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半神半人の少女様(仮題  作者: 眠気 愛
プロローグ
2/20

第二話

 ――夢を見た。

 いや、これは本当に夢なのかどうかはわからない。なぜかそう、思ったんだ。

  ◆

 ビュォゥ……。

 砂埃が舞う最中、筋肉質の男がリボルバーのついた片刃の大剣を地面に突き立て目の前を見据える。見据える先にあるのは黒い海……のように迫り来る異形の怪物達。その数は十万以上とも思えるほどに大量に迫ってきている。

 男はニヤリと笑い、懐に手をやる。次に手を引き出した時は何かを後ろへと投げ捨てた。

 それはクリスタル。白く光り輝くクリスタルは光を閉じ込めると、一瞬にして弾け飛ぶ。そして驚く事が起きたのだ。


 ――オーロラ。たとえ雲ですらその壁を通り抜ける事ができない淡く黄色に光る結界のようなオーロラが突如として現れたのであった。


 男が突き立てていた大剣を地面から抜き、一振り。

 ブォンッ!! と風を薙ぐ音とともに、ガシャンッ! とリボルバーがまるで装填完了とばかりに一発分の回転をする。その動作が起こると、男に赤いオーラが纏われた。爛々と輝いている瞳には目の前にある黒い海を焼き付け、すぅ……と大きく息を吸った。


 とたん、獣の咆哮とも勘違いするほどの巨大な叫び声が男を中心に轟いた……。

  ◆

「あれ……俺……?」


 視界がやけにぼやける。目に手をやると濡れた感触がした。

 俺は泣いていたのだろうか? それはなぜ? わからない。

 凛と別れるのが辛かったのだろうか? それとも両親? それとも死んでしまった事だろうか。

 あぁ、このまま考えていると嫌になる。なぜ俺が死ななければ行けなかったのだろうか。まだ好きな本の最後を読んでいない。親孝行だってできていない。人生が中学で終ってしまうなんて嫌だろう。たとえそれが住みにくい場所であっても。


「……はぁ。やめだやめだ。俺はこんなネガティブな奴じゃなかったはずだ。どっちかっつうとポジティブ? 虐められっ子が何言ってんだか……。べ、別に一方的にやられてたわけじゃないしぃ? やり返してたし?」


 やば。なんか自分が惨めになってきた。

 とりあえず状況確認だ。ここは学校……じゃないな、うん。一番始めから躓いた。死にたい。死んでるけど。

 辺りは白い部屋。俺は椅子に座らされてる。前には木の机に同じデザインの椅子。それ以外何も無い。

 状況確認完了。いやー、全くわからないな!!

 あれか? 死後の世界とか? ここ閻魔様がギルティorノットギルティ決めるとこ? 行けるなら天国の方が良いなー。


「これこれ。黒く暗い場所ならともかく、こんな白く明るい場所なんかで閻魔さんがやるハズなかろう」


 などと普通で善良な一般人が考えそうな事(?)をいろいろと考えていると、いつの間にか目の前の椅子に気怠そうにしながら机に肘をついて紙を手にしていた老人が座っていた。その服装は白い布を撒いたような感じで、背中には白い羽根が……。


「羽根ぇ!?」

「ん? あぁ、儂は別世界の神じゃからのぅ。地球の神には無かった気がするが、儂にはあるぞい?」

「いや聞いてないし」

「やけに冷静じゃのぅ。お主」

「えぇ、まぁ。ほら、バカは死んでも治らないって言うし、頭が完全に理解するのを拒否ってる。うん」

「二学期の期末テスト国語と数学と理科以外の教科、赤点じゃったもんな……お主。数学と理科もギリギリじゃったし」

「そんな可哀想な目で見るなぁああああ!! それとこれとは意味が別だぁ!! ほ、本気を出せば赤点なんて回避できたしぃ? 別にわざとだしぃ?」

「少年よ。言い訳すればするほど同情心がわき上がるだけじゃぞ?」

「うるせぇ! 俺は考えるのが苦手なだけだ!!」


 神と名乗る老人はそれ以上は追求せずに、手にしていた紙を机へと置いた。まるでそれが与太話の終止符とばかりに表情を改めた。


「さて、そろそろ挨拶としよう。儂はラガスモールド。少年がこれから転生する世界の最高神であり、管理者である」

「はぁ……。最高神で管理者……ね。えっと、偉い人?」

「まぁそんな所でよかろう。……少年、もうちょっと知力があればのぅ」


 やれやれと言った感じで手を振る神様。うるさい。意味自体は知ってるんだぞ? ただ、それがその世界でどのぐらい偉いのかがわからないだけだ。


「まぁ今はその落ち着いた状況で聞いてくれると助かるのぅ。儂とて長引かせないわけじゃないのじゃ」

「どうせあれだろ? 輪廻転生的な感じで次の世界で頑張ってー的な何かだろ? 別に俺をここに呼ぶ理由なくね? それとも、ここ普通に通らないと行けない場所?」


 そう言って辺りを見回しても先ほどと同じように机椅子と自分が座ってる椅子と老人ぐらいしか無い。ぶっちゃけいる意味が分からない。


「そうじゃのぅ。本来ならば一般人なぞこんな場所に呼ばんわい。英雄の右腕よ」


 英雄の右腕? はて? 一体誰の事を言ったんだろうか。

 俺は再び辺りを見回す。先ほどと同じだ。老人と俺ぐらいしかいない。


「……えっと、じいさんが英雄の右腕?」

「いやいや、お主じゃお主。記憶消されとるからわからないかもしれんが、お主は地球に転生する前。つまり死ぬ前の前世は儂の世界で勇者の一番の親友で戦友で魔王を倒した勇者のち英雄の右腕として記録されているのじゃ。2つ名はシンプルに【大剣豪】。超える事のできない剣豪としてな」


 神様の言葉に理解が及ばない。俺が大剣豪だって? いやいやいや。俺剣なんか握った事無いし。いやそんな事知ってたら剣道やってたか。数多の女の子の視線独り占めできちゃったり……?


「ちなみにお主は前世でも右腕であった前々世でも伴侶はおらなんだぞ」

「うがぁぁぁあああああああああああああああああ!!!!」


 なんでじゃぁ!? なんで嫁いないんだよ前世の俺ェ!! それだけすごい人だったんなら恋人の一人は二人はいただろぉ!? あれか!? 剣の道にしか興味が無いってかぁ!? 剣が恋人ってかぁ!? やめてくれ、俺は普通に女の子が好きなんだぁ!!


「安心せい。お主が伴侶いなかった理由は大体作る前に死ぬからじゃ。この自己犠牲少年」

「…………は?」

「えー。前々前々世は強大な魔物に襲われ、後で必ず追いつくからさと盛大にフラグを立て女と仲間を逃がした後死亡。前々前世は横暴な領主に貢がれそうな好きな女を逃がして自分だけ捕まり、殺される。前世は親友であった仲間が戦えない且つこのままでは追っ手から逃げ切れないため一人何十万の魔族を相手にして殺される。そして前世、つまり今のお主じゃな。大事な大事な幼馴染みの為に身を張ったは良いが場所が悪く転落死」


 …………あれ? 俺もしかして女難の相とか出てます?


「いや〜、かっくぃ〜の〜」


 いつの間にか隣に立っていた老人がうりうりと肘を突き出して来た事にイラッとするが我慢我慢……。俺はこんな事で怒るような男じゃ……うぉおおおおお!!

 ……やら無いよ? だってやったらヤられそうだし。神様に勝てる気しないし。

 俺がイライラしながらも特に何もしようとしないのをつまらないと受け取ったのか、神様は俺から離れ、「まぁ」と話を続けた。


「お主が助けてきた女と仲間、はたまた勇者兼英雄は全員無事じゃった。お主が戻ってきてくれなかった事に涙しておったよ……。……幼馴染みはどうかわからぬがな」


 最後ボソッと言ってて何を言ったのかわからなかったが、ともかく全員無事だったのか。まぁ記憶無いんですけどね?


「さて、そんな少年に朗報じゃ。お主、ちょいと再び勇者の手助けとかしてみんかのぅ?」


 ほいきた。何か来ると思ってたよ畜生!! このまま帰りたかったさ!!


「えっと、拒否ったら?」

「記憶を消してそのまま転生かのぅ。あぁ、どのみち手助けさせるつもりじゃ。ま、そっちの方が今のお主とは違っていろいろと考えなくて楽かもしれんがのぅ。ほっほっほっほ」


 それって拒否権ないじゃないですか、やだー。

 記憶があるまま転生か、記憶を消してから転生。うん、記憶を消してもらった方がいろいろと楽かもしれん。主に俺の精神的に。


「んじゃあ――」

「あぁ、手助けする勇者の名前を教えていなかったのぅ」


 勇者の名前? いやいや、俺そんなんどうでも良いんで、とりあえず俺の台詞にかぶせるのやめてもら――


「手助けする勇者の名前は……乙坂凛じゃ」



 …………は?


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