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虚幻のディアノイア  作者: 神宮寺飛鳥
第五章『アーク・リヴァイヴ』
119/126

アーク・ウェポン(3)

「えーと……何が……どうなってるのかな……?」


 ディアノイアに辿り着いたマナは頭上で繰り広げられる戦闘に呆然と呟きを零した。

 学園に咲いた氷の塔。その周囲を取り巻く様に風を纏った影が飛び回っている。龍の翼、精霊の力を解放したイルシュナは異界の救世主相手に健闘を繰り広げていた。

 接触すれば相手を蝕む呪いの炎。それを纏った救世主に対し、近接攻撃は不可能。それに対しイルシュナが出した答えは、間接的近接攻撃であった。

 龍とは即ち魔力そのもの。嘗て旧時代、この世界にまだ精霊と呼ばれる存在が龍だけしか存在しなかった頃。彼らはそれぞれの土地に根付き、風土を育み、命の循環を預かる存在であった。

 そう、それらはヨトが作りし自然の管理者。龍は自然の一部であり、自然の循環そのものでもある。彼らの行なう術というのは人間の魔法とは異なる。己の中に宿る自然の息吹を相手への攻撃として変換し、叩き付けるという事だ。

 風の力を翼に受けたイルシュナは鋭利な爪を振るう。それは直接怪物を斬りつけるのではなく、指先から風の斬撃を放つ為の物だ。

 真上から真っ直ぐに振り下ろした手刀は空を切り裂き獣を分断する。対する救世主は飛行能力を持たない。故に空に聳える氷の道を走り続け対応していた。


「あれは……イルシュナ先生っぽいけど、なんか見た目が大分セクシーな事になっているような……。相手は……魔物?」


 黒い獣は尋常ならざる体捌きで攻撃をいなしていた。マナにしてみれば目で追うのもやっとの事……否、殆ど追えていない。イルシュナに関しても攻撃時に一瞬見せる挙動の緩和から推測したに過ぎない。

 ごくりと生唾を飲み込んだ。気付けばマナの全身はぐっしょりと汗に濡れていた。膝が震え、何故か笑みが浮かんでくる。


「おかしいな……何、これ……?」


 震える両手を見下ろす。そうしてやっと気付いた。少女は恐怖していたのだ。目の前で繰り広げられる光景に。

 イルシュナは強い。とてつもなく、途方も無く。元々龍とはそういう物だ。それは雷の光のように、全てを砕く地震のように、本来人間が立ち向かえる類の存在ではないのだ。

 そこに居るのは小さな嵐。イルシュナ・フィオレスという名がつけられただけの嵐である。その暴風は本来何者にも捕らえられる物ではない。龍に対し人が抱く恐怖と言うのは本能的な物であり、理性で克服できるような類ではない。

 対する救世主は異形の怪物。体中から溢れんばかりの呪いを振りまく災厄だ。あれは最早一個の魔物ではなく、一つの災害である。ならばそれも嵐と何も変わらない。

 目の前で起こっているのは、要するにそういうことだ。災害と災害、それらが激突しているのだ。少しは魔術師として努力をしてきたマナだが、あれに割ってはいるのはただの自殺行為である。


「あれがディアノイア最高戦力の一角と……異世界の英雄……」


 自分が憧れていた物。

 夢を見ていた。田舎を飛び出してこの街に来て、自分とは格の違う存在と出会った。

 それでも諦めぬと、夢を追い続けると、そんな誓いを胸に努力を続けてきた。だが――。

 今目の前で戦う者を見て、ただ見上げるだけしか出来ない。夥しい魔力の余波はここまで届いている。あれは人間じゃない。とうにそんなレベル、超越してしまっているのだから。


「怖がってる場合か、マナ・レイストーム。やれる事をやりに来たんでしょ? 自分が弱い事なんて、最初から知ってたでしょ?」


 ろくに中級魔法も使いこなせないへっぽこ魔術師。ここから魔法を放ったところで、戦闘の余波で消えてしまう。あわよくば直撃しても、ダメージにすらならないだろう。

 なんて無力で小さな存在なのか。きっとあの戦闘で飛び交う攻撃が掠りでもすれば命はないだろう。これ以上近づくのは危険だと、本能が警鐘を鳴らし続けている。


「それでも――行く! 決めた事は曲げない。一度でも曲げてしまったら……もう、ここに立っていられない気がするから!」


 走る少女が唯一持ち得る物。この場で彼女を支える物、それは勇気。

 人によっては無知無謀と嘲るその想いだけが彼女の背中を押している。誰もが逃げ出したくなるこの戦いに向かうその想いは、場合によっては……。


「……拙いわね。これ以上戦いが長引くと、被害を抑え切れそうにない」


 冷や汗を流しながら呟くローズ。戦闘の最中に飛び散るあらゆる攻撃が呪いであるあの怪物は、こんな街中で戦わせておくには過ぎた災厄だ。

 このまま行けばローズの封印も追いつかず、最終的にはディアノイア全体へ被害が拡散してしまうだろう。そうなればシャングリラそのものを放棄せざるを得なくなる。


「――ローズ」


 その時、頭上から少女の声が聞こえた。ふわりと舞い降りたのは白いアーマークロークの少女、ユリア・ライトフィールドである。


「状況は……?」


「あら? 貴女は確か……次期白の勇者候補の……?」


「ユリア・ライトフィールド……手助けが必要でしょ?」


「それはそうだけど、お嬢さんには少しばかり早いレベルの戦いになっているわ。悪い事は言わないから、早くここから避難なさい」


 ローズの言葉は的確であった。異界の救世主とまともにやりあえる戦士はそう多くない。あの伝説の勇者王、リリア・ウトピシュトナの娘であればその資質は十分だろうが、いかんせんユリアはまだ幼い。真っ当な理屈で考えれば、あんな怪物とやりあえる筈も無いだろう。

 むっとした様子でローズを睨むユリア。手にした銃を軽く振るい、頭の上の兎に語りかける。


「サイファー」


「……間違いなく異世界の救世主ね。ヨトはあんなもの作らなかったから」


「それじゃあ、あれがパパと同じ……」


 空を見上げ、笑みを浮かべる。目を細めゆっくりと歩き出す。


「待ちなさい。私の話を聞いていなかったの? 今の貴女にはまだ早すぎると言っているの」


「うるさいな……。年寄りは黙ってろよ。私を誰だと思ってるんだ」


 直後、力を解き放つ。小さな身体からあふれ出す魔力は周囲を照らし、衝撃が大気を震わせる。

 黄金の輝きは少女の髪を銀色に染め上げる。背中には白い翼が構築され、銀色の銃には魔力の刃が宿る。


「この力……成程、ルーファウスが特別扱いするわけだわ」


 矢のように空へ舞い上がるユリア。イルシュナと怪物の戦いに介入し、二人の間で銃を構える。


「貴女は……ユリア・ライトフィールド……?」


「代わってやるよ。救世主を倒すのは、勇者の仕事だからな」


 指先でクルクルと銃を回し、異形へ水平に構える。銃身に浮かんだ紋章が輝きを増し、銃口に光が集まっていく。


「メリーベルが作ってくれた“魔銃”の力……お前で試してやる」


 放たれたのは銃弾ではなく雷属性の魔法であった。それは魔術教会最高の技術を持つ錬金術師が作った、レーヴァテインの名を持つ魔銃。

 光は一瞬で獣の身体を貫いた。危険を察知して校舎の屋根に飛び移るが、その挙動を魔銃の一撃が追尾する。

 ユリアの意志で弾道を操作出来るその銃は超スピードで逃げ回る獣の身体を的確に貫く。続けユリアは加速、銃身に魔力の刃を構築し獣を切りつけた。

 血を流し吼える怪物。当然ユリアの剣にも炎が移るが、そこは魔力で作った擬似刀剣、解除すれば済む事である。

 大きく跳躍し空を舞う獣。ユリアの頭上を取ると口を大きく開き、そこから一気に熱線を放出する。射線上にはユリアだけではなくディアノイアがあり、その対処にイルシュナは一瞬固まった。


「拙い……!」


 そうならないように細心の注意を払いイルシュナは戦っていたのだ。だがユリアは違う。ただ戦っているだけ。周囲の事などお構い無しだ。

 太陽の輝きよりも眩く、奈落の底より深い闇が吐き出された。全てを飲み干し砕く呪いの炎、これに対しユリアは掌に小さな光を集め、軽く投擲して見せた。

 一縷の光は闇を切り裂き消失させる。そのまま獣の肩を射抜き、空で爆ぜた。瞬間、空間が歪み――黒い空により真っ黒な穴を空け、直後暴風と共に消失した。


「――虚幻魔法!?」


 目を見開き叫ぶローズ。それは人間には決して扱う事の出来ない神の力。この世界に存在する物をその存在ごと消失させる必殺の術である。


「……あいつ、消えない。“虚幻魔法ディストーション”で消えないって事は、やっぱりこの世界の人間じゃないのか」


「ユリア、気をつけて。次が来る」


 肩を抉られた獣は口を開き、そこから小さな炎をばら撒く。その黒い陽炎は空中で形を変え、無数の魔物を構築した。

 降り注ぐ夥しい量の敵。ユリアはそれに対し片腕を振り上げ、笑みと共に一気に振り下ろす。

 空に次々に白い光が爆ぜ、出現したばかりの魔物を飲み込んでいく。結果、あれだけ空を埋め尽くした敵は全滅。その光を突きぬけユリアは獣に突進する。


「弱いんだよ――お前ぇええッ!!」


 構築した光の刃を突き刺しながら空へ舞い上がる。そのまま術を構築し、引き金を引いた。


神討つ一枝の魔剣レーヴァテイン……その力を我は担うコールライトニング……!」


 一発、二発。突き刺したままの身体に大量の魔力を流し込む。防御術を無視した貫通攻撃。その黄金の光が空に舞い上がる。


「“障害をウルス……討ち滅ぼす者ラグナ”――ッ!」


 夜空を照らし、雲を断ち割る閃光。獣の姿は光に消え、ユリアは刃に宿った炎を振り払い額に手を当てる。


「これが救世主……全然大した事ないじゃないか。ふふふ……あっははははーっ!」


 降り注ぐ黄金の光を浴びながら笑うユリア。学園を飲み込もうとしていた黒い炎は消え去り、ローズは深々と息を吐いた。


「あれが新しい勇者……何て怪物」


「素晴らしい力です。しかし……危険すぎます。まだ彼女は未熟すぎる」


 ふわりと降り立つイルシュナ。ローズはその言葉に目を瞑り肩を竦めるのであった。




アーク・ウェポン(3)




「ユ~リ~ア~……? 何であんなことしたの!」


 数分後、駆けつけたゲルトの前でユリアはほっぺたを膨らませていた。

 救世主襲撃と言う緊急事態を何とか退けたディアノイア。現在は状況確認と周囲への警戒へ状況はシフトしており、街中での戦闘は一段落したのだが……。


「何でって……私、勇者だし……」


「どうして虚幻魔法を使ったの? あれは使っちゃいけない約束だったでしょ?」


「だって……“虚幻魔法ディストーション”で消さなかったらディアノイア燃えてたし……」


「そう言う問題じゃないの! 約束を破って大暴れした事を私は怒ってるのよ!」


 胸の前で左右の指を組んでそっぽ向くユリア。ゲルトはその前で額に手を当て溜息を零している。


「まぁ、お陰で私達も助かったんだし……とりあえずは良しとしましょう、ゲルト」


「ローズ、口出しは無用です。これは我が家の教育の問題なんです! ユリアが間違った大人にならないよう、躾をしっかりしないといけないんです!」


 握り拳で食い気味に語るゲルト。ローズは眉を潜め、首を横に振る。


「気持ちは分るけど、頭ごなしに怒ってもこのくらいの子には逆効果よ。それだけの力があるんだもの、使うなって方が無理よ」


 優しく微笑み、ローズはユリアの傍に向かう。手を伸ばすとユリアはびくっと仰け反ったが、その手は少女の頭を優しく撫でるだけであった。


「よくやってくれたわね、小さな勇者さん」


「……ん。まあ、勇者だから……」


 ゲルトは口をぱくぱくしながら頭を抱えている。本当は怒った後に自分がなでなでしたりだっこしたりしたかったのだが、タイミングを逃してしまった。


「しかし……ゲルト先生の言う事も尤もです。特に虚幻魔法の存在と扱いは、慎重過ぎるくらいで丁度いいでしょう」


 人間の状態に戻ったイルシュナがマントを羽織ながら歩み寄る。その無感情な視線の先、ユリアはそっぽを向いている。


「ゲルトは虚幻魔法の恐ろしさを十二分に理解しています……だからこそ、貴女を叱ったのです。それを忘れないで下さい、ユリア」


「だーかーら……使わなかったら街が燃えてたでしょ? 約束とディアノイア、どっちが大事なんだよ……」


「私はユリアがいい子に育たないんだったら、いっそディアノイアなんか無くなっても構いません! 一向に!」


「そこはもう少し躊躇してくださいゲルト。私の居場所がなくなってしまいます」


 三人の会話を眺め苦笑するローズ。そこへザイオンを背負ったアクセルが合流する。


「ローズ先生! ザイオン先生を診てやってくれ! 意識がないんだ!」


「ただの魔力枯渇でしょう? ザイオン先生ほどの魔術師ならほっとけば治るわ。医務室に転がしておきなさいな」


「転がしてって……いやまあそうだな。よし、転がしてくるぜ!」


 ダッシュで立ち去るアクセル。その背中を見送りローズは手を叩く。


「はい、みんなも動いて。ゲルトはルーファウスに報告。イルシュナは街の警戒をお願いね」


「私は?」


「そうねぇ……じゃあ、怪我人の治療をお願いしようかしら。虚幻魔法ならあの呪いを受けた子も治療出来るでしょう?」


 こくりと頷くユリア。こうしてそれぞれが役割を果たす為に迅速に行動を開始した。四人が散った後、そこへとぼとぼと歩いてくるのはマナだ。


「あれがユリアちゃんの力……勇者の……救世主の力……」


 ユリア・ライトフィールドは神と救世主のサラブレッドである。

 母親はこの世界の創造神と同等の力を持つ勇者王、リリア・ウトピシュトナ。そして父親はこの世界を救った異世界の救世主、本城夏流。

 二人は共に常識では考えられない力を有する存在であり、その力を以ってして世界の救済を果たした英雄だ。ユリアはその才能を余す所なく継承している。

 ヨト神に匹敵するこの世界の魔力。勇者王の膂力と回復魔法。救世主の錬金術と異世界の魔力。その全てのスペックが規格外、特別過ぎる存在なのだ。

 ぽつりと肩を落としたまま、自らの掌を見つめるマナ。自分には何も出来なかった。回復魔法をかける事すら出来ない。異世界の呪いに対し、彼女に出来る事などあるはずがない。


「遠いなぁ……」


 夜空を見上げ呟く。そう、遠い。余りにも……遠すぎる。

 少女はゆっくりと歩き出した。それでもまだ出来る事を探して彷徨う。自分がここにいてもいい理由は、自分で見つけるしかないのだから。




「ご報告申し上げます。シャングリラを襲った救世主と思しき侵入者ですが、無事に撃退に成功。多数の負傷者が出たものの、幸い死者は皆無との事……」


 数刻後、シャングリラから遠く離れた地。聖クィリアダリア王国王都、オルヴェンブルム。その王城にある玉座の前に跪く一人の騎士の姿があった。


「そうか。流石はディアノイアと言った所だな。それで、マルドゥーク……彼奴等の目的は?」


「は。ルーファウスによれば、ラ・フィリアに保管されているヨトの預言書ではないかと……」


「ヨトの預言書か。その複写はこのオルヴェンブルムにも保管されていたな。旧大聖堂跡地にある国立図書館だったか」


「左様で。地下は封印物の保管庫になっています。旧大聖堂の封印堂を再利用した物で、マリシアに汚染された複写本を幾つか封印しています」


 顎に手をやり思案する王。玉座で足と腕を組み、溜息を一つ。


「ラダの使徒が救世主を召喚したのであれば、このオルヴェンブルムでも同じ騒ぎが起こるかもしれんな。聖騎士団には万全の注意をと伝達しておけ。ここが正念場だぞ」


「無論、承知しております」


「まぁ、いざとなれば俺が出る。有事の際には遠慮せず俺を呼べ、マルドゥーク」


「いえ……それはいけません。人前に出る事をもう少し躊躇していただかなければ困ります、盗賊王」


 玉座に腰掛けた男はまだ歳若い青年で、金色の髪に金色の鎧を纏い、その上にクィリアダリアのマントを羽織っている。頭の上に乗っているべき王冠は、現在彼の人差し指の先でくるくると回転していた。


「そうは言うが、オルヴェンブルムで最強なのはこの俺だ。強大な敵が問題を起こす前に俺が駆逐する、それが一番効率的だろう」


「何度も何度も申し上げておりますが、御身は王であらせられる。何かあれば国民は嘆き哀しみ、アリア様に私が殴られます」


「まぁそう言うなよマルドゥーク。ぶっちゃけ俺は暇なのだ。王といってもこれといってやることもないし、たまに外交関係で外に引っ張り出されるくらいで、実質王としての仕事は全部アリアがやっているんだ。俺はこのデカくて金ぴかの椅子の上に毎日ふんぞり返っているだけで、外に出る事もできやしない」


 深々と溜息を吐く男。彼の名はブレイド・ウトピシュトナ。前王アリア・ウトピシュトナと結婚し、その王座を継承した男である。

 これまでクィリアダリアの王は全員女性、つまり女王であった。しかしそこには大聖堂の傀儡政権であるという裏事情があり、実質女王はただのお飾りにすぎなかった。

 そこでアリア・ウトピシュトナは新たに強い国を作る為にまず王は最強の男が叙任すべきであると唱え、この大陸で最も強い彼が王座に収められたのである。


「そのくせアリアの奴は好き勝手でかけているのだから堪った物ではない。俺もたまにはシャングリラとか遊びに行きたいのだ」


「今は国の一大事で、彼方此方で危険が犇いているのです。もう暫く、事が落ち着くまではご自愛下さい」


「……そういえば、リリアの娘がシャングリラに来ていたな。あれの活躍はどうなったのだ? にーちゃんの娘だからな、きっとさぞおてんばだろう」


「王よ、成人しているのだからにーちゃんはやめてください」


「俺にとってナツルは未だににーちゃんなのだ、別に構わんだろう。それよりユリアはどうだ? 何か報告は入っていないか?」


「は。そういえば、救世主の一人を撃退したとか」


「へぇ、それは凄い。マルドゥーク、もう少し詳しい話を聞かせてくれないか? 退屈しのぎに丁度良さそうだ」


 手を叩きメイドを呼ぶブレイド。酒とつまみを持って来させると王座から飛び降りマルドゥークの目の前に着地する。


「とりあえず部屋に行くぞ。ここでは人目につきすぎる」


「私とメイドくらいしかいませんが、王」


「メイドがいる前では王っぽくしていなければなかろう。俺はこの金ぴかの鎧もあまり好きではないのだ。正直さっさと脱ぎたい」


 腕を回しながら溜息を吐くブレイド。それからメイド達に告げる。


「俺は私用で少し空ける。お前達も今日はもう休んでいいぞ。アリアが帰ってきたら、適当に言い訳しておいてくれ」


「「「 かしこまりました、ブレイド様 」」」


 こうしてブレイドは口笛を吹きながら退室する。それに続き、マルドゥークもとぼとぼと部屋を出るのであった。

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