【超短編】アンドロイドの恋人(モテない男と謎のセールスマン2)
前作『女にモテまくる薬』の続編です。前作をお読みいただいた後のほうがわかりやすいですが、この作品だけでも十分にお楽しみいただけると思います。また星新一風の作品です。
おんぼろアパートのおれの部屋に、こないだのセールスマンがまたやってきた。
「先日お買い上げの女にモテまくる薬はいかがでしたか」
「ひどい目に遭ったよ。もうこりごりだ」
おれが買った薬は老人の女性にしか効果を発揮せず、部屋には毎日、
ばあさんたちが押しかけてきたのだった。
「そうですか。もっと高いランクでしたら、気に入っていただけたはずですが。
ところで、今回ご案内させていただく商品はアンドロイドの恋人といいまして、
女性のアンドロイドですが、どんなブサイクでモテない男性でも、あ、失礼、
どんな男性でも恋人になってくれます。これがパンフレットです」
パンフレットの写真を見ると、本物の人間とまったく見分けがつかない。
しかも超美人である。アンドロイドでも、こんな美人が恋人なら文句はない。
「今回の商品は一年契約のレンタルとなります。松竹梅の三種類ございまして、
松は五百万円、竹は五十万円、梅は五千円ですが、いかがですか」
「松が若い美人で、梅は年寄りのばあさんじゃないでしょうね」
「いえ、どれも同じ若い美人です。まあ、質の違いはありますが、ははは」
男の奇妙な笑い方が気になったが、ビンボーなおれは梅を選ぶしかなかった。
翌日、超美人がおれの部屋を訪ねてきた。動きまで本物の人間そっくりだ。
「こんにちは。わたしをあなたの恋人にしてください」
会話も人間とまったく同じようにできる。こうして彼女はおれの恋人になった。
肌触りも人間そっくりで、触ったりキスしたりはできるが、性交ができない。
残念だが、そっちのほうは風俗へ行くことにしよう。
一週間後おれは風俗へ行ったが、部屋に戻ると彼女は鬼のような形相だった。
「わたしという恋人がいながら浮気するなんて許せない。殺してやる」
そう言って彼女は台所の包丁を振り回した。おれは逃げ回り、必死で謝って、
やっと許してもらった。
それから一年間、おれは悲惨な生活を送ることになったのだった。
そろそろモテない男の情けない話も卒業したいです。