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虚幻のディアノイア  作者: 神宮寺飛鳥
第五章『アーク・リヴァイヴ』
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マナの手紙(1)

続きを書いてという声が余りにも多いので、ファンサービス(?)的な感じでちょっとだけオマケです。本当に短期連載予定なので、大したものは期待しないでね。

それでもOKな方はどうぞお進み下さい。


 拝啓、家族の皆様へ。

 今、わたしはシャングリラへ向かう列車の中でのこの手紙を書いています。

 北方大陸と南方大陸を結ぶ大陸横断線が運行を開始してから三年。まだまだ出来たばかりの列車はとても綺麗で、椅子もふかふかです。

 でも一つだけこの素敵な列車の旅で悲しい事があります。それは、どの席も全てが相席だという事です。しかも個室です。相席なのに個室です。閉鎖的です。

 家族の皆様はご存知の通り、わたしはとても激しい人見知りです。こんな狭い空間に知らない人と二人にされたらその時点で既に死んでしまいそうです。

 ああ、神様……。願わくば早くシャングリラにこの列車を辿り着かせてください……。そんな祈りも神様には届きません。それもそのはず、神様は十三年前に滅んでしまったそうです。

 今でも歴史に残る人類の歴史上最大の決戦、後に第三次勇者聖戦と呼ばれた戦いから早くも十三年……。当時はまだ小さかったわたしは、その時の事を殆ど覚えていません。

 でもこうして今でも世界の各地にはあの戦いの名残が残っています。北方大陸から海を渡り、南方大陸へと移動して行くと、草原には沢山穴が開いていたり、今はもう誰も住まなくなった廃墟などが並んでいます。

 列車から見る世界は窓から見渡すサイズに凝縮されてしまっているけど、それでもわたしにとっては見るもの全てが新鮮です。ザックブルムから出た事のないわたしは、やはり世間知らずなのでしょう。

 英雄学園ディアノイア……そこは、神と人との決戦の地でもあったと聞いています。同時にあの伝説の勇者、リリア・ライトフィールドを育てた場所という事もあり、今では超、超、超進学が難しい英雄学園です。

 世界に三つある英雄学園のうち、一番歴史があって一番有名な英雄を輩出している英雄学園ディアノイア……試験に合格し、今正にそこに入学できるという事実がわたしは今でも夢のように感じられます。


「夢じゃない……よね?」


 ほっぺたをつねってみると痛いです。でも夢の中でも痛みを感じる時ってありますよね? えーと、じゃあもしかしてこの手紙も夢なのでしょうか?

 合い向かいの席には一人、女の子が座っています。全身をすっぽりと綺麗な銀色のローブで覆い、さっきからずうっと、ずううううっと、お菓子ばかり食べています。

 部屋の中は物凄く甘い匂いが充満していてクラクラします。女の子は口の周りをジャムとかシロップとかでベッタベタに汚しながら、指先を舐めたりしつつ御菓子を頬張っています。

 定期的に車内を巡回するメイドロボがそのお菓子の食べかす、ゴミを片付けて行くのですが。一体どれだけの量を食べているのかわかりません。彼女はザックブルムからずうっと乗り合わせていますが、一時も休む事なく食べ続けています。

 こんな人が居るものなのでしょうか。もしかしたら本当に夢の中で、実は合格通知も夢でした〜みたいな感じだったら本気で落ち込みます。暫くはご飯も喉を通らない事でしょう。


「……あのー?」


 夢かどうかを確かめるために夢のような人に声をかけてみます。しかし、彼女は全く答えてくれません。


「はうう……」


 駄目です。完全無視です。へ、へこむ……。

 落ち込みながら部屋を出ます。廊下は狭いですが、他の車輌には食堂車とかもあって、大陸横断列車、“パーシヴァル”の旅は快適です。


「……はあ、空気が美味しい」


 あの部屋の中はお菓子の匂いしかしていません。なんだかわたし自身甘い匂いがしている気がしてなりません。

 確か、パーシヴァルはシャングリラ直行のはず……という事は、このまま彼女とはシャングリラまで一緒という事になります。


「はあ……。気まずいよ〜。気まずいよう〜……」


 こんな所でくじけそうになっているわたしは、果たして本当にディアノイアで上手くやっていけるのでしょうか? 今は兎に角それが不安でなりません……。



 ――“マナ・レイストーム”。



⇒マナの手紙(1)



 マナ・レイストームは大陸横断列車パーシヴァルの食堂車を一人うろうろしていた。食堂車には彼女と同じくディアノイアに向かう生徒達の姿がちらほらと見受けられる。

 英雄学園ディアノイア……。要塞都市シャングリラの内側に存在する、英雄を育成する事を目的とした教育機関である。

 各国が連携して推し進める英雄学園計画の主軸を担い、第一の英雄学園として今も格式高く歴史と教養を兼ね備えた兵士養成学校なのである。

 英雄学園計画とは、ディアノイアをモデルケースとし、同じく英雄を育成する事を目的とする兵士養成学校を配備するというもので、その計画の中でもディアノイアはやはり一番人気である。

 マナはそのディアノイアに応募し、恐るべき倍率の中から奇跡的に生徒として選ばれたのである。しかし、少女は今不安に押しつぶされそうであった。

 新入生が学園に向かう春の季節……。シャングリラ直行のパーシヴァルの中にはマナと同じ立場の少年少女の姿がある。それに混じり、既にディアノイアの制服を着用している生徒の姿もあった。

 学園がより厳しく国とのつながりを深め、国家が運営する特殊な教育機関になり、同時に幾つかの学園が同時に存在する事になってディアノイアには嘗ては存在しなかった“学生服”が新たに考案されていた。

 これから学園でそれを受け取る新入生は当然私服である。マナは自分の格好が如何にも田舎の雪山の奥から来ました〜という雰囲気なのではないかとそれが気になって気が気ではなかった。

 空いていたテーブルに付き、周囲のお仲間の姿を眺める。流石に南方大陸のクィリアダリア領土下にあるシャングリラに向かうとなると、生徒達も皆お洒落に見えてくる。

 ディアノイアが学生服はそれだけでもう容赦なく物凄くかっこいい……そんな気がしていたマナにとってディアノイアの制服は最早流行の神である。様々なバリエーションが存在している事も、有名なデザイナーがデザインしている事も、ディアノイア関連の雑誌で彼女は予習済みであった。


「いいなあ、制服……」


 一人そんな事を呟き、食堂車の中で読む事が出来る雑誌を一つ手に取った。それは英雄学園計画を特集した記事が載っている所謂女性週刊誌であった。


「あ……。リリアだ」


 開いたページでは丁度“失踪した伝説の勇者王”、リリア・ライトフィールドの記事が載っていた。そこではリリア死亡説が大きく取り上げられており、マナは不機嫌になって直ぐに雑誌を閉じてしまった。

 ちなみにマナは圧倒的にリリア生存支持派である。それもそのはず、美しく気高く、そして勇気を武器に神に戦いを挑んだリリアにマナは昔から強く憧れていたのだ。

 リリア関連の情報は何でも知りたがったし、リリアが見たもの触れたものに触れたくてディアノイアにも憧れた。勇者部隊ブレイブクラングッズと聞けば買いあさり、使いもしない品々は実家に置き去りである。


「本当は全部持ってきたかったけど……」


 目を瞑り、リリアの姿を思い浮かべる。神をも倒す世界最強の勇者。そして同時にクィリアダリアの女王でもある、世界最高に美しい女性……。

 マナの頭の中できらきらとリリア像が輝き出す。若干十五歳にして既に勇者の器、女王に就任し一度は行方をくらませたが、世界が滅びかけた“空白の日”には颯爽と駆けつけて世界を救った英雄……。


「リリア……」


「おい!」


「わたしもディアノイアで、リリアの様なかっこいい英雄に……」


「おい、貴様!!」


「何ですかさっきから! うるさいなあもうっ!!」


 肩を激しく揺さぶられ振り返りながら叫ぶマナ。その背後には剣を構えた男が立っていた。

 マナは一瞬目を丸くし、それから周囲を見渡す。そこでは新入生になる予定だった生徒たちが全員謎の集団に剣を突きつけられて震えていた。

 そのうちの一つに自分も含まれているのだという事に考え至るまでにしばしの時間を必要とする。それからマナは慌てて両手を挙げた。


「あわわ……!? 何、何ですか!?」


「パーシヴァルは我々“ラダの使徒”が占拠した! ほら、お前もさっさとあっちに行け!」


「は、はいーっ!」


 切っ先を揺らす男に脅されマナは素早く逃げて行く。新入生たちを纏めて食堂車の隅に取り囲み、侵入者たちは剣をぎらつかせる。

 ラダの使徒と名乗る人物たちは全員黒い装束に身を纏い、紅い仮面で顔を覆っていた。新入生たちは剣を突きつけられ、まだ子供である事もあり既に泣き出してしまっている子もいた。

 戦闘能力のある在校生も混じっていたが、新入生を人質に取られては身動きが取れない。武器を構えた生徒達は中心部に背を預けて固まり固唾を呑んでいた。


「お前たちも武器を下ろせ! 早くしないと新入生どもを皆殺しにするぞ!」


「……貴様らの目的は何だ? 一体何を目論んでいる!」


 制服に身を包んだ生徒の内の一人、腰にいくつもの剣の鞘をぶら下げた剣士が声を上げる。美しい少女の剣士は長い前髪を揺らしながら鋭い眼差しで使徒を睨む。

 その視線は既に実戦経験を匂わせる、冷静で高圧的な態度であった。もしかしたら貴族の出身なのかも知れない……何となくマナはそんな事を考えた。


「知れた事……。ディアノイアの運営停止を呼びかけるための人質になってもらうのだ」


「ディアノイアは統率された軍組織だ。貴様らの低俗な要求に応えるとでも思っているのか? 組織を危険に晒すくらいならば、我々は死さえ厭わない」


 生徒達は全員武器を下ろし、少女の言葉に賛同するように頷く。しかし訓練された生徒達と異なり、新入生たちは皆脅えきっている。


「お前はそれでよくてもあっちの新入生どもはどうだ? 学園はなんの罪も無い新入生を見殺しにするのか? あん?」


「……卑怯者め」


「それはそれで世間に対するいい見世物になるだろうがな……! まあどっちにしろ、このパーシヴァルはこのままシャングリラに突っ込んで自爆させる! お前たちは仲良く全員あの世行きだ!!」


 男の叫びに新入生たちの悲鳴が上がる。そんな中一人だけ慌てる様子も無く使徒たちを見詰めるマナの姿があった。

 何を思ったかマナは立ち上がる。直ぐに見張りの使徒がマナに剣を突きつけるが、マナは食い下がらない。


「悪事は絶対に成功しません! 貴方達みたいな卑怯者が――! 悪が栄えた覚え無しですっ!!」


「何だ、あのガキ……? おい、取り押さえろ!」


 使徒二人に左右から捕まれ、強引に座らされるマナ。しかしそれに逆らうように暴れながら声を上げ続ける。


「悪はっ!! 勇者がやっつけてくれるって決まっているんですっ!! 絶対に、ぜえ〜ったいに、勇者が……! “リリア”がっ! 助けてくれるんです〜っ!!」


「……何馬鹿げた事叫んでやがる、あの小娘……。第一その勇者はとっくにくたばってるじゃねえか。もういい……おい、他の車両の占領に行った連中はどうした?」


「……いえ、それが……定時連絡が途切れて――」


 次の瞬間であった。使徒が封鎖する扉が光と共に爆発し、使徒が吹き飛ばされていく。

 激しい爆風と閃光に誰もが目を瞑り身を低くした。土煙の中、小さな足音が響く。煙を抜けて姿を現したのは小さな小さなシルエットだった。


「なん……だ、このガキ!?」


 その少女は白銀に輝くローブで全身を覆っていた。手にはチョコレート。それを口に放り込み、指先を舐めながら顔を上げる。


「――おい、愚民。チョコを寄越せ」


「……はあ?」


「チョコだ。聞こえなかったのか、愚民? 甘くて黒くて、べたべたするやつだよ。そんな事もわかんないの?」


「何いってんのかわかんねえんだよ、クソガキッ!!」


 使徒の一人が剣を振り上げて襲い掛かる。誰もが目を瞑るような瞬間、しかし振り下ろされた剣は少女の小さな身を切り裂いては居なかった。

 少女が伸ばした小さな手。それが剣の刃を挟み、二本の指で攻撃を阻止していたのである。大の大人が振り下ろした一撃だというのに刃先は微動タだにしない。


「誰に向かって剣を振り下ろしているんだ、この愚民――!」


 少女は剣を指先で圧し折り、身体を半回転させて蹴りを穿つ。男の腹に突き刺さったその一撃。直後男は魔力の炸裂と同時に弾き飛ばされ、壁をぶち抜いて列車の外に放り出されていく。

 男の悲鳴が響き渡り、それが直ぐに聞こえなくなる。ただならぬ空気に使徒たちが一斉に魔法を詠唱し、無数の火炎が少女目掛けて放たれる。

 焔の渦に包まれる少女。しかしそれは一瞬で吹き消されてしまう。少女はマントをぐるりと捻り、魔法を全て吹き消して素顔を晒した。

 長い栗毛色の美しい髪。瞳は左右、緑と黄色で別たれている。小さな体躯を包み込む純白のアーマードレス――。目が眩むような白い太股に括られたホルスターから少女が抜いたのは――銀色の銃。


「同じ台詞を二度も言わせるな。“誰に向かって剣を振り下ろしているんだ”?」


「ば、化物か……!?」


 少女は銀色の銃を構える。容赦なく引き金を引くと同時にマズルフラッシュが起こり、少女の顔を何度も照らし出して行く。

 魔法を詠唱しようとする使徒たちを次々に射抜く銀の閃光――。ばたばたと倒れて行く。そんな中、剣を構えて雄叫びを上げながら突撃する使徒の姿があった。


「銃じゃ……!?」


 マナが悲鳴染みた声を上げる。しかし少女は銃を振るい、そこに指先を這わせて唇を動かす。


神討つ一枝の魔剣レーヴァテインその力を我は担うコールライトニング――」


 それは銃に秘められた力を解放する呪文。力の言葉を受け、銃身は白く輝き、光の剣を纏う。

 銀色の銃の刀身に浮かび上がる、白銀の刃――。振り下ろされた男の剣をあっさりと両断し、踊るように身体を捻って少女は男を切り伏せる。


「“伏せ”だ、愚民。私が誰だか判らないのか?」


 倒れた男の頭をハイヒールで踏みつけ、少女はオッドアイに光を吸い込んで顔を上げる。


「私は“勇者”――。ユリア・ライトフィールドだぞ。知らなかったのならば覚えておけ、愚民。“私がルール”だ」


 食堂車の壁に空いた穴から吹き込む暴風に晒されユリアの髪は美しく靡く。


「…………ほんとに来た」


 マナはそうして唖然としながらその様子を眺めていた。来る、きっと来る、絶対来る――。その祈りは天に届いた。そして彼女をめぐり合わせたのだ。勇者に――。

 それが、マナ・レイストームとユリア・ライトフィールド、二人の出会いであった――。


〜帰って来た! ディアノイア劇場リターンズ〜


*帰ってきちゃいました*


マナ「はーいこんにちは! 虚幻のディアノイア続編、『マナの手紙』の主人公、マナ・レイストームです!」


ユリア「……主人公?」


マナ「はい、主人公です」


ユリア「私を誰だと思っているんだ……?」


マナ「それはそれ、これはこれです」


ユリア「……あっそ。いいもん、別に興味ないし」


マナ「またまたそうやってツンデるんだから〜」


ユリア「……ツンデってないもん!!」


マナ「ところでここって何をするところなんでしょうか? 冷静に考えると本編はとっくに終わってるので別にやる事もないような」


ユリア「宣伝とか、説明とか」


マナ「あ、そうですね! この続編『マナの手紙』は、基本的にはぶんなげ小説ですっ!」


ユリア「…………なにそれ」


マナ「え、だから、続編としては微妙です。もう本当〜にすごくてきとーなところで終わらせちゃうカンジだから、やったー続編きた〜これで二百部超える! とか思っていた人は残念でした〜!」


ユリア「これは本編エピローグより十三年後のストーリーだよ」


マナ「この小説は、わたしことマナ・レイストームがユリアちゃんが可愛くてハアハアしたり、あとはユリアちゃんが可愛くてハアハアしたりする小説です!」


ユリア「そ、そうだったの……? 早くも嫌になってきたんだけど……」


マナ「そうだったん、ですっ!! ユリアちゃーん! 可愛いよう〜!」


ユリア「ひいいいいいっ!? ママー!! ママーッ!!!!」


マナ「次回へ続くっ!」




マナ「なお、完結してると一々完結済みのところにでちゃってうざったいので一時的に連載中に戻しました。あしからず〜」


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