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小林トレイン【コバトレ】  作者: ジュン・ガリアーノ
11/19

第10両・背中は語る。誰の為に

朝、気がつくと、水口はベットの上にうつ伏せに寝ていた。

服は昨日のまま。

帰るなりベットに倒れこむように寝ていたらしい。

時計を見ると、まだ始業までには大分時間がある。

いつもより大分早く目が覚めたようだ。


『これから、仕事か。。。』


目覚めると共に、ナナの事を思い出した。


憂鬱だ。


今まで人を引き殺したのがない訳じゃない。

何度もある。


けど、それはいつも突然の事だったし、見ず知らずの他人だった。


けれど、今日は違う。


昨日知り合ったばかりとはいえ、面識ある人間。

しかも、あれだけ本音で語り合った人間。

それに、元々好みのタイプな上に、昨日ナナの心に触れて、水口はナナに愛しさを感じていたのだ。


そしてなにより、自分はこれからそんな愛しく想ってる人を突発ではなく、分かっていて引き殺すという事だ。



『イヤだ。。。』



水口はこの仕事を誇りを持って頑張っている。

けど、いや、だからこそ悩んだ。


[自ら線路に入るとはいえ、仕事であればナナを引き殺していいのか?]

[知ってるなら止めるべきじゃないのか?]



様々な思考が水口の全身を駆け巡る。

けれど、一向に答えは出ない。


そうこうしている内に、段々始業の時間が迫ってきた。

水口は悩んだまま、シャワーを浴びにいった。

そして思った。


[そう。昨日ナナに何も言えなかったのは、ナナのあの目を見たからだ。もう、何もかも悟り、全てを決めてしまったあの目を見たからだ。だとしたら俺は。。。]





駅員室に着いた水口は、先輩の茂田に話しかけた。


『シゲさん。おはようございます』


『おう。おはよう水口❗。。。あれ?どーしたの?なんか、元気無くね?』


『シゲさん。シゲさんは仕事中に、この線路でシゲさんの。。。知り合いを引き殺した事ってありますか?』


『。。。どーしたんだよ、水口?』


『シゲさん。すいません。俺、今日。。。乗りたくないです』


水口は沈痛な表情で話した。

そして、その表情を見て水口の心を悟った茂田は答えた。


『昨日の女か。。。水口。お前がどうしても今日乗りたくないならそれでもいい。俺が社長にクビ覚悟で土下座して頼んでやる。けどな、水口。お前は本当に今日のその運転。他のヤツに任せていいのか?その子に頼まれたのは、そいつの最後を託されたのは誰なんだ?』


『?❗』


『水口。お前は何を想ってこの仕事をしてる?そして、その子にお前は何が出来るんだ?。。。まだ、始業までには時間がある。他のこまけー事は俺がしとく。お前が今日どーするか決めたら俺に報告にこい』


茂田は水口にそう言って、駅員室の扉を開けた。

そして水口に背を向けたまま


『さっき水口が俺に言った質問の答えだけど。俺は。。。あるよ』


そう言って、茂田は駅員室を後にした。



『シゲさん。。。』



水口は茂田のその背中から目が離せなかった。


あまりにも、あまりにも哀しみに満ちたその背中から。



そして、扉は閉まった。

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