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すきだらけ  作者: 35
10/33

第10話 塩対応な先輩

俺の名前は御堂茂みどうしげる


大学のテニスサークルに属する大学1年生である。


ただ俺はそこまでテニスが上手いわけでもないのだが、高校時代のテニス部の田中先輩がいたため流れで入れられてしまった経緯がある。大学では特に何かするつもりではなかったのだが、断れない自分が悲しい。


「おい御堂! 早く注文をしろよ」


今は飲み会にいる。


今年は新入部員が少なく、数少ない1年生で田中先輩が仕切っているため俺が指示をされやすいため、今は注文を聞いている。


「全員の注文を聞くのは大変なんですよ。お酒の種類もよくわかりませんし」


大学1年生の俺は19歳のため、当然お酒は飲まない。

4年生の先輩はすでに就活で離れているため、2年生と3年生の先輩のお酒を聞いている。

女子部員も多くてカクテルも多いのだが、名前がわからん。


「まったく使えないな。だから試合でも結果が残せないんだぞ」


関係あるのか。もちろん声には出さないが。


「なぁ音々もそう思うだろ」


「……別に」


田中先輩はプレーも上手で高校時代は全国に行ったこともある。イケメンでサークルの中での人気も高い。取り巻きの女子も一緒になって笑っているが、ただ一人クールにお酒を飲んでいる女子がいる。


彼女の名前は南本音々(みなもとねおん)先輩。2年生の先輩で田中先輩とは同期になる。

活発な生徒が多い中では比較的物静かだが、サークル内ではトップクラスの美人。


ショートヘアーに細い体、外で活動しているのに白い肌に大人っぽく落ち着いた印象が美人度が高い。体は少し小柄なのがまたかわいらしい。


遠目から見る限りでも、田中先輩が南本先輩を狙っているのはなんとなくわかっていた。

そして、あまり南本先輩が靡いていなさそうなのも感じていた。


そもそも会話をあまりしようとしないので、田中先輩に限ったことでもないのだが。


「南本先輩はお代わりはだいじょうぶですか?」


「……いい」


「おいおい、御堂、俺の音々に話しかけてるんじゃねえよ」


「でも全員の飲み物を聞けって……」


後俺のって何ですか。とは言わない。


「音々はなぁ、ホストレベルのイケメンしか興味ないって噂なんだよ。それをお前が話しかけても何ともならないだろうが」


それは現時点で相手にされてない田中先輩も南本先輩にイケメン扱いされてないということじゃないでしょうか。とは言わない。

そして同じサークル内の話なのに噂ってなんですかともいわない。


俺何も言えない悲しい。


「とにかくお前は俺の言うとおりにしてればいいんだよ」


「分かりました」

昔から田中先輩に逆らうとろくなことにならないと決まっているので、何も逆らわないのが一番である。おとなしくしてるのが一番被害がない。


そんなこんなで気を使って飲み会は終わった。


来年以降やるとしても、後輩に気を使わせないようにしよう。上下関係は必要だが、過度な気遣いは疲れる。結局清算もやらされて、端数は払わされたし何一つ得していない。


「チッ、音々が出てきたかと思ったらお前か」


清算を済ませた俺にねぎらいもなく舌打ち。相変わらずの人である。もはやむかつきもしない。


「南本先輩はお手洗いに行かれてるので、まだみたいですね。ほかの方は帰られたんですか。現地解散ですかね」


「ああ、他のブス共は帰らせたよ。今から俺とこいつらで音々を二次会の名目で誘って酔い潰して俺の家に連れ込む作戦だ。音々はああ見えてお酒は好きだから断らないだろうしな」


「は?」


「酔わせて抵抗できなくしてやることやっちまえはさすがに音々も彼女にできるだろ」


「なぁなぁ俺たちも協力するんだし、終わった後でいいから音々ちゃん貸してくれよ」


「俺も俺も。あんなかわいい子をただで抱けるなんて夢みたいだぜ」


この人たち何を言ってるんだ。田中先輩はいろいろひどい人だったが、これは常軌を逸している……、俺はもはや恐怖を覚えた。


「……お待たせ」


「先輩すいません!」


南本先輩が入口から出てくるのを見た瞬間に俺は南本先輩の手をつかんで走った。


「こら! 音々をどこに連れていくつもりだ!」


「え? え? 何」


「事情は後で話します! 今はとにかくついてきてください!」


田中先輩の怒号と南本先輩の驚き声が聞こえてきたが、今はそれどころではなかった。


「待てやこら!」


俺は怒号を背に受けながらも、うまく先輩を連れて逃げた。


「狭いけど大丈夫ですか」


「う、うん」


そして狭く入り組んだ道や、細くて一見道に見えない道、暗いところだけ行き止まりにも見える道をうまく使って、田中先輩達をまくことに成功した。


「はぁはぁ……危なかった……、田中先輩身体能力が高いから、道が有利でも逃げ切れない可能性あったしな」


「……あの……手」


「あ、すいません」


俺は南本先輩の手を思い切り握ったままだったので驚いて離す。


「それは別にいい。でも何があったかの事情は教えて」


「ああそれはですね」


俺は先ほどの話をできるだけオブラートに伝えた。

あまり直接的な表現をしすぎると、今後のサークル活動に支障が出かねないので。

別に俺はいいのだが、サークルそのものに問題が出るのに問題がある。


「……じゃあ守ってくれたのね。ありがとう」


「いえいえとりあえずこのまま駅まで向かいましょう」


内容も話したし、今後田中先輩が南本先輩に言い寄っても簡単にはついていかないだろう。


「そうね……あっ」


「どうしましたか。あ……」


南本先輩が何かつぶやいたと思うと、空から雨粒が降ってきた。


「傘はありますか」


「持ってない」


「そうですよね、今日の予報に雨予報はありませんでしたからね、うわあこれは酷い」


雨は一気に降ってきた。かなり強くてこのままではずぶ濡れである。


「駅までまだあるの?」


「はい結構あります」


ほろ酔い状態の南本先輩を連れて行けばなおさらだ。ここまで濡れてしまっては、今更傘を買う意味もないし。


「なら……あそこはどうかしら」


「あそこ? あそこはホテルですよ」


南本先輩が指さした先はホテルである。別にやましいホテルではなく、通常のホテルである。


「このままじゃ風邪を引いてしまうわ。ホテルならお風呂や乾燥機もあるし、明日は休みだから泊っても問題ないわ」


「そ、それはそうですが」


「……部屋は別々でとればなんの問題もないでしょう」


「あ、はい、そうですね」


いかんいかん、当たり前だ。俺が強く否定してしまったら、俺も田中先輩みたいなことを思っていると思われる。本当に思ってませんよ。


こうして俺は南本先輩と同じホテルに泊まることになったのだが……


「ただいま部屋は1つしか開いておりません」


受付に行くとそのような回答をされた。


「で、では俺は帰りますので……」


「待ちなさい」


俺がホテルを出ようとすると南本先輩に首をつかまれる。


「いえいえ、1部屋しかないんですから俺は帰りますよ」


「風邪をひくわ。それであなたに体調を崩されたら私の気分が悪いわ。同じ部屋でいい」


「で、でも付き合ってもいないのに同じ部屋に泊まるなんて……」


「何? 私と泊るのがそんなに嫌なの?」


ものすごく睨まれた。怖い。確かにここで断りすぎると俺が何かをすると思っているように思われる(2回目)


「もちろん嫌ではございません」


「なら決定ね」


というわけで、南本先輩と同じ部屋に泊まることになってしまった。


空いていた部屋が2人用の部屋でベッドが2つあるのだけは幸いではあるが、ドキドキが収まらない。


今南本先輩はシャワーを浴びている。無駄に静かで音が聞こえてくる。


「上がったわ」


「あ、はいっ!!?」


俺が振り向くと南本先輩がバスローブ姿になっていた。


「な、なせそのような格好に?」


「あまりじろじろ見ないでほしいわ。服が濡れたから乾かすためにバスローブを借りたの。君も風邪を引く前に入ってくるといいわ」


「そ、そうですね」


俺は慌てながらお風呂場に向かった。


「はぁ、南本先輩はミステリアスだな……」


器量のいい美人な南本先輩だが表情には乏しく、いまいち考えていることがわからない。


俺に対して時々不機嫌な表情を向けてきていたので、あまり好かれていないと思っていた。


ところが俺が急に走り出してもついてきてくれたり、俺の前で無防備な姿を見せてくることを考えると、そこまで嫌われていないとも思える。距離感がよくわからなかった。


「南本先輩、シャワー上がりました……ってもう寝てるのか」


俺もバスローブに着替えて風呂場から上がってくるとベッドに横になっている南本先輩がいた。


まぁ結構お酒飲んでいたし、いろいろ走ったりもして疲れたのかな。


俺はお酒は飲んでないけど眠いし……。


「しっかし改めてきれいな人だな……普段は無表情か不機嫌顔しか見てないからこういう無防備な表情は新鮮で……いやいや寝顔を見るのは失礼だ。さっさと寝よう」


俺は電気を消して隣のベッドに横になる。



ん……、なんか寝苦しいな……。


妙に重い感触と寝苦しさを感じて俺は寝ぼけながら薄目を開ける。


って南本先輩?


なんで俺の上にいるんだ?


「もう我慢ができない……」


我慢ってなんだ? やっぱり俺と一緒にいるのが嫌だったのか。


つんつん。


なんか知らないがつつかれる。


「寝てるよね……」


俺は何となく危険を察してギリギリ薄目で止めて目を閉じる。


「すぅ……」


うぉっ!?


俺の紙の辺りに吐息がかかる。


南本先輩が俺の髪の毛の匂いを嗅いでいるのである。


状況が意味が分からな過ぎて動揺した。


「いい香りがする……、やっぱり御堂君の香りだったんだ」


やっぱりってなんだ?


「髪もサラサラだし肌もすべすべで綺麗……、もっと髪型とか気にすればかっこよくなりそうなのになんでしないんだろう……まぁそんなことはどうでもいいか。このチャンスを逃せない……、首筋とかもきになる……」


首筋? そこはさすがに……


「すんすん」


首のあたりに南本先輩が顔を近づけて匂いを嗅いでくる。髪の毛の比ではないくらいくすぐったいが、ここで起きていることがばれるといろいろ大変なことになる気がする。


「ふふ、ここもやっぱりいい香り……ずっと嗅いでたいな……」


南本先輩からもいい香りがして俺はドキドキしている。


「あれ、なんだか顔が赤いような……、もしかして御堂君起きてる?」


「すいません!」


俺はすぐさま土下座した。下手にごまかしてもいい方向に向かう気がしない。


「いつから聞いてたのかしら」


「えーと俺に跨っていたあたりからです」


「つまり最初からね」


「どこを最初とするかはわかりませんが、たぶんそうです」


「ちょっと落ち着くために外の空気を吸ってくるわね」


「ちょっと待ってください。そっちはドアじゃありませんよ」


南本先輩が開けたのは廊下に出る窓ではなく、外の窓である。ちなみにここは五階である。


「止めないで、こうなったら飛び降りる以外はないわ」


「そんなことはありません、俺は別に引いたりしてませんし」


「本当に?」


「ええ」


「寝込みを襲って匂いを嗅いでたのに?」


「それは……ですね」


改めて文字にするとなかなかにやばい状況だな。


「やっぱりもうおしまいだわ」


「本当に何も思ってませんので! そんな簡単に身を乗り出さないでください」


冗談ではなく半分くらい身を乗り出してしまったので、本気で止める。


「はぁはぁ、落ち着きましたか」


「ごめんなさい取り乱したわ」


「それはそれとしてなんで俺の匂いなんか嗅いでたんですか」


それがまず疑問だった。


「実は私あなたの匂いが好きなの」


「匂いですか?」


俺の匂い?


「サークル活動をしてる時から気になってたの。汗をかいている御堂君からいい匂いがするなって。それで気になってたの。確信はなかったけど、さっきお風呂上りの香りがしたときにやっぱりって思ったの。

それで寝てる時なら近距離で嗅いでもいいかなって……やっぱり引いた?」


「い。いえいえ」


南本先輩が窓のほうを向いたので、俺は窓の前に立つ。


「むしろ安心しました。嫌われてないか心配してたくらいなので」


「御堂君のことを嫌いだって思ったことは一度もないわ」


「なんか俺のほうを見るときにいつも不機嫌そうだったので」


「あれは御堂君に限ったことではなく、私が話すのがあまり得意じゃないから表情が硬くなっちゃうの」


「じゃあただの人見知りですが。みんなからはクールって呼ばれるんですが」


「別にクールなつもりはないけど。特に御堂君の前だと匂いのこともあってドキドキしちゃって余計に硬くなってると思う」


「そんな風には見えませんけど」


「本当よ、ほら」


南本先輩が俺の手を胸元にあてる。


「な、なにをするんですか」


尋常ではない柔らかい感触がした。


「ほら、どきどきしてるでしょ」


南本先輩がそういうが、俺はそれどころではない。南本先輩は小柄で、普段の服装もあまり露出のある服を着ていないので気づかなかったが割と大きいサイズをしていた。


「わ、分かったので放してください」


「ま。まだ話は終わってないわ。こんなにドキドキしてたら寝れないでしょ。だからあなたの匂いを嗅ぎながら寝れば安心できると思うの。だから寝るまで匂いを嗅がせてくれないかしら」


「わ、分かりましたからなんでもしますから放してください」


なんかいろいろ強いことを言われた気がするが、とにかくこの状況をなんとかしたかった。


「本当に大丈夫? 私みたいなくらい女のお願い聞きたくないんじゃないの」


「ネガティブですね。南本先輩はとても美人ですよ」


「そ、そう」


「あれ、心臓の鼓動が早くなった気がしますが……」


「気のせいよ……」


とりあえず放してもらうことには成功した。



「ではとにかく匂いを嗅がせてね」


「なんでこの体制なんですか」


南本先輩は俺の背中に抱き着いて匂いを嗅いでいた。つまり同じベッドに2人でいることになる。


「こうしないと匂いを嗅ぎながら寝られないわ」


「こうすると俺がドキドキして寝られないんですが……」


いろいろ当たってるし、それこそ南本先輩のいい香りがする。


「ああ、素敵な香り……、とっても落ち着くわ……」


「俺は落ち着けません……。先輩?」


数分すると南本先輩はすぐに眠りについた。


「こんなに穏やかに落ち着いて寝てるなんて、今日は南本先輩のことをたくさん知れたな。きれいでかわいくて、香りの愛称がいいんだったら、南本先輩と付き合えたらいいなって……なんてね」


南本先輩が寝ているので、俺もちょっとだけつぶやく。



「ふわぁ……、あんまり寝れなかったな」


次の日朝にホテルから出る。


「いい天気ね」


南本先輩はとってもつやつやだった。ならいいかな


「あっ、お前ここにいたのか」


田中先輩に出会ってしまった。一気によくない朝になってしまった。


「というか2人ホテルから出てこなかったか。俺の音々に何をしたんだ」


「待って、俺の音々って何? 私はあなたのものではないし、御堂君とは雨が降ってきたから泊ってただけ。彼は紳士よ。あなたたちみたいに何かしようとはしなかったわ」


「ちっ。まぁいいや、こいつなんかより俺の女になれよ」


「嫌よ。あなたの匂いは嫌な香りがする。近くにいると不快だわ」


「なんだとこの女……」


「待ってください。乱暴はだめですよ」


南本先輩の腕を無理やりつかもうとしたので、俺は間に入る。


「何をしやがる。お前の出る幕じゃない!」


田中先輩に思い切り殴られる。


「御堂君!」


「邪魔するからだ」


「田中さん!」


「なんだお前ら!」


田中先輩に呼びかけたのは、昨日田中先輩と一緒にいた男子だった。


「昨日の話をしてるところを一部の女子に聞かれてたらしくて、南本を襲おうとしたことや、ほかの女子の悪口を言ってたことが学校全体にばれてます!」


「なんだと!」


「とにかく早く弁解しないと大変です!」


「ああ。くそ、お前ら覚えてろ!」


そういうと田中先輩たちは走っていった。


「大丈夫御堂君?」


「ええ、大丈夫です。ううん、喧嘩強くなくてかっこよくなくて申し訳ないです」


「ううん、そんなことない。御堂君は優しいから。昨日私を自分の立場を気にしないで助けてくれたんだし」


「そうですか」


「ところで御堂君は……、彼女はいるの?」


「と、突然ですね。いるわけがないですよ。普段から俺おとなしくしてますし」


「じゃあ、私……立候補してもいいかな」


「……もちろんですよ」


「じゃあこれからは嗅ぎ放題ね……御堂君、いえ茂君」


「そんなかけ放題みたいに……南本先輩……いえ音々さん」


そして俺と音々さんはお付き合いすることになった。


俺の匂いがとにかく大好きな音々さんは、所かまわず俺にひっついてくるので、学校どころかご近所内でも有名なバカップルになってしまいました♪















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