一人の青年、2台のバイク
お見苦しい文章ではありますが何卒よろしくお願いします。
これが私が初めて書いた物語です。当然ひどいものだと思いますが、どうか温かい目で見ていただけたら幸いです。何卒よろしくお願いします。
早朝、まだ日が昇らない頃、千葉県道182号線通称紅葉ロードに一台のバイクが荒々しく排気音を響かせながら疾走していた。バイクは青年が操っていた。名は青木浩一。鴨川市の高校に通い、一人暮らしをしている。親がいないわけでも、虐待を受けているわけでもない。ただ、一人で生きてみたいだけなのだ。免許取得祝いで兄から受け継いだvt250スパーダを己の自由と生活のために使いまわしている。
そんな少し変わった青年は、今ギアを三速に落とし、回転数を7000に維持したまま、紅葉ロードで最もきついカーブをクリアしようとしていた。
一瞬、何が起きたか分からなかった。カーブに突入する直前、ほんのわずかだけ目を閉じたら、再び開けたころには早朝の朝日が見えた。俺は空を見ている。道路の真ん中で寝そべっている。そう気付くのに五秒ほどの時間がかかった。
「そうか、俺はこけたのか、それも派手に。」
横を見ると、ガードレールの下にvtが倒れている。自分の体を起こしてみると体のあちこちが痛かった。しかし、特に目立った傷は見当たらなかった。vtのそばまで行き、起こしてみると、車体のあちこちが破損し、ひどい有様だった。かろうじて何とか走れる状態ではあるが、そんなには長くはもたないだろう。
「早く関谷さんの所に行こう」
バイク屋に着くと、まだシャッターが降りていた。仕方がないので、店の前にvtを止め、横に座りながら煙草を一本吸った。ラッキーストライクの煙は、vtのフロントフォークの間を通り抜け、ゆっくりと朝の清潔な空気の中に溶けていった。
「今日、学校休も。」そう言いながら、煙草を地面に擦りつけた。ジュッっと小さな音がした。
やがて店のシャッターが開いた。錆びついたシャッターの音は、いつもどおり耳障りな音だった。
「うわっ、派手にやりやがったな。その割にはお前は傷一つついてねぇじゃねぇか。vtに感謝しろよ。」
関谷さんは、いつもどおりの陽気な声で言った。
関谷さんvtを押していく後ろを追いながら、店の中に入る。ここはいつ来てもガソリンとオイルの匂いが心地良い。
「台車をくれよ、できれば早いやつがいい。帰って寝たい。」
と言うと、少しめんどくさそうな声で
「今出せる台車はねぇが、そこの端にあるカブなら一万で売ってやるよ。邪魔でしょうがねぇんだ。」
そう言いながら関谷さんは、角の方でホコリを被っているカブを指さした。
近づいて見てみると、ヘッドライトが丸目じゃなく角目だった。
「関谷さん、こいつはカブじゃないだろ、こんなヘッドのカブは見たことないぞ。」
関谷さんは、少し説教するような声で
「そいつは正真正銘のホンダ・スーパーカブ。スーパーカブカスタムだよバカタレ。」
と言ってきた。カブに近づき、よく見てみると、たしかにエンジンにHONDAの刻印があった。どうやら本当にカブらしい。しかもカスタム、なんだカスタムって。
そんな疑問をいだきながら、鍵がさしたままだったのでエンジンを掛けてみた。キック一発で始動。絶好調だ。ナンバーもついている。ガソリンもそこそこ入っている。いいこと思いついた。
会計台に二千円を置いた。こっそりとカブを店の前に出し、ヘルメットを被った。横を見ると、関谷さんと目があった、、、、。手にはさっき置いた二千円が握られている。
「そいつが今の全財産だ、もらってくよ。あ、vt治ったらすぐ連絡して。」
アクセルを開ける。その瞬間、関谷さんがなにか叫び散らかしていたが聞こえなかった。
鴨川から二十分弱かかる和田町の家に向かっている途中、一つ気づいた事がある。普通の丸目のカブは三速しかないが、こいつは四速ある。ますます気に入った。
青年は人生で二番目のバイクを手に入れた。そいつはスーパーカブ、スーパーカブカスタムだ。きっとこいつも青年を自由にさせるだろう。
続く。
最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
今後は細々と気ままに続編を投稿としようと考えているので何卒よろしくお願いします。