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掲示板

作者: 水無月 弦

夏ホラー参加作品です。怖さを辛さに例えると激甘です(笑)PS:残酷な描写有りとしましたが正確には残酷な?描写有りです(笑)

『なぁ知ってるか?』

『何をだよ』

『掲示板だよ。け・い・じ・ば・ん』

『アレか?あの…見たら四日目に死ぬっていう』

『そうそれ』

『それがどうしたんだ?』

『俺、見付けたかもしんね』

『あっそ』

『反応わりぃなぁ』

『なら、きちんと解除もしとけよ?』

『実はな。俺、解除しないでおこうと思うんだ』






この電話がアイツとの最後のやり取りになった。

なぜならその次の日からアイツは現れなくなったからだ。

アイツはお調子者で悪ふざけが過ぎる。典型的な悪友だったが、唯一の自慢が皆勤賞だった。

そんなアイツが学校に来なくなってから三日が過ぎた。

そして四日目の朝に河川敷で惨殺体としてアイツが発見された。

遺体は無数の小さな傷が斑に付いていた。

その話を聞いて俺はどんな顔をしていたんだろうか?

よく分からないが、一つ言えるとするならば実感が持てなかった。

次の日でもひょっこりとアイツが現れて、「どうだ?掲示板の呪いに打ち勝ったぜ?英雄だな、俺。と言うわけで奢れ」と言ってきそうだったからだ。

だからその日の夜にアイツからメールが来ても『やっぱりな』としか思わなかった。

メールの内容にはアイツらしくURLだけが載せてあった。

単調と言うか無愛想と言うか…まぁアイツらしいの一言に尽きる文面だった。

俺はまたアイツが何か面白いもんでも見付けたのかと思いURLをクリックした。

そこは背景を黒に、文字を赤にした。アノ掲示板だった。

親記事には…


殺のな

しはた

たあ?


と書いてありレスは一つも無かった。

俺は性質が悪い、アイツらしい冗談を苦笑いで受け流して眠る事にした。

どうせ。アイツが自分で作った掲示板だからだ。

アノ掲示板ならたくさんの解除文のレスがあるはずなんだ。

しかしそれが無かった。

つまりはそう言うことなんだ…






次の日も、その次の日もアイツの居た場所には花が置いてあった。

そしてアイツの死を聞いてから三日目の放課後、花が無くなった。

その時になってやっと薄ら寒い感覚が俺を締め付け始めた。

俺は自室に戻るとベッドに座り携帯を見つめた。

携帯を見つめると次から次へと疑問が浮かび上がってきた。

『あのメールは一体誰がアイツのアドレスを使って送ったんだ?それにアノ掲示板は本物だったのか?』

浮き上がる疑問は消える事なく数だけを増していった。

そんな中、一つの些細な疑問が浮かび上がった。

『アイツも恐かったんじゃないか?もしもアイツも俺と同じように誰かに知らされて見たのだったら?そしてアイツのあの電話が助けを求めていたんだとしたら?それを素っ気なくした流した俺に対する復讐のために蘇りメールを送りアノ掲示板を見せたのだとしたら?』

些細な疑問は新たな疑問を寄せ付け大きな疑問に昇華させた。

分かっている。そんなはずは無い事は…

ただ、どうしても疑問を綺麗に拭いきれなかった。

俺はアイツから送られた、最後のメールを見て急いでアノ掲示板に飛んだ。

そこには相変わらず、黒の背景に赤の文字で…


殺のな

しはた

たあ?


とだけ書かれていた。

他にレスは無く、俺が初めてのレスを入れた。


いいえ、人違いです!


噂が本当ならばこれで呪いは解けるはずなんだ。

解けないはずがないコレは偽物なんだから…そう、偽物なんだ。

俺は気分が徐々に軽くなってきた。

たぶん書き込みをしたからだろう。

俺は大きくため息を吐き出すとベッドに倒れた。

俺は溜まっていた疲れを一気に吐き出すようにベッドに深く沈んで眠った。






目が覚めると見知らぬ天井があった。

起き上がって周りを見渡してみても当然、俺の部屋じゃなかった。

白いカーテン、白いベッド、そして頭の近くにあるボタン…

俺はとっさに『病室…?』と言う単語が頭を過った。

確証を得るため、周りをまた見渡したが…やはり見れば見るほどそこは病室だった。

「よぉ。起きたか?」

部屋を区切る白いカーテンを乱暴に開けながらアイツが入ってきて俺に話し掛けてきた。

「ん?まぁ見ての通りだ」

「それは良かった」

「それよりお前、死んだ事にされてるぞ?」

俺がニヤリと笑いながら言うとアイツもすかさずニヤリと笑い返した。

「そりゃ…やばいな」

「やっぱやばいよなぁ…」

悪友とは言え友人がいた安心感から俺は自然と肩が軽くなった気がした。

「それよりもなんで俺はここに居るんだ?」

「知りたいか?」

俺の質問にアイツは更にニヤリと笑みを深めた。

アイツがこんな顔をする時はいつでも大変な事を考えてる時だった。

「もちろん。知りたいね」

「ならついて来いよ」

すたすたと歩き出したアイツの後を俺は追い掛けた。

アイツは階段を上りに上り、屋上に続く扉を開けて屋上に出た。

俺も屋上に出て辺りを見渡すと…

黒い空に赤い雲が空を覆い、赤茶の荒地が大地を埋め尽くしていた。

「すごいだろ?」

「あぁ…」

言葉に成らないと言うのはまさにこう言うことなんだと俺は体験していた。

「お前が知りたいのはどうしてここに居るか?だったよな」

「あぁ…」

アイツは俺から少し離れて俺を見つめた。

アイツの顔は何がそこまで愉快なのか分からないが笑っていた。

「死んだからに決まってるだろ?」

笑いながらアイツは事も無げに言ってのけた。

意味を理解するのにそれほど時間は掛からなかった。

俺以外の全てがそうだと言ってるからだ。

「死んだのか…そっか…」

「あまり驚かないんだな?」

「この景色見たらな」

俺は意外そうに言うアイツに苦笑いを返した。

その反応に不満そうにしていたがアイツは笑みを絶やさなかった。

「なら俺の名前覚えてるか?」

「そりゃもちろん…………あれ?」

「くっくくく。覚えてるも何もねぇよ。俺達はたった今"初めて"会ったんだからな」

「はぁ?俺はお前からメールを貰ってこうなったんだぞ?」

俺はチェーンメールが嫌いで登録外のメールは受信しないようにしている。

だから初めて会う人間からメールを受け取るのは不可能なのだ。

しかしアイツはそんな事かまいなしに続けた。

「お前は真っ先に"俺からのメールはありえない"って思ったよな?」

「普通だろ?お前は送ってないんだから」

「なぜ言い切れる?普通は"俺が送った最後のメール"だろ?なのにお前は言い切った。なぜだ?」

「それは…」

「あのメールはお前がお前に送ったメールだからだろ?それなら普通だな。それだと俺は確かに送って無いからな。何よりも俺が存在してないのはお前がよく知っているもんな?」

アイツはゆらりと流れるように動くと俺の隣に立って囁いた。

「思い出しな。本当の事を…」

「俺は…」

俺は焦点の定まらない目で空を見つめた。黒くて赤かった。

黒くて赤い空を見つめていると走馬灯のように…いや走馬灯を見た。

俺がアイツだと思っていたアイツの行動は全て俺がしていた事だった。

「思い出したか?」

「なら…お前は誰なんだ?」

「ひどいな。お前だろ?俺を殺したのは」

「知らない…俺は人殺しなんてしてない…」

「くっくくく。いいや。お前が俺を殺したんだ」

「俺は…殺してない…」

「お前がここから退院するのはお前が殺した奴、全ての奴の死に方をしてからだな。まぁ退院してもお前を待つのは何もないがな」

「…殺してない…殺してない…」

「さて始めようか?」

屋上に続く扉が開くと医師達が屋上に出てきた。

医師達はそれぞれ全く同じモノを持っていた。

「後な。アノ掲示板にレスが無いのは当たり前だ。お前が造り上げた幻想だからな」

医師達が持つそれはガスガン…そのガスガンに俺には見覚えがあった。

「簡単に救われるわけがないだろ?お前は沢山の奴等を惨殺したんだからな?」

それは…

「まずは俺の死に方からだ!その後にもまだまだお前に自分の死に方を味わって頂きたい方々がいるからな。せいぜい楽しみな。救いの無い宴をよ」






暑い真夏日、俺は勉強のストレスを発散するためにガスガン片手に近所の河川敷へ向かった。

俺は辺りを見渡すと一匹の黒猫を見付けた。

そいつは最近ここに来てここら一帯を縄張りにした猫だ。

俺はニヤリと笑うと銃口を黒猫に構えた。

しかし黒猫は逃げようとする気配さえ見せずこちらを睨み毛を逆立てて唸り声をあげた。

俺は銃口を固定すると黒猫へ撃ち込んだ。

一発当たる度に黒猫の黒い毛は赤く染め始めた。

しかし黒猫は俺に対する威嚇を解かないまま全身を血塗れにして倒れた。

俺は倒れたのを確認すると気味の悪さを覚えて後ろを向くと声が聞こえた。

「コノウラミ…イツカ、カナラズ…」


読んでくれてありとうございました。口直しに他の作家様の作品をどうぞ(笑)

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして……。なにか、ホラー的に怖いよりも恐ろしいというような表現がぴったし私にあてはまった小説でした。とても楽しませて読ませていただきました。 ですが、すごいですね。私もこういった文章…
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