神々の日常
「はぁ~」
アニマはため息をつきながら歩いていた。
仕事について報告に行った帰りであった。
神世において、神々が与えられるのは一つの界。
界とは一つの区切られた時空間である。その界を育て管理することが仕事であり、その神の個性であり、力となる。
とは言え、神々のできることは多くない。次元の違い過ぎる存在であるため、影響が大きすぎるのだ。
故に彼らが行えるのは、与えられた界に大枠を与えることぐらいである。
例えば女性しかいない界。
ねこが生物の連鎖の頂点の界などだ。
だが、たった一つの共通のルールがある。それは“自界“で生み出されたものは自由に生み出すことができるようになる、ということだ。
つまり、界が発展すればするほど、自らの娯楽が増すということだ。
ぶっちゃけたところ、神世には何もない。唯一である、界の管理も基本的には見守ることしかできない。
なんのことはない、神々は暇であったのだ。
そこから脱却するためには、自分の界を発展させるか、他の界からもらい受けるしかない。その対価は神気、すなわち、自らの界に住む人々の信仰・祈りである。
つまり、一周戻って自分の界を発展させることこそが自らの生活を潤すための鍵なのである。
男は争いばかりで発展の妨げでしかない。そう考えた一柱は、女しか生まれない界とした。
また、人間にみきりをつけた一柱は癒しだと言ってねこが主役の界とした。
皮肉にも、最も発展した界は、何もしなかった界だ。
余計なことをせずにただ根気強く見守った界が、神々にとっても短くない月日を経て最も発展したのだ。
その界の小さな惑星、“地球“、"EARTH“などと現地人が呼んでいる、が奇跡的な道標によってたどり着いた結果である。
その界の管理者であるコンコルドは寡黙であったが、女神たちの好意を一点に集めている。
「コンコルド様ぁ、 トールバニラノンファットアドリストレットショットチョコレートソースエクストラホイップコーヒージェリーアンドクリーミーバニラフラペチーノをお願いしますぅ」
一瞬表情が固まるコンコルドだったが、その手が輝くと、カランと氷の小気味いい音と共に一杯のグラスが現れ、女神からコンコルドへと光が流れていく。
「あぁ~生き返るぅ~。この一杯のためにまた頑張れるわぁ。またお願いしますね、コンコルド様ぁ」
そう言ってカツカツと歩いていく女神。
コンコルドの界は娯楽という点で他の神々を圧倒していた。その結果神気もあふれそうになっている。
圧倒的人気は甘いものやアルコール類である。
ほとんどの神が溜まった神気をそのままコンコルドのところで交換するのだ。
事実上の独占である。