表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すきだらけ  作者: 35
13/33

第13話 クールな幼馴染は不器用なだけ

俺の名前は亀田竜輝かめだりゅうき


高校2年生の俺には幼馴染の女子がいる。

名前を沢田小百合さわださゆりという。

いつもつまらなそうな表情をしている。


「沢田さんって美人でかっこよくて素敵だよね~」


「そ」


クラスメイトにそういわれても、実にそっけない。いわゆるクールビューティーである。


「沢田さん、よかったら一緒に放課後遊びにいかない?」


「パス」


クラスメイトに誘われても実にそっけない。実にクールビューティーである。


「ええいいじゃん行こうよ~、たまにはさ~」


「パスって言ってんでしょ」


「……すいません」


相手が粘ればより強気に断る。改めてクールビューティーである。


しかしこれだけ不愛想でも、毎日誰かしらに誘われている。なんでもクールビューティーなルックスに勝気で不愛想な性格がマッチしてそれがいいとのことである。


「みんなそんな小百合がいいんだってな。俺はもっと可愛げがある女の子のほうが好きだがな」


「何本人の前で悪口言ってるの。蹴っ飛ばすわよ」


そんな小百合と幼馴染ということで、他のクラスメイトよりは会話になる。


「しかし真面目な話そんな性格で問題ないのか。校舎裏に呼び出されたり、複数人でいじめにあったり、上履き隠されたりはしないのか」


「余計なお世話よ。高校生にもなってそんな次元の低いことする人はいないわ」


「それならいいんだが、何かあったら言えよ」


「大丈夫だっつってんでしょ。私はこう見えて人付き合いはうまくやってるわ。むしろ竜輝のほうが心配だわ。非モテ男なんだから」


「はいカッチーンと来ましたよ。誰が女子にモテない顔だって?」


「そこまでは言ってないわ」


確かに言ってない。非モテの部分に強い印象を受けすぎたか。


「まぁ何もないならいいよ」


「心配してくれるんだ」


「まぁ幼馴染だからな」


「ありがと……」


「え? なんだって?」


「耳掃除をきちんとしてないのかお前は。たった四文字も聞き取れないとか」


小百合はあんな性格であまりお礼を言ってくれることは少ないからな。聞ける機会があるなら聞いとこうと思った。


「それより今から寄り道してハンバーガーでも食べてこうぜ」


「はいはい、行くわ。もちろんあなたのおごりね」


「……300円までなら」


「それでいいわ」


基本的に俺が小百合を誘うので、誘われた小百合におごるのが日課である。

別に小百合は大食漢でも浪費家でもないので、おごるといっても大したことはない。


「くそ、俺が誘っても絶対に一緒に行ってくれないのに何であいつは一緒にいけるんだ」


「うらやましいな」


クラスメイトには良く羨ましがられる。まぁ実際小百合は美人だから、一緒にいるとよく見られるし、一緒に歩いていて悪い気はしない。



そんなある日。


「なぁなぁ聞いたか。1年生にめちゃくちゃかわいい女の子が転校生で来たらしいぜ」

「3年生の先輩までわざわざクラスに見に行ったらしいぞ」

新橋幸子しんばしさちこっていうらしいな」


どうやら1年生にものすごくかわいい女の子が転校生で来たらしい。


俺も見に行ったが小百合がクールビューティーとするなら、ピュア可愛い女の子といったところか。


男子生徒はすっかりメロメロになってしまったようである。


「転校生すごいみたいね」


「ああ、ファンクラブまでできそうだって話だぞ」


「竜輝は行かなくていいの?」


「俺がなんでだ?」


確かに今まで小百合に首ったけだったクラスメイトもすっかりメロメロになっていて、クラスの女子は不機嫌だった。小百合はまったく気にしていなかったし、むしろ絡まれなくなって気楽になったようだが。


「だって、竜輝は可愛げがある女の子が好きなんでしょ」


ちょっと前に言ったことを根に持ってるな。意外とこういうところあるんだよな。


「悪かったよ可愛げがないみたいなこと言って。小百合は可愛いよ。ちゃんと可愛い女の子だ」


「ふーん」


俺がほめてもそっけない返事をしてくる。


「なんで口元を両手で覆ってんだ」


表情は変わらないように見えたが、なぜか小百合は両手を口元にあてて、年収低すぎみたいなポーズをした。


「これはあくびが出そうになったから、口元を隠してるのよ。たとえ幼馴染でもはしたない表情を見せるのはよくないもの。決してにやけそうなのを隠してるわけではないわ」


「女子としての美意識が高い」


「実際あの子はどう思うの」


「まぁ可愛いよな……ちょっと待ってください俺は別にあくびを見られても気にしないので、口元を抑えなくてもいいんですよ痛い痛い」


小百合の右手が俺の顔半分をつかんで力強く握ってくる。地味に痛い。


「ごめんなさいムカついたから」


「なるほど、可愛さで勝てないと思ったからムカついたたたた!」


さっきより強く握られた。


「今のは普通にムカついたので」


「そんなムカつかなくてもいいだろ。別に小百合は小百合で可愛いんだから、そこを比べる必要はないわけで」


「そこでムカついてるわけじゃないわ」


閑話休題


「あ、先輩!」


そんなやりとりをしていると、背中から声が聞こえてくる。


「せんぱ~い」


俺は後ろを振り返る。特に誰もいない。ということは。


「驚いた。転校生と小百合は知り合いだったのか」


「なんでそうなるのよ。どう考えてもあなたのことを見て先輩って声をかけてきてるじゃない。目が腐ってるの?」


「そうかな。あ、廊下を走るから先生に見つかって怒られてる」


「そして泣いてるわね。先生も逆におどおどしてるわ。あの子本当に強いわね」


「そして泣いたままこっちに来たな」


「ぐすんぐすん」


「あー、とりあえずこれで涙を拭けよ」


俺は転校生にハンカチを差し出す。


「ぐしゅぐしゅ、ありがとございます。チーン」


涙だけでなく鼻水まで拭かれた。そこまでは許可していない。


「ありがとうございました。これをお返ししますね」


「できれば洗って帰していただきたい」


「美少女の水分なのに」


「不純物だからな」


「で、1年生が竜輝に何の用事があるのかしら」


横から小百合が声をかけてくる。確かにどう考えても俺に用事があるようだ。


「あ、そうでした! 先輩、私先輩のことが好きなんですぅ」


「…………」

「…………」

「…………」


中々の爆弾発言にしばらく場が沈黙した。


「え?」


「はぁ?」


俺は驚き、小百合は声を上げた。


「どういうこと?」


小百合が俺に聞いてくる。


「いや、俺に聞いても答えは出ないだろ。はっこれはモテ期」


「そんなわけないでしょうが」


「そんなわけないとまで言わなくても……」


小百合さん、なかなかに辛辣。


「先輩の事一目ぼれしちゃったので、よろしければお願いしますぅ」




それからというもの……。


「先輩! 学校の案内をしてください」


「なんで俺?」


「先輩のことが好きだからですぅ」


学校のマドンナの幸子ちゃんになつかれるということになってしまった。小百合の件以上に周りからの視線が痛くなってしまった。


「じー」


「ど、どうした小百合?」


幸子ちゃんが近づくと、小百合は若干不機嫌になる。


「今日お昼一緒に食べる約束忘れたわけじゃないでしょうね」


「え~、お願いしますよ先輩~うるうる」


「小百合悪い。俺学校の案内してくるな」


「やった~。先輩しゅき~」


「ふんっ……勝手にすれば」


しまった小百合を怒らせたな。後々フォローは必要だな。


「先輩はあの人と仲がいいんですか?」


「いわゆる幼馴染ってやつだ」


「へー。なるほどなるほどにやにや」


なんかにやにやしてるし、にやにや言ってる。


「で、どこを案内すればいいんだ」


「先生にばれない絶好のさぼりスポットを教えてください」



「えーと中庭の3本ある木の真ん中あたり……っておい!」


とまぁこんな感じでからかわれつつも、楽しく幸子ちゃんと過ごす日常が増えてきた。


「せんぱ~い、一緒に帰りましょう」


「おー。帰るか」


俺のクラスにもよく顔を出してくれて、帰りの迎えに来てくれることもあった。


「えっ?」


「ん? どうした小百合」


「別に……、いつも一緒に帰ってたのは私なのにとか全然思ってない」


「? そうか」



こうして毎日のように幸子ちゃんと一緒に帰るのを含め、とにかくかまっている日々が続いた。


すると小百合の様子に少し変化が起こった。


「ねぇ。今日は私と一緒に帰らない?」


「え? 小百合から誘ってくるなんて珍しいな。どうかしたのか」


「別に何もないけど……」


「本当か。何もないのにわざわざ小百合が誘ってくるなんて珍しいから」


「……何もないなら私から誘っちゃダメなの?」


「あ、いや別にそんなことはないんだが……本当に何もないのか?」


「しつこい。ただ私が一緒に帰りたいから誘っただけ。本当に他意は何もない」


「…………」


「何よその顔は」


俺の驚いた顔に小百合が不満顔である。


「いや、小百合がここまで感情を表情にも言葉にも出すなんて本当に初めてだからな。普段はクールにしてるから周りからは無表情無感情みたいに思われてるけど。実際はただ不器用なだけだもんな」


「むぅ……」


照れ顔もなかなかレアだ。


「そんな小百合が素直に感情を向けてくるなんてどういう風の吹き回しなんだ?」


「悪いの……」


「いや、うれしいよ」


「ふーん、あ、あの私がおごるから。一緒にハンバーガーでも食べに行きたい」


本当にどうしたことだろうか。素直な小百合は実に可愛いが心配になる。


「せんぱ~い、一緒に帰りましょぉ~」


「ちっ来たわね」


あれ素直モード終わった? ある意味素直だが。


「悪いな、今日は小百合と一緒に帰って、ハンバーガーショップに行く約束があるんだ」


「そうよ。今日は私と帰るの」


急に上機嫌になった。小百合の情緒が不安定だ。


「え~いいなぁ~。私もご一緒していいですかぁ?」


「おおいいぞ」


「はぁ?」


「え、いけなかったか」


「……別に……」


また不機嫌になってしまった。こんなに短時間で感情が動くタイプだったか。


「怒ってるか?」


「怒ってない!」


ものすごく怒ってた。


「わぁ~い、このハンバーガーおいしいですね。いつもチーズバーガーしか食べないんですけどチキンもいいですね」


「…………もぐもぐ」


幸子ちゃんがご機嫌でハンバーガーを食べる中、仏頂面で小百合がハンバーガーを食べている。


基本クールな小百合だが、ハンバーガー、特に照り焼きバーガーが大好物で、それを食べてるときはどれだけ不機嫌でも(´~`)みたいな表情になってご機嫌なのに。


「おいしいハンバーガーを教えてくれたお礼に私のポテトをあげますね。はいあーんです」


「……あーん」


ニコニコポテトを向けられては無下にもできず素直にポテトをもらう。


「うん上手い」


トントン。


俺がポテトを食べていると、肩を叩かれる。


「ん? どうしたんだ小百合」


「私のも食べさせてあげる。あーん」


「え、でもそんなにポテトをもらっても……」


「あーん」


「……あーん」


断れず。


「はは~ん? にやにや」


そんな俺たちを幸子ちゃんがにやにや見ていた。


その後も……ゲーセンにいったのだが、


「せんぱーい、あれ取ってください!」


「ああ」


「……私もあれを取って!」


「……ああ」


幸子ちゃんがねだれば、小百合もねだり。


「わーい、ありがとうございます。くっついちゃいます!」


「わ、私も」


幸子ちゃんがくっつけば小百合もくっつく。


幸子ちゃんは珍しくないが、長い付き合いの小百合でも絶対にしたことがないことをしてきた。

こんな甘い小百合は初めてである。


「いやぁ~、先輩といると気を使わなくて楽しいですよ。よければ明日は2人きりで行きませんか?」


「ああ、別にいいけど」


「わ~い楽しみですぅ」


「子供か」


その場で笑顔でくるくる回る幸子ちゃんを見てほほ笑む。


くいくいっ。


「ん?」


すると俺の服を小百合が引っ張る。


「あのさ、あの子が可愛いのは私も分かるけど……、たまには私にも構ってよ……」


「え?」


小百合が少し悲しげな表情を見せる。今日の小百合は喜怒哀楽が激しいな。


「私は不愛想だし、あの子のほうが可愛げがあるし、明るいし、恋人にするならあんな子のほうがいいだろうけど…………毎日一緒にいてくれた竜輝が構ってくれないと……正直寂しいから……」


「え、えーと、小百合。幸子ちゃんと付き合いたいとかはないぞ」


「でも告白されてたし。竜輝もまんざらではなさそうだったし……、いつか付き合う可能性はあるでしょ」


「いや、付き合うも何も……、幸子ちゃんは従妹だからさ」


「は?」


「ふふふ、にやにや」


小百合は驚き、幸子ちゃんはニヤニヤした。


「どういうことなの?」


「いやだからさ、幸子ちゃんは従妹なんだよ。結構会うの久々で、最初気づかなかったんだけど、学校案内してるときにそういう話になって思い出したんだ」


「ひどい話ですよね。昔はあんなに遊んだのに」


「私女の子の従妹なんて子は知らないけど……」


「ああ、小百合が知ってる従弟はお父さんの方の従弟だな。幸子ちゃんはお母さんの方の従妹で最近こっちに来るまでずっと遠方だったからな。


「じゃあなんで先輩呼びなの」


「それはぁ。せっかく同じ学校で過ごすなら、先輩って呼びたいじゃないですか、普段はお兄ちゃんって呼んでたんですけど、先輩って呼んだ方が先輩の学校での立ち位置がややこしくなって面白いかなって」


「昔からこうなんだよな幸子ちゃんは。いたずらっ子で」


「好きっていうのは何?」


「先輩のこと大好きですもん。からかい甲斐のあるお兄ちゃんとして!」


「お。お兄ちゃんとして……」


「あ~もしかして沢田先輩、先輩を取られちゃうと思って焦っちゃいましたか?」


「うううう……」


小百合が照れ顔でうつむく。レア表情だ。


「まぁ安心してください。私はお2人のことをどうこうしようとは思いませんので」


「うう……私はなんて恥ずかしいことを……もうやだ帰りたい……」


「ごめんな小百合、久々に会った幸子ちゃんと話したいこともあって、つい小百合と蔑ろにしちまった。さみしい思いをさせてしまってたなんて」


「あ、いやさっきのは「安心してくれ! これからは小百合がさみしくないように構うから! 構い倒すから」


「人をかまってちゃんみたいに言うのやめてぇ……」


「え? 沢田先輩違ったんですか」


「違うにきまってるじゃない」


「クールに言ってますけどぉ……、何でしたっけ? 『正直寂しいから……』でしたっけ~?」


「そこを繰り替えすの本当にやめてくれない!」


「いえいえ。いい感じに台詞にタメがあって可愛かったですよ……ぷぷ~」


「何この子! ムカつくんだけど」


「まぁ幸子ちゃんは昔からずっとこうだから」


「もしかして~、沢田先輩は先輩のことラブなんですか~?」


「な、なに言ってるの?」


「だってぇ~、ラブじゃなかったらぁ~、構ってほしいなんてぇ~、言いませんよねぇ~痛い痛い痛い、すいませんちょっと調子にのりました反省しますので、口元をつかまないでいただけますでしょうか」


俺の食らった口元つかみを幸子ちゃんも食らっている。あれ地味に痛いんだよな。


「ああ、そういえばさ小百合」


「何、今忙しいんだけど」


「さっきさ、恋人にする話あったけどさ、俺恋人にするなら小百合みたいんな女の子がいいとずっと思ってるぞ」


「ふ、ふーんそうなんだ」


「あ、パワーが緩んだ。喜んでますね。この人ちょろいたたたたた、ごめんなさい余計なこと言いました」


「お代わりをお望みのようなので、パワーアップしてお届けします」


「先輩助けてください顔が変形してしましますぅ~」


そんなこんなで楽しく過ごした。


そして小百合が素直になって、俺と小百合が付き合うまでにそう時間はかからなかった。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ