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聖女になった幼馴染がお土産にダンジョンを持ってきた(?)ので攻略していたら、いつの間にか剣聖より強くなっていた村人の話  作者: コータ


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アンジェとの合流

 夜の草原を、十頭を超える地竜の群れが駆けている。背には鎧を纏った兵士達と、数名の白衣を着た男女が乗っていた。アンジェたち研究員と兵士たちだ。


 彼らは王都ラグへの帰路を急いでいる。多くの証拠が出揃い、遺跡からやってきた竜の調査が完了した。それと同時に、彼女達は可能な限り急いで帰らなくてはならないと直感した。


「先生! 本当にあの竜は、王都を攻めてくるんですか?」


 兵士の背中に捕まりながら、助手の男が上司に向かって話しかけた。声の先にいたアンジェは、同じように兵士の背中に捕まっている。


「違っていてほしいとは思うけれど、ほぼ間違いないわよ。竜の王は誰よりも狡猾だったというわ。今回の様々な襲撃は、最後に王都を攻めるための布石だった可能性が非常に高いでしょうね」


 助手の男は震える思いで夜空を見上げた。


「西側にある竜の遺跡近くの荒地、東にあるジージョの町、北のライナス村、南にあるカフスの祠。この五箇所だけは、徹底的にあるものを破壊されていたのよ」

「……王都ラグに結界を張るための魔道具、ですよね」

「そう。他の町は申し訳程度に攻めたら逃げていたのに、そこの魔道具置き場だけは木っ端微塵になるまで攻めていたわ。竜がこの大陸に現れた回数は十回をゆうに越えているけれど、他の目的があるように……私達を欺くように動いていた」


 王都ラグには遠距離からの攻撃を一切遮断できる結界が張られており、世界でも類を見ないほど堅牢な守りで有名だ。魔道具は結界を補強するためのものでしかないが、全て破壊されてしまった時、耐久性は著しく低下すると言われている。


 実際、修理の為に王都、もしくは王命を受けた民間の魔道具技術者が向かおうとしていたのだが、時折あの竜が出没するため思うように作業を進めることができていない。奴が王都を攻めるために、単身で大陸の人々を引っ掻き回し続けていたという推測を助手は否定できず、そして恐怖した。


 あれだけ巨大な体で、人と遜色ないほどずる賢い。千年前戦った剣聖達が封印することがやっとだったという逸話も、今なら信じられる話だと彼は思う。


「まだラグまでは時間がかかりそうね。恐らくは……あら?」


 ふと、アンジェは草原の奥に見えた深い森から、何かが近づいてくるのが分かった。ランプの灯りをゆらゆらさせながら、こちらと接触をしようとしているようだ。


 どうやら同じく地竜に乗っているようで、兵士達は警戒をして剣を抜く者も現れるほど。だが、アンジェはその姿が、まさに求めていた存在であることに気がつき、大きく手を振った。


「ジークくーん!」

「あ、アンジェさーん!」


 青年は地竜を彼女の横につけると、ふうと大きく息を吐いた。


「いやー、知り合いに会えて良かったです。ラグに向かってたんですけど……実は、道に迷っちゃって」


 頭を掻きながら苦笑いするジークと、彼を乗せた不満げな地竜。苛立ちを隠さず唸り声まで出す始末で、よほどこの竜は振り回されたのだろうなとアンジェは苦笑した。


「そうなのね。ちょうど良かったわ。私達も王都へ帰るところだったのよ」

「やっぱり、あのでっかい竜の件ですか」

「そうよ。恐らくはもう、王都に攻め入っているはずだわ」

「え!」


 この発言は意外だったらしく、青年は目を見開いて驚いた。


「奴は竜でも、とびきり格上で厄介な存在なの。かつては竜の王、と呼ばれていた悪魔めいた力の持ち主よ。そして、最も力のある者から消しにかかる。だから王都を潰しにくる可能性が高いわ」

「は、はあ……」


 竜の王、悪魔めいた力などと言われても、ジークにはあまりピンとこなかった。


「とにかく、私達は幸運だわ。君の力が必要なの。手伝ってくれる?」

「俺の力ですか? 大したことはできないけど、もちろん手伝いますよ」

「ああ、良かったわぁ! じゃあ竜を倒したら、そのあと私の実験にも手伝ってほしいなー」

「は? 実験?」

「そうよ。あなたの総戦力、実は数値が出たの。どのくらいだったと思う?」

「え? うーん。多分五千くらいかな」

「ふふ……くふふ」


 妙な笑い方をするアンジェに、ジークは内心引いてしまう。彼女が意気揚々と答えを発表しようとした時、


「せ、先生! 空が、空が——」


 助手が思わず叫んだ。真夜中の空に無数の光が舞い、その中心に禍々しい何かが浮かんでいる。まだその姿は小さく、ともすれば見落としそうなものではあったが、彼らは誰もが異変に気づいていた。


「やっぱり来たわね。竜の王……王都ラグを落とす気だわ」

「あ……あれが……」


 ジークは咄嗟に言葉が出ない。まだ微かにしか見えず、黒っぽい体は夜空の色と混ざって視認が難しかった。だが、体全体から紫色の奇妙な光を発していることもあり、かろうじて認知できる。


 同時に、あんなに高いところにいる奴をどうやって倒せるのだろうか、という疑問が頭に浮かぶ。彼は地竜を走らせながら、今まで獲得したスキルの再確認をしてみたが、役立ちそうなものは見当たらない。


 本当ならフィアの所に真っ先に向かいたいが、恐らくあの竜の所へ行けば会うことになるだろう。そうジークは考えた。なぜならディランが連れていこうとするはずだから。


「絶対に、フィアを犠牲になんかさせないからな」


 あの奇妙な奴が言うことが本当だとしたら、何があろうと止めなくちゃいけない。そしてその時は、もしかしたらすぐかもしれない。ジークは村を飛び出してきたことが正解だったと痛感していた。


 竜は巨大な翼をはためかせ、遥か上空から王都を見下ろしている。自分は決して、人には登ってこれない高みにいるのだと言わんばかりに。

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