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庭にとてもうざいおおきなかぶが生えてたのでどうにかして抜くことにします。

作者: ひさかたフラッシュ

ふざけた☆

その場の思いつきなのですぐ終わるし、最果ての此方、至近の彼方の今後の展開思考中に書く筆休め見たいなものですので、気軽に見ていってください。

昔々、おじいさんとおばあさん、そして大勢の動物が力を合わせてようやく抜くことができたという伝説の株があったという。曰く、その株は中に大の大人三人が入っても大丈夫なだろう大きさだったとか、重さは象より重く中身が詰まっているとか。

そして、その株の霊は今でも他の株に移り、新たな挑戦者を待ち続けているのだという。

兎にも角にもその株があったというのは伝説で作り話に過ぎなかったのだと富士田千代はつい最近まで思っていた。


だが



ある朝、目が覚めて柔らかな春の陽射しの下、私は庭の窓を開けるの、少し地面から緑色の何かがひょっこりと飛び出しているのを見た。昨日までなかったそれは千代に大きな好奇心を与えた。

ヒョイっと庭に降りて近づいてみて、沢山のワクワクと少しの緊張が入り混じりながら一歩一歩進んでいくと、それが葉っぱの先だということに気づいた。

千代は取り敢えず何も考えず葉っぱを掴んで引き抜いてみた。すると、

「痛い痛い痛い!おい小僧!もっと丁寧に引き抜かんか!」

何処からともなく怒号が聞こえた。千代がキョロキョロと辺りを見渡してもいるのは電柱に止まっている烏くらいなものだった。

「まさかな?」

「そのまさかじゃ阿呆ものが。ほれ、儂の周りの土を掻き出せ。すぐに儂のことなどわかるじゃろう」

「うわあああああ!」

葉っぱが喋った!?

あまりの非現実さに掴んでいた葉っぱを離して大きく後ろに尻餅をついてしまった。

「ほれ小僧、はやくせんか!」

恐る恐る近づいて謎の葉っぱの言われるままにする。

10センチくらい掘りすすめると冷たい何かに手が当たった。目で見てみると、何やら白い。

もしかして…………………株?しかも異様におおきい。もしかして、おとぎ話に出てくるあれなのか?

千代はにわかには信じられなかった。だってあれは作り話だ。現実であるはずがない。第一、おとぎ話の株は喋らなかったはずだろう。

千代があたふたと動揺していると、

「千代、あんた何庭でやってるの?」

家の中から突然母の声が聞こえてきた。これはまずい。母はヒステリックの性があるから、こんな非現実を見せてしまったらきっと卒倒してしまうと千代は危惧した。

「何でもないよ、母さん。ちょっと日向ぼっこしていただけだから。もうすぐしたら戻るから」

「おい小僧」

「今は黙って!」

千代はことを荒げないように小声でこの株の言葉を遮る。

「そう?すぐご飯にするからね」

「はーい」

「それはそうと、千代。あなたいつから大学の春休み開けるの?」

「再来週だよ」

それだけ聞くと母さんは鼻歌を混ぜながらキッチンに潜っていった。

ふう、と一息ついて目の前のこれに目を向ける。

「ふふふ、そうか、貴様が千代だったか。見かけによらず可愛らしい名をしているではないかか。ふふふ」

失礼な株がない肩を震わせて笑いをこらえているのが見て取れる。

千代は顔をしかめて一度蹴っ飛ばす。

「痛ッ。小僧、もっと丁重に扱わんか」

株は尊大な態度で千代のことを叱責する。

「で、あんた一体何者なの?」としゃがみながら問いかける。

「いかにも聞いてくれた。儂こそこの世で最も有名かつ耽美な株。その美しさに誰もが儂に魅了されていったのは言うまでもない。高貴な儂には名前など必要もなかったが、最近人は儂のことを儂を初めて書に記した人間からトルストイと呼ばれているのじゃ」

「じゃあ、本当にあんたはうんとこしょ、どっこいしょのおおきなかぶに出てくるあの株なの?」

「いかにも」

「じゃあ、何で僕の家に突然入り込んできたのさ」

何もつい最近の話ではないぞ。儂は10年間地におったぞ」

おおきな株ことトルストイは間髪入れずに答えた。



10年と言う単語を聞いて千代はぞっとした。昔に庭先で詠んだ自作の詩を聞かれていたのではないかと気が気でなかったからだ。

「まあ、10年といってもこの家の株を拠点にしていただけで、殆どは美女とか美株とかを追い求めていたからなぁ」

千代は胸をなでおろした。

「あ、じゃが、小僧のぽえむとやらは傑作であったぞ」

「ああああああ!」

完全に余計な一言を言われてたまらず憤慨した

「千代!うるさい!」

母に叱られビクッとする千代をよそ目にトルストイはケタケタと笑っている。

「もうご飯できるからこっちおいで」

母にそう言われ、千代はしぶしぶ部屋に戻る。

「いいか、絶対に母さんにお前がいることばらすんじゃないぞ」

一言警告をした。




食卓にはもう千代の父と母が席についていて、朝食を始めていた。


『それにしても、白鵬強い!また勝利記録を更新して、千代の富士との差をまた広げました!』キャスターが興奮した声で横綱の映えある勇姿を語っている。


「千代にもこれくらい強くなってもらいたかったわね」と言うのは母の口癖だ。千代と言う名前も千代の富士から取っているらしい。母は大の大相撲ファンで、なんでも彼女の子供の頃は男と混ざって喧嘩やら取っ組み合いだとか盛んにしていたらしいのだが、今のヒステリック気質に何故なったのかは誰も知らない。

千代は力士程でも格闘家程でもないが、母の口癖のせいでトレーニングが日課となってしまった為、なかなかに引き締まった体つきをしていた。

「母さん、その話はよしてくれよ。僕だって一瞬だけ力士になってやろうかと思ったことがあるんだから」

「あら、そうなの?そのままなってしまえばよかったのに」

「嫌だったんだよ。第一、僕があんまり食が太くないのは知ってるだろ?」

千代は米を頬張りながら反論する。

「僕なんて言ってるからそんな中途半端な体格になっちゃうのよ」

そこから沈黙。


数分して3人とも食事を終える。


「私とお父さんはこのまま仕事に行くから、洗濯物と洗い物、あと留守番よろしくね。それとお昼ご飯は冷凍庫にあるパスタソースからなんか適当によろしくね」


そう言って早々に2人とも家を出て行った。

「ふう」


千代は言いつけ通りに洗濯物と洗い物を速攻で終わらせると、軍手とスコップを持って庭に赴いた。


数十分ぶりの再会だ。


庭には相変わらず緑の葉っぱをひょこひょこさせた巨大なかぶが我が物顔でいる。

「なあ、株。今からいくつか質問するから答えてほしい。まず、昔から疑問だったんだが、なんでお前はネズミなんかの力で最終的に抜けたんだ?」


トルストイが渋い顔をしたような雰囲気を出した。

「小僧、はじめにそれを出してくるかね。儂、あのバケネズミのことはおもいだしたくなかったんじゃがな」「バケネズミ?」「そうじゃ。あのネズミはただのネズミじゃなくてな、あそこにいたジジババや全員の力を合わせてもあのバケネズミには勝てんかったと思うぞ」


千代は感心する。


「じゃあ次の質問。お前の目と耳ってどこなんだ?」「どこと言われてもな。そこの葉っぱから景色は見えてるぞ。多分音もそこからだ」

なるほどとまた感心する。この不思議生物と会話していると今までの常識が覆されるようである。

「それじゃあ次。お前の目的は僕に抜いてもらうことだよな。じゃあ多分それは無理だと思う。さっきの話じゃ、そのネズミがいなきゃお前は抜けなかったんだろ。僕はただの人間だし、お前を抜こうと僕の友達に呼びかけても、1人か2人来るくらいだと思う」

するとトルストイが笑い出して言う

「小僧、儂が抜かれたのはあの一回だけよ。別にお主に抜けるなんぞ一ミリも思っておらんわ」

開いた口が塞がらない状態だ。

「だいたいな、儂はローマの兵士どもにも、スパルタの兵士にも負けなかったのだぞ。貴様ごときチンケなガキにこの儂が抜けるわけなかろう。バカか」

散々煽られて千代の沸点は頂点に登りつつあった。


「じゃあいいよ、やってやんよ!僕が絶対一人でお前のことを抜いてやる!抜けたらお前のことを好きなように切り刻んで調理してやる!」


こうして、千代とおおきなかぶの数日間に渡る闘いはまだ日も昇りきらぬ朝8時に始まったのだった。




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