花指輪と博士と助手の話
「博士、な、何ですか、これ?」
僕と博士しかいない研究室では、珍しく僕の少し驚いた声が響く。
机の上では何故か花が光っている。
別におもちゃの花ではなく、植物の花が。
「うん?これかい?これは花を光らせることは出来ないかと実験した時にできた試作品だね。」
「なんでそんなことを実験したんですか。」
「え、気になったから。」
「でしょうね。博士らしいや。これは何かに役立ったりとかは?」
「無い」
「ですよね。知ってた。……それにしても、シロツメクサですか。それなら、こうしてっと…………」
僕は昔の感覚を思い出しながらアレを作る。
うん、上手くできた。
「見て下さい、博士。」
「うん?」
「ほら、花指輪ですよ。小さいころ、妹とか作ってあげてたんです。」
「ほう、昔から君は器用なやつだったんだな。」
そう言うと博士は「ん」とこちらに手を差し出してくる。
「えっ?」
「『えっ?』じゃないよ!私にくれるために作ってくれたんじゃなかったのかい?」
「い、いや別にそう言うつもりでは無いんですけど……」
「ぬ……、何て奴だ。私の試作品を勝手に使ったくせに。」
あっ、これ面倒くさくなるパターンだ。
はぁ、仕方ないな。
「はいはい、分かりましたよ。はいどうぞ。」
そうして、僕は博士の指にその花指輪を通す。
「それにしても、博士ってそういうのを欲しがったりするんですね。意外だな。」
「……私がこういうのを欲しがったら、変だと思うかい?」
「いや、そういう訳じゃないけど、博士にも可愛い所があるんだなって思って。」
「ふむ、……別に左の薬指に付けてくれなんて言ってないんだけどな……。」
「えっ?、あっ!」
ホントだ……
「……」
「……」
「博士、やっぱ返してください!」
「それは嫌だ。もう貰ったのだから私のものに決まっているだろう!」
「いや、そこに付けるのは色々マズいので……」
「うん?助手くんが私の左手の薬指に指輪を付けることの何がマズいのか無知な私に詳しく教えてくれないかい?」
「こういう時にそんなこと言ってないで!」
結局、前から博士から言われて渋っていた、新品の顕微鏡を買う事にして、外してもらう事になりました。
皆さんこんにちわ 御厨カイトです。
今回は「花指輪と博士と助手の話」を読んでいただきありがとうございます。
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