第21話 からかい好きな後輩ちゃん
俺の名前は三井翔太
とあるスーパーでアルバイトをしている普通の大学2年生である。
「ショーくん今日もよろー」
「どうも」
俺に話しかけてくるのは浅野朋。
俺の1個年上の同じアルバイトをしている女子大生である。
年上だが、童顔の可愛らしい系でいつもニヤニヤしている子である。
俺と朋さんはアルバイトで知り合ってそこまで付き合いが長いわけではないが、とにかく俺に絡んでくる。
俺の方が年下だが、バイトとしては俺の方が先輩なので、お互いに気遣わず話をしていたりする。
フレンドリーな人であまり女子との経験がない俺でも下の名前で呼べる関係である。
「今日も一緒だね」
「まぁお互い週4回でシフトに入ってるからかぶることもあるだろう」
「今日は時間もしっかりかぶってるからね。ずっと一緒じゃん」
「たまたまだろうけどな」
「ところでさ、ちょっと前にした話を覚えてる?」
「なんだっけ」
「ほらほら、ショー君がモテない話のこと」
「ああ、それね」
「さすがに彼女いない歴=年齢はやばくない? やばくない? アニメばかり見てるからだよ。見てるからだよ」
「いいんだよ。俺はまだ19歳だし、アニメは俺の生活の一部なんだから」
「そんなことを言ってるからモテないんだよ」
「ド直球うるさいな」
「20歳のお姉さんは心配してるんだよ」
「めちゃくちゃ余計なお世話なんだけど」
「まったく素直じゃないだから」
「否モテな俺にいちいち絡んでくる必要性はないだろ」
「え、図星突かれて怒っちゃったの? ちょー可愛いんですけど、可愛いんですけど」
「その俺を煽る時に2回繰り替えすのマジでうるさい。いいから早く品出しをしなよ」
「もっとお話してからでもいいじゃん。前髪きちんと切るとかさ、服装変えるとかさ」
「もう放っておいてくれ」
「はーい、じゃあ品出ししてくるね、ギュッと」
「お、おい」
俺の左手をちょっと握ってから仕事に行った。
こんな調子で朋さんはとにかくスキンシップが多い、非モテな俺は実際女子との交流がないため、少なくとも顔のいい浅野からの絡みにはつい反応してしまうこともあり、すっかりからかわれてしまう。
「ショー君、ちょっとこっち見て」
「なんだよっって?」
朋さんはスカートをひらひらさせて俺に向けてきた。絶妙に太ももが見える。
「どう? どきどきした?」
「べ、べっつに~」
「強がっても顔には出ちゃってるよ、初心なんだから~初心なんだから~」
「そんなことないし」
「汗すごいけど体調でも悪いの? 悪いの?」
「いきなりそんなことするからだし」
「そんなことってどんなこと? どんなこと?」
「自分の胸に手を当てて考えてみろよ」
「え~、わっかんないな~わっかんないな」
煽りが絶好調である。
「もういいし、仕事してくるよ」
「そんな顔で仕事して大丈夫なの? 大丈夫なの?」
ちょっと煽りと心配が両方入ったセリフである。どうやら俺の顔が先ほどの影響で若干人前に出るには適さない顔になっていたようだ。
「まぁ仕事だからするし」
「真面目さんだね、でもその顔をお客さんに見られちゃうね、見られちゃうね」
「まったく、俺のことからかって楽しいの」
「え? 急にどうしたの?」
「別に何でもない。そろそろ休憩終わるだろ。早くレジにいけよ」
「はーい、じゃあまた後でね」
さて、実際思い切り綺麗な足を見せられたせいで、完全に動揺した。別にお客さんに心配されるようなことはなったが、自分がどんな顔をしてるのかが気になって仕事にいまいち集中できなかったのも事実である。
俺のシフトがかぶってない時も、絶好調で色々な人をからかってるんだろうな。
「ショー君やっほ」
また別の日、シフトが一緒になった。同じ大学生ということもあり、週4回のうち2~3回は実際かぶる。
「朋さんも休憩か」
「うん、人が引いたから休憩してきてもいいって。またタイミング一緒だね」
ただシフトがかぶっても、休憩時間がかぶるのは割と珍しい。ふつう1人ずつ取るのだが、今日は店長が急遽出勤した都合で少し人に余裕があるので朋さんとかぶったのである。
「ねぇねぇショー君」
「何?」
「朋さんじゃなくって、朋って呼んでもいいんだよ」
そういいながら、俺と腕を組んでくる。
「へ?」
「さん付けじゃ他人行儀じゃん。親睦を深めるために、呼び捨てで呼ぼうよ、呼ぼうよ」
「いや、仮にも年上の女性を下の名前で呼び捨てで呼ぶのは……」
「いいからお試しでもいいじゃん。呼んでみてよ、呼んでみてよ」
「……朋」
「うふふ、はいよくできました。よくできました、なでなで~」
すごい満足そうな表情で頭をなでなでされた。スベスベの手で撫でてもらうのは気持ち悪くはないが、気恥ずかしい。
「止めろって」
「あれ? 怒っちゃった? 怒っちゃった?」
「べ、別に怒ってないけど、いいから離れてくれ」
まだ腕を組まれたままである。
「いいじゃん、減るもんじゃないし」
「俺は休憩が空けるんだよ。戻りたいからさ」
「フフ~ン、ねぇねぇこのまま戻っちゃおうか? 戻っちゃおうか」
「それは無理」
「ちぇ~つれないな」
「翔太君、戻ってきてくれるかい、ちょっと混んできた」
すると休憩室に店長が入ってきた。
「あ」
「お疲れ様です」
「2人は相変わらず仲がいいんだね。距離感も近いし」
「やっぱりわかります? そうなんですよ」
「ちょっと黙っててください。店長もこの状況を自然に受け入れないでください」
店長はマイペースである。
「僕もそんなに野暮なことは言わないよ。じゃあほどほどにして戻ってきてね」
「はい」
「じゃあショー君、今度またゆっくりね」
こんなやり取りが日常茶飯事である。
とはいってもあまりにしつこいので、そろそろ俺は決心することを決めて、別の日の仕事終わりに朋さんに声をかけた。
「朋さん、ちょっと話したいことがあるんだけど」
「何々改まって、それに朋でいいって言ったのに?」
「大事な話だから」
「何? 便秘が治ったとか?」
「俺は一度も便秘だったことはないが、そうじゃなくて、さんざん俺の非モテについてからかってきただろ」
「そうだね」
「実は俺には心に決めた人がいる。その人に人生をささげる予定だから、俺の非モテについてはもう放っておいてくれ」
「え、嘘……」
「嘘じゃない、その人のことが大好きなんだ」
これで妙なからかいも無くなって……
「そ、そんな、ヒック、ヒック……」
まさかの朋さんが泣き出してしまった。
「え、おい、何で泣くんだよ」
「それをわざわざ言うために……、何で非モテなのに」
「そこについては触れないでいただけると……」
「そんなの無理だもん」
「どうしてそうなるんだよ」
「もうこの際だから私も言いたいこというからね」
「なんだよ」
「私ショー君のこと好きなの……」
「へ?」
まさか告白された、人生初の告白だ。
「え、それは冗談か何か……」
「本気なんだもん!」
「いやだって、朋さんは俺のことを毎日からかってきただけで……」
「それは照れ隠しだもん。ほかの人にはあんなことしてないもん。普通に接したら恥ずかしくてできないもん」
「えーと俺はいまいち状況が理解できないんだけど……」
「ショー君、私がここに入ったばかりのこと覚えてる?」
「ああ覚えてるよ。あの時の朋さんは素直だった」
「ひどいなぁ。でもね、あの時私に丁寧に仕事を教えてくれたショー君にとっても感謝してたんだ、それでバイトが楽しくなって、ショー君に会いたくなって……、シフトも合わせるようになって……、気づいたら惹かれてた」
「そ、そうだったのか」
「気づいてなかったんだね」
「まぁ無理があるだろ。お前の言う通り俺は非モテだったんだから」
「因みに……だれ?」
「へ?」
「ショー君の好きな人、誰?」
「それは、俺の好きなワン・フェンフェンちゃんだ」
「へ、それって」
「前に話したことあると思うけど、俺の好きなアニメのヒロインだ。チャイナ服とツインテールがキュートな俺の一押しだ」
「それは本当の話?」
「本当だ。俺の目を見てみろ」
「うわ、本気の目だ……、でもそれなら……」
「じゃあありがとな、気持ちはすごくうれしかっ「勝手に終わりにしないでよ! 明日覚悟しててね!」
そういって朋さんは帰って行ってしまった。まぁこれでからかわれることはないのかな。
いろいろ解決しようと思ったら、明日の約束ができてしまったが。
次の日、仕事終わりに今度は朋さんに待っているように言われた。
今日は遅番で、店長が不在のため、俺と朋さんが最後に店に残っている状態だ。
「ねぇ、ショー君、ちょっとあっちを向いててくれるかな」
「ああ」
「……今度はこっち向いてくれるかな」
「ああ、いったい何……え」
そこには俺のヒロイン、フェンフェンちゃんがいた。可愛らしいツインテールに綺麗な足が見えるチャイナ服、俺は見とれた。
「……何してんだって思ってるでしょ」
「いや、思ってない……めちゃくちゃ感動して言葉にならない……」
「え」
「俺のために……なりきってくれたんだろ。見た目も雰囲気もフェンフェンちゃんが現実に出てきたみたいだ。夢みたいだよ」
「そっか、喜んでもらえて何よりだよ」
「このためだけに準備してくれたのか」
「そうだよ……、これで気持ち伝わったかな」
「本当にありがとう。昨日は適当にあしらってごめん。朋さん、いや、朋。付き合おう」
「うん、よかった。2回もふられるのはごめんだからね……」
こうして俺は朋と付き合うことになった。バイト先は店長含めていい人が多い場所だったが、朋と付き合うことになって、より彩がついた。
ちょっと朋のからかいがなくなったのだけはさみしかったりするのは内緒で。




