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虚幻のディアノイア  作者: 神宮寺飛鳥
第四章『全てを救う者』
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虚幻の日(2)


プロミネンスの衝撃を受けて屋根が落ちてきたところまで俺は意識を保っていた。その後一瞬意識が途切れて――気づけば瓦礫の下に俺は埋もれていた。

自力でそれを跳ね除けて起き上がる。そこで俺は何かとても神々しい物を見た気がした。

リリアはゲルトを抱きかかえたまま光の翼を広げていた。ゲルトを瓦礫から庇ったその身体は傷だらけだった。額から血の雫を零し、それはゲルトの頬に伝って行く。

まるでそれがリリアの涙であるような気がして俺はゆっくりと彼女に歩み寄った。リリアは俺に微笑みかけ、それからゲルトの亡骸を渡した。


「……リリア」


「…………ゲルトちゃんをお願い、夏流」


その口調は寂しげで悲しげで、でも確かにリリアのものだった。けれどもある意味冬香であるとも言える。俺には今の彼女が一体どちらなのか判断が出来ない。

しかしそこにいるのはリリアでも冬香でも大差はないのだろう。ゲルトの亡骸にそっと手を触れ、床に転がっていた神剣を拾い上げて背を向ける。


「リリアなのか? それとも……冬香、お前なのか?」


「どっちでもないし、どっちでもある……。でも、今は――。私に出来る事をやらなくちゃ」


そう一言残し、リリアは翼を広げて羽ばたいて行く。天使で埋め尽くされた空を、神剣の輝きを引っ提げて真っ直ぐに。

まるでそれは光の矢だった。近づく全てを斬り伏せてリリアは大空を飛翔する。崩れた屋根から覗く壊れた空を突きぬけ、真っ直ぐに。

ゲルトを抱きかかえたまま俺は立ち尽くしていた。今の彼女がどちらなのか……それは些細な問題なのかも知れない。少なくとも今彼女は『リリア』の願いも『冬香』の願いも抱えたまま、空へ羽ばたいて行く。


「……そうだよな。ゲルトと、約束したもんな。リリアを大事にするって……。俺が信じてやらなきゃ、一体誰があいつを信じるって言うんだ……。なあ、ゲルト――」


舞い上がる青空の彼方、リリアは剣を掲げて飛翔する。空の向こうから雲を切り裂いてプロミネンスの光が迫る。それを目の前にリリアは剣を高々と天に掲げ、魔力の全てをそこに収束させる。


「フェイム・リア・フォース……! 斬り裂けぇええええええっ!!」


何処までも長く伸びて行く巨大な光の剣。それをプロミネンスの光に叩き付ける。正面から激突した二つの光は激しく大気を振動させる。

リリアは叫び声を上げながら全身を焼かれつつ真紅の閃光を斬り伏せて行く。真っ二つに両断された光はイザラキを避けるように左右に分断され、海を切り裂いて大量の水を蒸発させていく。


「……行こうか。ほうっておくわけには、行かないから」


永遠の眠りについたゲルトに微笑みかける。ゲルトを抱えたまま俺は大空へと跳び立った。

屋根から屋根へと飛び移り、作り物の空を蹴って本当の空へと舞い上がる。正面からプロミネンスと衝突し、墜落していくリリアへと腕を伸ばして。


「リリアァァァアアアアアア――――ッ!!」


リリアは空中でゆっくりと顔を挙げ、俺へと手を伸ばした。リリアへと思い切り手を伸ばし、その手を掴んで引き寄せる。

落ちて行く。空から海へと。炸裂した海から放たれる水飛沫の中、片腕で強くリリアを抱き寄せた。


「お前がどっちでも構わない。俺はもう……お前を離さない――」


彼女は何も答えなかった。何も答えず、目を瞑って俺の胸に顔を押し当てる。逆様に落ちて行く天空の中、俺は二人を抱きしめたまま深く息を吸う。

そう、迷わない。立ち止まらない。諦めない。何かを守る為の力が欲しい。自分を、彼女を――世界を。海へと落下する直前、俺の体から放たれた金色の光が重力の法則を無視して行く。

激しい衝撃が海を揺らす。俺は当たり前のように空中に静止していた。やり方ならば判っている。何度も見てきたんだ。出来ないはずは無い。

金色の翼を羽ばたかせ、俺は空へと舞い戻る。リリアとゲルトをつれてイザラキの街へと舞い戻り、人気の無い通りに着地する事に成功した。

翼は直ぐに消えてしまった。思いのほか扱いは難しいらしい。肩で呼吸をしながらも自分が守る事の出来た存在に微笑が零れる。


「一緒に戦おう、リリア……」


「……いいの、かな」


「それはお前が決める事じゃない。何より俺がそうしたいんだ。そうしなきゃ気が済まない……。俺はお前を赦すよ。お前を肯定する。ゲルトがそうしたように……俺はお前を肯定する」


リリアの手を引いて狭い路地を抜け出して。俺はその小さな手を絶対に離さないと誓った。

ゲルトと約束したんだ。だからもう、ウジウジなんてしてられない。約束したんだ。彼女が命を賭けて守ってくれた者……無駄になんか出来ない。

何よりこのままじゃ駄目なんだって心が叫んでるから。俺はこの世界で学んだ全てを無駄にしたくない。だから――。

顔を上げる。大通りには大量の天使の死体とその前に並んだ皆の姿があった。何故だか知らないがブレイドとレプレキアまで揃っている。

戸惑うリリアを強く抱き寄せる。強引に彼女を連れて仲間の所へ歩いて行く。皆が一緒にいる。なあ、ゲルト……? だから俺たちは、一人なんかじゃないよな。

忘れたりなんかしないんだ。どんな痛みも悲しみも、全て皆で分かち合っていける。そうして俺たちは前に進めるんだ。


「……まだ、終わってない。だから、終わりにしよう。俺たちの手で……未来を刻むんだ」


声を投げかける。皆が俺たちを見ている。リリアはぼろぼろ涙を零しながら震えていた。その頭をくしゃくしゃに撫でて俺はリリアを抱き寄せる。


「――おかえり、リリア」


皆一緒に、終わらせるんだ。

俺たちが紡いできた物語を――。



⇒虚幻の日(2)



「一先ずは凌いだか……」


街中の各所ではまだ戦闘が継続されているエリアもあるが、大体の天使は迎撃が終了したと言えるだろう。

流石にこのメンバーで戦えば怖い物なしといった所か。全員傷だらけではあるが、無事に危機を乗り切る事が出来た。


「それにしても……どういう事なんだ? なんでこんなに――仲間が居る?」


振り返る。町のあちこちには剣士やら魔法使いやら、兎に角沢山の増援が天使との戦いに手を貸してくれていた。都合よく何故か彼らは危機に現れこうして俺たちを救ってくれた。

レプレキアとブレイドもそうだが、一体何がどうなってこうなったのか……。困惑している俺たちの所に一人の剣士と魔法使いが駆け寄ってきた。


「よかった……! 無事だったんですね!」


魔法使いの女の子がそんな事を言う。しかし、この二人どっかで見た事があるような……。


「ここにいるのは皆、ディアノイアの生徒たちよ」


声は背後から聞こえてきた。そこには何人かの生徒と一緒に歩いてくるアリアの姿があった。その服装と顔立ちが余りにもリリアそっくりで思わず呆然としてしまう。

そうか、二年の月日が流れているんだから、アリアはもう丁度前のリリアくらいの年頃になるのか……。なんというか、流石は姉妹……。

問題はそんなことではない。とりあえずリリアとアリアのそっくりさはおいておくとして、彼らがディアノイアの生徒だという事だ。言われて見ると、この二人には見覚えgはある。


「そうだ、確か学園で……。大聖堂に学園が襲われた時に会った……」


「覚えていてくれたんですね。少し、集まるのが遅くなってしまいましたけど……力になれて良かったです」


そう言って笑いあう学園の生徒たち。彼らはみんな既に立派な戦士になっていた。全員がこの二年間、それぞれの戦いを生き抜いてきたのだろう。


「感謝してよね! アリアとブレイドが一生懸命皆に声をかけて回ったんだから!」


「お前たちが……?」


「鶴来のネーチャンに、転術符をいっぱい預かってさ。あちこち転々としながら手を貸してくれそうなやつに渡してたんだよ。いつか、皆の力を一つにしなきゃいけない時が来る……そう思ってさ」


ブレイドとアリアは互いに見詰めあい、それから拳をあわせて微笑んだ。何だか良く判らないが、二人ともいい雰囲気になってる……。

ううむ、二年の月日というやつは流石に長いのだろうか。皆見れば背も伸びているし。ブレイドなんかかなり成長したな……。


「皆さんが危険だと聞いて駆けつけたんですが、何がどうなっているのか良く判らなくて……」


「そういえば連絡をしたのは誰なんだ?」


誰もそれを知らないのか、互いに顔を見合わせて首を傾げていた。しかしその疑念は直ぐに払拭される事になる。


『転術符を持つ者には、『我々』の声が届くようになっているのだ…・・』


全員が同時に空を見上げた。声は空から聞こえてきた気がしたのだが、別にこの声の主は空にいるわけではない。

声は『彼』の者だった。頭の中に響いてくるようなその不思議な声はそのまま続けて響いてくる。


『救世主よ……。プロミネンスの脅威は一時的だが凌ぐ事が出来たようだ。これからの事を、話し合わねばなるまい……』


「……そうだな。よし、奉龍殿に向かおう」


「街の事は私たちに任せてください! 次の作戦が決まったら連絡してもらえれば大丈夫ですから」


皆は口々にそう言って俺たちを応援してくれた。学園の仲間たち……こんな滅びかけた世界にも、こんなにも沢山の仲間がいたんだ。

それが堪らなく嬉しくて泣きそうになる。でも、そんなことしている場合じゃない。俺たちは一刻も早く次の一手を打つ為に奉龍殿へと急いだ。

奉龍殿に辿り着いた俺たちを前に『彼』は瞳を開き、静かに息をついた。プロミネンスはそう連射の効く代物ではない。二連射するのにも酷使した事だろう。そう考えれば暫くは安全であると言えるが、それがずっと続くわけではない。


『まずは礼を言うべきなのだろう……。『我々』は死すれば世界に回帰する存在だ。死という概念は存在しない。だが……お前たちのお陰で多くの命が救われた』


「おいらたちは、自分に出来る事をただやっただけだぜ」


「誰かに強制されてここにいるわけではない。僕たちは……自分で選んでこの場所に来た」


この場所に召喚を行ったのは『彼』なのだろう。でも皆ここに来る事を己の意思で決めた……そんな気がする。大切な物を二年間守ろうと戦い抜いてきた皆……。彼らの瞳には迷いはなかった。


『プロミネンスは暫く機能を停止するだろう……。だが、こちらにはプロミネンスを遠距離から破壊する手段が存在しない……』


「つまり、直接乗り込んで破壊するしかないって事か」


この世界にはもう、あんな兵器は必要ないんだ。プロミネンスもパンデモニウムもリア・テイルも……。もう、この世界に大きな力は必要ない。

神の啓示も、誰かの思惑も……。そんなものより一人一人の願う心の方がずっと強い。その力はこうしていつでも一つになれる。俺たちはディアノイアを通して繋がっている。


「アルセリアがどうしてこんな事をしたのかは判らない……。でも、俺たちは戦わなければまだ何も守れて居ないままだ」


振り返って皆の顔を順番に眺める。俺たちは大切な物を沢山失ってきた。失って擦れ違って戦って……でもやっと未来を手に入れたんだ。

自分たちの手に掴み取った未来を、こんな戦いなんかで無駄には出来ない。それじゃあヨトを倒してまで世界を解き放った意味がないじゃないか。

過去を無駄にするわけにはいかない。俺たちは沢山の人の願いの上に立っている。だからもう、立ち止まったり出来ない。


「皆の力を貸して欲しい! プロミネンスシステムを――ラ・フィリアを破壊して全てを終わらせるんだ! もう憎しみも悲しみも……全部っ!!」


全員同時に頷いた。俺たちは一人じゃない。皆一緒に歩いて行くんだ。物語の終わりのその向こうまで。

決意を新たに振り返る。問題は、これだけの人数をどうやってラ・フィリアに運ぶのか、とか……そういう具体策なわけだが。

これだけのメンバーならもう力押しで搭だろうがなんだろうが壊せそうな気もするが……さて、どうしたものか。


「――その戦いの前に、まずは準備を整えないと」


声に振り返る。何もなかった空間に突然扉が浮かび上がり、扉が開くと同時に見覚えのある姿が現れた。


「メリーベル……!?」


メリーベルは車椅子に乗っていた。ごつごつした地面は動きづらいのか、疲れた様子で途中で立ち止まる彼女に駆け寄った。


「お前……一体どっから……?」


魔術教会バテンカイトスから。久しぶり……ナツル」


以前に比べメリーベルはどこか元気がないようにも見えた。それも当然か。魔物の呪いを解いた彼女は病気がちな身体に戻ってしまったのだから。

どうやら歩く事も今はまま成らないらしい。それでも車椅子を押してでも会いにきてくれたんだ。今は何よりこの再会が喜ばしかった。

扉から姿を現したのはメリーベルだけではなかった。彼女の父、メフィスに……それから初めて見る少年の姿がある。


「あの……貴方が本城夏流さん、ですか?」


「え? あ、ああ……? そうだけど?」


「初めまして。僕は、トレイズ・コンコルディアと言います。皆さんの事は、姉から伺っていました」


「姉からって……え? もしかしてベルヴェールの弟か?」


彼は俺の言葉に素直に頷いた。なんというか、雰囲気が姉とは違いすぎる。

トレイズはこの二年間ベルヴェールと一緒に行動していたらしく、この『空白の日』に隠された謎について探っていたらしい。

そうして神の存在やらなにやらにまでは肉薄したそうなのだが、ここ数日の間に行方知れずになってしまったという。


「姉は、ラ・フィリアに秘密が隠されているのではないかと探っていたようなんです。それで恐らく、単身シャングリラに……」


「……そうだったのか。無事だといいんだが」


というか、この弟君どこかで見覚えがあるな。学園の生徒だったらしく、もしかしたら面識もあったのかもしれない。


「何から話せばいいのか……。最初から話すと長くなってしまうので、一先ずその話は置いておきますけど……」


「ああ。それよりさっきバテンカイトスから来たって言ってたな? ティパンはまだ無事なのか?」


「いや、残念ながらティパンは消滅したよ。ただ、くじらの腹バテンカイトスは異空間に構築された特殊なエリアだ。街そのものや建造物が消滅した所で存続に問題はないのだよ」


「そ、そうなのか」


「建造物が破壊されたくらいで貴重な研究成果が失われては堪らないからな――と。一先ずは互いの無事を喜ぶとしようか」


このおっさんは相変わらずだな。十四年前でも付き合いがあったが、結局俺に気づく気配はなしか……。まあ、いいんだけどね。


「移動手段と拠点にはバテンカイトスを提供しよう。余り部外者を入れるのは好ましくないが、状況が状況だからな」


「助かります。あ、でも……転送地点が定まってないんじゃ」


リア・テイルに突撃する時はリリアが持っていた転術符が目印になったからよかったが、シャングリラにそんなもん都合よく存在しないだろうし――。


『それならば問題ない』


しかしその予想とは裏腹に『彼』が語る。


『ゲルト・シュヴァインが設置した転術地点がいくつも存在している……。これならば、幾つかの方向から同時に攻め込む事が可能だ』


「ゲルトが……?」


彼女はずっと一人で戦っていた。仲間を探し、いつか戦いの日が訪れる事を予測して。

その信じ続けた、夢を追い続けた時間は無駄なんかじゃなかった。それが今この瞬間証明されたんだ。俺はそれが、堪らなく嬉しい。

そうだ、この戦いにはゲルトも一緒なんだ。彼女の作った道が俺たちを明日につなげてくれる――そんな気がして、胸の奥から勇気がこみ上げてくる。


「それなら直ぐにでも攻め込めるな」


「……だから、準備と手当てをしてからにして。ナツル、ボロボロだよ?」


車椅子に乗った低い視点からメリーベルが苦笑を浮かべて呟く。確かに……ヨトと戦ってからそのままだ。


「そうだな……とりあえずは装備の手入れと傷の手当てだ。それが終わったらラ・フィリアに突撃……それでいいか?」


反対意見は無かった。皆笑いながら受け入れてくれた。


「それは兎も角! ニーチャン、最後の戦いもリーダーなんだからしっかりしろよ〜!」


「え? お、俺がリーダーなのか?」


「……ほかに誰がいるの?」


「ブレイブクランのリーダーは、いつだってお前だったろ!」


皆にそう詰め寄られ、何だか気恥ずかしい。そういえばリーダーなんてもんをやっていた時期もあったっけ……。

でも、結局俺が何かしたわけじゃない。皆の力があったからやってこられたんだ。今までだって、これからも――。


「ふむ……確かに部隊名が無いと気合が入らないか」


「メフィスまで何言ってんだ……。部隊名なんて、別に決めなくたって今更――」


全員の顔を見渡す。わかりきっていることだ。でも、どうやらみんなは俺の口からそれが聞きたいらしかった。

仕方の無い連中だ。こんなもん、ただ気分を盛り上げるためにするだけのどうしようもないその場のノリだ。全員の合意が得られたわけでも、それを行使するわけでもない。

それでも俺は顔を上げる。そうして宣言する。最後の戦いに臨む、俺たちの名を――。


「――ここに、第三次勇者部隊ブレイブクランを設立する!」


各々様々な反応を返してくれた。不機嫌そうなヤツ。なんだか盛り上がっているヤツ。懐かしんでいるヤツ……。そんな中、俺はリリアに歩み寄る。

リリアは顔を上げて微笑みを返してくれた。彼女は勇者だ。ゲルトも勇者だった。でも、そうじゃない。勇者部隊ってのは……それだけじゃないんだ。


「……私ね、思うんだ。勇者とか魔王とか救世主とか神様とか……きっとそんなのは心の持ち様で、人の見方でいくらでも変わる者なんだって」


そう、大切なのは心なんだ。ここにいる――いや、ディアノイアの生徒だったみんなが。勇者と呼ばれるに相応しい勇気を持っている。

救世主と呼ばれるに足るだけの決意と覚悟、そして正しい力を持っている。だからこれは、皆の名前。俺たちが戦ってきた全ての象徴。


「だからね、みんな勇者なんだよ。それで、救世主で……。だから、勇者部隊でよかったって思う。私たちは……同じ物を目指していけるから」


リリアの言葉に皆は黙り込んでいた。多分、言わずとも判っている。俺たちはみんな、きっと同じ事を考えていた。

それでも真剣な様子で語るリリアに、どう反応すればいいのか分からなかったのだろう。おかしいような、嬉しいような……くすぐったい感触。


「それじゃあ皆さん、準備をしましょう! まだ話しておかなければ成らない事もありますし……!」


トレイズ君がそう声を上げた。姉に似て仕切り屋さんだ。俺たちはトレイズの言葉に苦笑し、それからバテンカイトスへと移動する事にした。


〜それゆけ! ディアノイア劇場Z〜


*ラスボス直前ですよ編*


ゲルト「死にました」


リリア「うん……。でもさ、ゲルトちゃんって本当に死亡フラグだらけで良く今まで生きてたなって思うよね?」


ゲルト「ええ……。主人公より瀕死になってると読者様でも噂のサブヒロインですから……」


リリア「『空白の日』で終わると思ってた人は残念でした〜」


ゲルト「もうちょっとだけ続きますよ」


リリア「でももう一週間以内には確実に終わるね……」


ゲルト「……本当に終わりますね」


リリア「うう……。さーびーしーいーよーうっ!!」


ゲルト「だから……泣かないでくださいよう!」


リリア「えーんえーん!」


ゲルト「うう……! えぐえぐ……!」


夏流「久しぶりに出てきたらなにこのカオス……」


リリア「びえーん! 夏流さーん!!」


ゲルト「ナツルーっ!!」


夏流「ひいっ!? 本編収録前なのに衣類に色々な液体が!?」


リリア「この劇場も次でラストなんだよう! なんかいい事言って締めくくってよう!」


ゲルト「ひっく……! うえぇええん!」


夏流「最早ゲルトは台詞になってないし……。そ、そうだな……。いい事か……うーん」


リリア「早く早く!」


夏流「……ここまで真面目に読んだ読者の皆様。これをここまで読む間に、もっとほかに色々な事が出来たと思いますよ。有意義な活動とか」


リリア&ゲルト「「 なんじゃそりゃああああああ!! 」」


夏流「事実だろっ!?」


リリア「事実だけどお!!」


ゲルト「そういう事言わないで下さいよ! 読者の何倍作者が時間かけてると思ってるんですか!?」


夏流「作者も可哀相にな……。もっと別の事に時間を費やせば――」


リリア「わー! わああああっ!!」


ゲルト「さ、最終回に続きます!」


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