驚愕!明らかになった謎
#依頼人の家(居間)
おばさん、父親、母親とお婆さんがテーブルを囲むようにして座っている。そこへ姪が入ってくる。
姪 「だいぶ落ち着いたみたい。今ベッドで寝てるわ。お姉さんが看てるから大丈夫だと思うけど。」
父親、うつむいて両手にはさんだ湯飲茶碗を見つめながら、
父親 「本当に親父がそんなことをしたんでしょうか?」
姪 「おじいさん、亡くなる1年前に大陸の方へ旅行されてますね? そのときに、1日だけツアーから離れて自由行動されてるんです。どうも御自分が配属されてた地方に行かれたようで、それがおじいさんなりの供養の旅だったんじゃないかしら。一緒に旅行された戦友の方にも聞いたんですけど、特に否定はなさいませんでした。」
おばさん「前の御主人なりに苦しまれたんだと思います。でも、さすがに御家族の方にまでは言い出せなかったんでしょうね。」
お婆さん、鼻をすすりながらハンカチで涙を拭う。
母親 「でも、あたし達はこれからどうしたらいいんでしょう?」
おばさん「これからは、おじいさんの分と一緒に亡くなられた女の方にもお茶やお供えをあげて下さい。もし、できれば無名の位牌でもいいですから、一緒に仏壇に祭ってあげて下さい。」
#中華レストラン
姪とおばさんが豪華な昼食を摂っている。
おばさん「あそこの息子さん、だんだん元気になったみたいよ。それどころか一緒に供養しだしてから、なんとなく家の中が明るくなったんだって。」
姪 「そう、よかったわね。」
おばさん、箸を休めてちょっと笑う。
姪 「なに?」
おばさん「これで、霊を信じる気になった?」
姪 「あら、それとこれとは話は別よ。」
おばさん「偏屈だね、アンタも。」
姪 「だって、こんなこといったらミもフタもないけど、おじいさんは確かに戦争で大陸に行ったことは証明されたけど、そこで本当に残虐行為をしたって証拠はないわ。逆に本当にそんなことが行われたんなら、ただ拝めばいいだなんて、あまりにもお手軽な解決法だわ。」
おばさん「じゃあ長男に乗り移った霊はどうやって説明するんだい?」
姪 「あれは おばさんの暗示に掛かったのよ。お茶を捨てたのだって、最初はちょっとしたイタズラだったのかもしれない。でも途中で大事になったから、無意識に自分の行為を正当化する口実をさがしてたのよ。おばさんが謎解きをした直後に発作を起こしたのが、なにより怪しいじゃない? もっとも、それは故意じゃなくて、彼自身も本当に霊に乗り移られたと思ってるでしょうけど……」
おばさん「おやおや、それじゃアンタもあたしのインチキの片棒かついだってことになるんだよ?」
姪 「ま、結果オーライってことでいいんじゃない? 家族も幸せになれたんだし、あたしもこうしておばさんにご飯おごってもらってるし……ただね。」
おばさん「なに?」
姪 「何か面白いことが起こるんじゃないかと思って、あたしあの場で録音テープ回してたのね。あの子が発作を起こしたときに最初に言った言葉だけど、知り合いに頼んで分析してもらったら、実は向こう(大陸)の言葉なんだって。それも標準語じゃなくて、あの地方の方言だそうよ。」
おばさん「なんて言ってたの?」
姪 「自分の名前と出身地、奉公してた先の名前だそうだけど……おじいさんが若い頃に憶えた現地の言葉を以前あの子に教えてた……ってのはちょっと苦しいわね。」
おばさん「ほら、ごらん。」
姪 「ま、ここはおばさんに花をもたせとくわ。もっと調べれば説明がつくかもしれないんだけど、あたしもそんなにヒマじゃないから。」
おばさん「それよりさ、これからも何かあったら今度みたいに力貸してくれない?」
姪 「伯母さん、あたし今“ヒマじゃない”って言ったよね?」
おばさん「いいじゃないの、今度みたいに御礼が入ったらまたおごるわよ。」
姪、フカヒレをレンゲでかき混ぜながら、
姪 「ふーん、フフ……いいかも。」