーは超美人だからな。
そしてこの後の展開も予想できる。
「わーお、トオル! 同じクラスですねうれしいです」
やはりリリーは俺に気づいて抱き着いてきた。気持ちいいが、心身穏やかではない。
そして色めきだったクラスは一瞬で冷え冷えになった。
普段目立たない俺だが、本日はリリーと同じくらい質問攻めにあった。
「ねぇ徹」
その日何とか日々を過ごしたが、放課後に思い切り初美に捕まった。
「あのー、肩を掴む力が強すぎるんですが」
「大事な話があるから逃がさないためよ。それであの金髪は何なの?」
「えーと朝説明させていただきましたし、クラスメイトには全部説明させていただきましたが、いわゆる俺の親戚的な子で、俺の家に住むことになりまして」
この説明で、男子からの恨みと女子からの黄色い声を聴きまくった。
「徹の両親は確か今海外にいるわよね」
「そうだな」
「つまりあの子と2人きりってことじゃない!」
「それはそうなるけど……、別に初美には関係ないだろ」
「関係あるわよ! 私は徹のことを……」
「俺のことを?」
そのあとうつむいて黙ってしまった。
「じゃあ私も住む……」
しばらく沈黙していたが、待っているといきなりそんなことを言われた。
「え、何を言ってるんだ」
「あの金髪と徹だけじゃ心配だから、私も一緒に住んであげるって言ってるの!」
「ちょっと何言ってるかわからない」
「なんでわからないのよ」
わかるわけがない。
「幼馴染のあんたのことがもし捕まるようなことがあったら、私に飛び火するかもしれないでしょ。いやよ、犯人の幼馴染としてコメント求められるの」
「そもそも捕まるようなことをするつもりはないんだが」
「とにかく、今から私は戻って準備をしてくるから! いいわね。あくまでも私のためなんだから!」
そう言って初美は帰っていった。
「久しぶりねあんたの家に来るの」
「本当にきたし」
しっかり荷物を持って、初美が俺の家に来た。
「わーお! ハツミでーす! いらっしゃいませー!」
そしてリリーは大歓迎である。
「狭いところですがどうぞゆっくりしてくださいね!」
リリーの家じゃないけどな。
「今日話したばかりなのに、距離感が近い……」
「リリーはこういう子だから」
そして、初美が一緒に住むことについて聞いてみると。
「はい、大歓迎です! 女の子同士仲良くしましょう!」
と、高い適応力だった。
「それでは早速裸のおつきあいをしましょう!」
「ちょっと、いきなりそれは……、ってこの子力強い!」
「よいではないか、よいではないか!」
「なんでここで脱がすのよ!」
「ニッポンではこうやって服を脱がすと殿方が喜ぶと聞きました!」
「そんなわけないでしょ! 徹も止めて!」
「よいではないか! よいではないか!」
「なんであんたも乗り気なのよ!」
こうして俺はリリーと初美との3人生活になった。
そんなこんなで一週間、俺たちの朝は早い。
うとうと……、
朝6時半、俺が寝ぼけて夢うつつになっていると、部屋のドアが開く音がした。
「ふふふ、おはよー、まだ寝てるわね。今のうちに寝顔の写真撮っちゃお」
なんか初美の声が聞こえる気がする。写真をどうにかするって……
「でへへ~ もう食べられないですよ~」
それとなんか胸元が温かい気がする。
「ん? その声は……、ちょっと起きなさい!」
そして布団と引っぺがされる。胸元以外が寒い。
「むぅ、おはようございます~」
「あ、おはよう。なんか温かいと思ったらリリーがいたのか」
「リリーがいたのかじゃないでしょ! 何で同じベッドで寝てるのよあなたたちは!」
朝からめちゃくちゃ怒られた。俺朝弱いから頭に響く。
「えへへー、ごめんなさい」
「えへへーじゃないでしょ‼」
「夜中に起きて戻ったら部屋を間違えたみたいで」
「まったく、おつきあいもしてない男女が同じベッドで寝るなんて、襲ってくださいって言ってるようなものでしょ」
「そうだそうだ。初美もっと言ってやれ」
「あんたもあんたよ! 隙があるから付け込まれるのよ」
「俺は自分のベッドで寝てただけなのに」
「そういえばハツミ、なんか写真撮ろうとしてませんでした?」
「あ、あんた起きて……、あれは違うわ。あれは恥ずかしい写真を撮って後で見せてやろうと思って」
「ふむふむ、これがツンデレとかいうやつですね。ハツミかわいいです!」
「違うから」
朝はちょっと騒がしいが、しっかりした初美とマイペースなリリーは割と楽しそうで、見ていてほほえましい。
「何をにやにやしてるの。気持ち悪いわよ」
「生理的に無理とかいうやつですか?」
前言撤回。メンタルが痛い。
そんな穏やかに過ごしていた日々、とある休日の朝は空気が違った。
その傾向はわずかにあったが、ついに2人がけんかになったのである。
「リリー、あんたは何でいつも徹にくっついてるのよ」
「くっつきたいからくっついてるんですよ。何か問題でもあるんですか」
「そ、そういうのはね好きな人にしかしちゃいけないのよ!」
「なら大丈夫です! 私はトオルのこと大好きですから! ならなんの問題もありませんよね」
「え?」
なんか急激に告白された気がする。
「リ、リリーの好きは違うでしょ。家族的なのでしょ」
「いいえ、トオルのことを1人の男として大好きです! ずっと昔から大好きです。日本に来た理由もトオルと一緒にいたいからです! これなら何の問題もありませんよね!」
熱い告白だった。気づかなかったことがちょっと申し訳ない。
「問題あるにきまってるでしょ! 私だって徹のこと昔からずっと大好きなんだから! 誰に告白されても告白を受けなかったのは徹が大好きだからだもん」
「え」
なんかもう1つ告白を受けた気がする。
「ほほぅ、つまり恋敵というやつですね。私にやたら突っかかってきたのも、徹のことが好きだからですか」
「そうよ、悪いの」
「開き直りましたね」
「このままじゃあんたに徹を取られるからよ。何もしないで取られるくらいなら、恥を忍んでも取りに行くわ」
「なるほど、相手にとって不足なしです!」
「ちょっと待って、俺の前で俺をいれずに俺の話をしないで」
「徹は黙ってて!」
「トオルは黙っててください!」
2人とも本当に俺のこと好きですか?
「ふっふっふ、しかし残念でしたね。私はトオルと結婚の約束を昔してますからね。私の勝利は揺るぎません」
「そんなこと言ったら、私だって昔約束をしてるもん」
「嘘はだめですよ。結婚の約束は1人としかできませんから。トオルがそんな節操なく約束をするわけないじゃないですか」
「嘘じゃないもん! 私したもん」
「トオル! どっちが本当のことを言ってるんですか!」
「徹! どっちと約束したの!」
そして矛先がこっちに来た。確かに小さいころそういう約束をしたことはある。ただ、よく覚えていない。
「すいません、どっちとしたか覚えてません」
「はぁやっぱり忘れてたのね……、私はずっと覚えてたのに……ずっと大事にしてたのに」
「え、もしかして初美、俺のことを嫌ってるようなそぶりをしてたのって……」
「そうよ! あの約束を覚えてなさそうだったからよ! この馬鹿!」
返す言葉もございません。
「トオルが覚えていないのは残念でしたが、しかし、私は間違いなく約束をしてますよ。ここに遊びに来た時は本当に仲良しでしたからね」
「それは私もそうよ! 幼稚園からの幼馴染なんだから!」
「時間では負けてますが、会えなかった時間の分私の思いは詰まってるんですからね」
「そんなの一方通行なんだからんね!
「いえいえ、私がアメリカに帰るたびに、私にポエムを毎回書いてくれてたんですから! 全部部屋に飾ってあります!」
「ぐはっ」
あの恥ずかしいポエム残ってるのか。絶対家族にもみられてる……。
「ふふん、私も落ち込むたびに自作の私の歌をプレゼントしてくれてたんだから、全部残してあるわ。
「ぐはっ」
俺の黒歴史が現存している事実に耐えられない。
「そういえば思い出しましたけど、私がアメリカに本格的に戻るときに、庭にタイムカプセルを埋めましたね、そこに手書きの婚姻届けが入っているはずです!」
「そういえば私も埋めたわ、そこに私も入れたはずよ」
「じゃあやってみればわかりますね、掘ってみましょう」
そして俺たちは庭を掘り起こして、2つタイムカプセルが出てきて、その中から2つの婚姻届けが発見された。
「つまり当時のトオルは……」
「ゴリゴリの浮気をしていたと」
「すいませんでした」
土下座した。
「まぁ10年以上も前のことですし……」
「タイムカプセルは掘り起こしたけど、そのことを掘り起こしても仕方ないからね」
「え、やさしい……」
「それで」
「へ?」
「トオルは……」
「え……」
「「どっちを選ぶの?」」
この後どうなるのかはまた別の話である。




