第13両・引き殺したのは人生の。。。
パンっ❗
という音と共にそこにいたナナに、呆然とする水口。
誰も何も喋らない。
いや、喋れない。
そこには、さっき死んだハズのナナがいたから。
続く無言の時間。
時間にすれば数秒だったかもしれないが、その場の誰もがとてつもない永い時間を感じていた。
この状況を理解する事が出来ずに。
声が出ない。
が、その静寂を振り絞る声で破ったのは水口だった。
『ナナ❗生きて、いたのか❗ナナ❗』
そんな水口にナナは話始めた。。。
遡ること1時間前、ナナはとある女と一緒にいた。
知り合い?
ではなかった。
けど、その女にとってはナナが話した相手だった。
だが、昔からの知り合いじゃない。
お互い、ついさっき出会ったばかりの間柄だった。
その女は昨日のナナのように駅のホームに座っていた。
とても寂しそうだった。
けれど、誰もその女に見向きもしない。
街とは、都会とは、そーゆーところだ。
けど、ナナは違った。
ナナはその寂しそうな女をほっておけなかった。
だから声をかけた。
その女にも、もう生きていきたくない悲しい人生があった。
ナナはその女の人生を肯定も否定もせず、ただ優しく聞いていた。
ナナは知っていたからだ。
人が人を変える事は出来ないんだという事を。
そして、その女は自分の人生をナナに語り終えるとこう言った。
『ありがとう。アタシの話を最後まで聞いてくれて。アンタにはさ、もーちょっと早く出会えてたら親友になれたかもね』
と。
それに対しナナは
『もう、親友だよ。私の方こそありがとう』
と、答えた。
そしてその女はナナに涙をこぼしながら、いっぱいの笑顔で
『ありがとう❗バイバイ❗ナナ❗』
と、言って、電車が来る直前、線路に走って飛び込んだ。
女は小林トレインによりその人生を終えた。
ナナはペンダントを外し、その女の亡骸に向かって投げた。
それがナナがその人にしてあげれる唯一の事だったから。
『私は、あなたの事、忘れないから』
ナナがそう言うと、まるでその言葉に応えるかのように、ナナのペンダントをその女の血が染めた。。。
誰もが言葉を失った。
ナナのした行動に。
そして思った。
自分に出来るだろうか?
死を決断する程の苦しみの中で、人の事をここまで想える事が
そんな中、水口は尋いた
『けど、なぜここに?』
するとナナは水口に
『これ、水口さんに渡しときたくて』
そう言って水口に紙袋を渡した。
中にはなんと
『これ?チョコ?』
『うん。だって、今日はバレンタインだし、水口さん昨日真剣にナナの話聞いてくれたからこれたけは渡しとこうと思って来たの。そしたらコイツの話が聞こえてきて、あんまりにも頭きたからひっぱたいちゃったけど w』
ナナは笑いながら話した。
そして
『ありがとう。水口さん。さっきの嬉かったよ』
そう言うと、一同にお辞儀をして線路に向かって歩いていった。
呆然とする水口。
けれど
『間もなく電車がまいります』
のアナウンスで我に返った。
そしてナナに向かって走り出し、線路に入ろうとするナナの腕を掴んだ。
振り払おうとするナナ
それを必死で止める水口
『離して❗もう生きていきたくないの❗私が死ぬって決めたの❗お願いだから邪魔しないで❗』
『ダメだ❗俺はナナを死なせない❗そう決めたんだ❗』
『ヤダ❗生きてたっていい事なんて何もないもん❗裏切られてばっかりだもん❗もうやなの❗決めたの❗』
水口の手により、ホームの中央に引き戻され泣きじゃくるナナ
そんなナナに水口は言った。
『ナナ。俺はナナを裏切らない』
『嘘だよ。そー言ってただここで死なせたくないだけでしょ』
『違う❗』
『違わない。いいよもう。別の所で死ぬから。知ってる?水口さん。人は人を変えれないんだよ?』
『知ってる。。。だから』
そう言うと水口は茂田の方を向き土下座しながら言った。
『シゲさん、俺は今日をもって小林トレインを退職させていただきます❗身勝手なのは承知です。けど、もう俺はこの仕事を続けられないです❗』
そんな水口を茂田はしばらく見下ろしながら黙っていたが
『水口。顔上げろよ』
と声をかけた
『シゲさん。。。』
そう言って顔を上げた水口の体を、茂田は引き起こした。
そして
『つーかさ、何言ってんのお前?バカじゃねーの?簡単に辞めれる訳ないじゃん?小林トレインに入る時の契約覚えてんだろ?この女を愛したからか?あめーよ。大体お前にはどっちにしろムリムリ』
『そんな事。。。』
『はあ?何?聞こえねーよ』
『シゲさん、俺は』
『あーウゼぇ。大体ナナだっけ?本当にコイツもウゼぇよな。何コイツ?』
『シゲさん。。。やめてください』
『あ?何?ただのイカれ女じゃねーか w
さっさと死なせてやれよ。どーせ生きててもいい事ねぇ養分なんだからよ。こんな女 w』
その瞬間、水口は茂田の顔面を殴った
『いい加減にしてください❗俺の事はどー言っても構わないけど、ナナの事を悪く言わないでください❗』
水口は激昂した。
その水口に茂田は
『。。。水口。やっちまったな。覚えてるよな?小林トレインの契約の一文。小林トレインは勝手には辞めれない。けど、同僚に暴力振るったらその場で解雇だって事をさ』
『シゲさん。まさか、わざと。。。』
茂田は水口を抱き締めた。
そして
『大事にしろよ。ナナちゃんの事』
そう囁いた
『はい。。。❗』
水口は涙しながら茂田に答えた。
そしてナナに言った。
『ナナ。確かに人は人を変えれない。それは俺も知ってる。だから、俺はナナを一生涯自殺から止め続ける。俺もナナもじーさんばーさんになっても。だから結婚しよう』
『え?何言ってるの?どーしたの水口さん?』
水口は一声も話さずナナを見ている
『ねえ?あの。。。』
ナナはどぎまぎしているが水口は話さない
『分かった。いいですよ。』
その瞬間、水口はナナを抱き締めた。
『今日、死ぬつもりだったのに、全然、せーはんたいの事になっちゃった』
呆れながら笑うナナ
『ナナ。まだ死にたい?』
『ううん。全然。さっきまでの気持ちが消えちゃった』
『そっか。じゃー、死にたいって思ってたナナは死んだのさ。そして、死ぬまで絶対死なせない。それまでいっぱい笑って、一緒に生きよう』
立ち入る者は引き殺して進む小林トレイン
どーやら、水口が最後に引き殺したのは、ナナの人生という線路に立ち入った不幸というヤツだったようだ。
そして、これからもそいつが立ち入ればすぐに引き殺してやる決意を、水口はしていた。
小林トレインは、本日も止まる事なく走り出した。




