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半神半人の少女様(仮題  作者: 眠気 愛
第二章 アルハタ村
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第七話

 あの後、なんとかソーマは復活した。帰ってきたフェイメルが簡単な治癒魔法を使って復活した。

 本気で殴ってよく無事だったなと思ったが、フェイメル曰く、御都合主義だと言われた。

 いや御都合主義で片付けられる事柄なの? これ。


 そういえば、寝ようと思っていた所に肩を揺すっていたのはソーマが起こそうとしていた理由が朝ご飯ができたからだそうだ。

 朝ご飯と言われては仕方ないと思い、いつも通り服の端を持って脱ぎ始めた。


「うわわわわわわ!?」

「し、シオンさん!? い、一体何をやっているんですか!?」

「へ?」


 昨日着ていたワンピースをお腹まで上げた所で二人が慌てたように顔をリンゴのように赤くさせて両手をかぶせた。


「何って、着替えようかと思ったんだけど……。昨日はフェイメル帰ってきてないから浄化の魔法もかけてもらってないから早く脱ぎたいし」

「だだだだだからって師匠! 俺たちがいる前でそんな事やんなよ!?」

「はぁ? お前達は何を言って……」


 と、そこまで言葉を紡いでライナの指の隙間から見える視線を辿る。

 その視線はボクを見ていない。もっと下。言うなれば脱ぎかけたワンピースが隠していない、下半身当たり……あ。

 ……そう言えばボク、今女だった……。四年経ったがまだ受け入れてないな。よかった。まだ俺としての自覚はある。


「それ以上見るつもりならブツをちょん切って差し上げますよ?」

「ひぃ!? お、俺も朝ご飯だから帰るな!!」

「お、俺も食卓で待っていますね!!」


 二人が顔を真っ青にしながらライナは窓から。ソーマは扉から出て行った。


「まったく。四年も立ったのですから、自分が女だという自覚を早く持った方がいいのでは?」

「そんな自覚をした瞬間。ボクの最後のプライドが折れそうなのでご遠慮致します」

「はぁ。ともかく、そちらのワンピースを私に。新しいワンピースをどうぞ。清潔なる精霊よ――〈リフレッシュ〉」


 フェイメルがボクに清潔の魔法を掛ける。そう、魔法。

 人間以外の体内にある魔力を代償に、空気中にいる精霊達にお願いをしてようやくできるのが魔法だそうだ。

 ボクも神族と人間のハーフなので練習すればできるようになると言われてはいるが、この四年間でフェイメルに教わって入る物の、ほんの少しもできていない。

 フェイメルが先ほど使った魔法は体に付いた臭いや汚れを一瞬にして落として清潔にする魔法だ。一般的な魔法で、魔法を習得するのに便利な魔法だそうだ。

 魔法には初級魔法・中級魔法・上級魔法・最上級魔法と別れており、〈リフレッシュ〉は初級魔法に区分される。


 初級魔法は一般的に使われるちょっとした魔法が多い。それ以外では攻撃に使う火の玉を出したりと、一般人が休み無しで一日に十回は使える魔法の事を言う。


 中級魔法は一般人には使えず、魔法に卓越した人が使える魔法で、下手に使うと人命に関わる事になる魔法の事を言う。


 上級魔法はたとえ魔法に卓越した人であっても、無作為に使う事は困難で、決して気軽に使っていい魔法ではない。攻撃の魔法が一般人に当たれば即死する事は間違いない。


 最上級魔法は個人で使える人物はいないと言っても過言ではないほどに消費魔力が大きすぎる。そのため、大体複数人が集まって大掛かりな儀式とともに使われる事が多い。

 そして、フェイメルだが、彼女はどうやら最上級魔法まで使えるようだ。さすが天使様、格が違う。


「たとえ男だと精神で思っていても体は女の子なんですから……って、聞いていますか?」

「あぁ、うん。聞いてる」

「嘘ですね。今完全に上の空でしたよね? お仕置きしてもいいですか?」

「どうしてそこでナチュラルにセクハラしようとするのかな君は」

「シオン様にしかしません!!」

「なおの事たちが悪い!!」

「そんな!? 私にシオン様以外を襲えと!?」

「そうは言ってないんですけど!? 何勝手に介錯してんの!? セクハラをするなと言ってるのボクは!!」


 渡されたワンピースを着ると、フェイメルにベッドに座らせられる。

 手には櫛のような物を持ち、丁寧にボクの髪を梳かしていく。


「はふぅ……」

「ふふふ。空気が漏れていますよ?」

「だってぇ……」


 地味にフェイメルがボクの髪を梳かしてくれるのを気に入っている。

 とても気持ちよくて、今まで考えていた事が全部どうでもよくなってしまうぐらいには。


「……ちょろいですね」

「ん? 今フィエメル何か言ったの?」

「いえいえ。お気になさらず〜。おほほほほほ」


 なにやら含みのある笑い方だったが今はよしとしよう。この至福の時間を味わうのだ。


  ◆


 少し時間がかかってしまったが、律儀にもマルクさん達は待ってくれていた。

 テーブルの上に並んでいたのは麦ご飯に山菜。そしていくつかの物が入ったスープ。

 これを見て一言。日本のご飯が恋しい……。

 麦はあんまり好きじゃないし、山菜は瑞々しくて美味しいけど、スープは少し薄い。

 わがままとか言わないで。根っからのご飯っ子だったんだから。

 そこまで考えて、くぅ。と音がボクのお腹からなる。そういえば昨日の夜ご飯を食べずに寝てしまった。

 お腹が鳴った事に少し顔を赤くしながらボクがうつむくと、向かいにいるマルクが苦笑した。


「ははは。どうやらシオン様は空腹のようですね。ささ、早く食べましょう」

「えぇ、そうしましょうか」


 その奥さんも微笑みを浮かべる。

 ともかく、少し恥ずかしいのでちゃっちゃと食べちゃおうとボクは手を合わせた。


「頂きます」


 ボクが挨拶をすると、ぽかーんとした顔で見られたがとりあえずは無視だ。空腹には勝てない。

 まずは山菜を口に運び、自然の味を感じる。あんまり味付けされてはいないけど、瑞々しさが残っている。うん、それ以外突起すべき事があまり無い。

 スープを少し口に含めば、味は薄く、野菜や少しのお肉の出汁の味。……出汁という文化が無いのかな。

 麦は言わずもがな。

 すべてがあまり美味しいとは言えないがそれで機嫌を損ねさせるのは少し困るので特に料理に付いては話すような事はなかった。

 おっかなびっくりでチラチラとこちらを伺うマルクに美味しくないなんて言えないだろう……。まぁ、美味しいとも言えないのだが。

 ともかく、料理から離れるためにフェイメルに話題をふった。


「そういえばフェイメル、昨日はどこ行ってたの? 朝までいなかったよね?」

「少し野暮用で。変な事じゃないのでお気になさらず」


 帰ってきたフェイメルはやけに肌がツヤツヤとしていて、まるで何かを堪能したかのような表情だった。

 まさか村の子供達で堪能していたんじゃなかろうか。一応、夜だから大丈夫だと思う。子供が外出しているような時間帯じゃないし。

 疑いの眼差しを向けてみると、にっこりとした笑顔でフェイメルは言い放つ。


「安心してくださいシオン様。私は浮気なんて絶対に致しませんから」

「あ〜はいはい」


 これ以上は聞いても答えてくれないだろうと考えて適当に流しておく。

 それにしても、前世と比べて食べる量がかなり少なくなったと感じる。修行中でもそうだったが、食べられないわけではないけれど少し食べるだけで空腹感が無くなり、次のご飯まで空腹を感じる事無く過ごせる。

 ご飯を食べ終え、ボクは手を合わせて「ごちそうさま」をする。

 するとまたもポカーンとした顔でマルクやソーマ、そしてマルクの奥さんが見てくる。もしかして、こっちの世界では無いだろうか。


「えっと、故郷の食への挨拶みたいな物でして」

「へぇ。シオンさんってやっぱり王都とかの出身なんですか?」

「そんな事は無いよ? 普通で一般的な平和な国だよ」

「へぇ……」


 ジト目でソーマに見られてしまったが何も間違いは言っていない。ただ、異世界から来たと言っていないだけで。

 食事を終え、食器を片付け……ようとしたら止められたのでボクは暇になり、何となく村というなの町でも回ろうかと思って村長の外に出た。

 まだフェイメルに出発すると言われては無いが、特にこの村にようも無いからすぐに出発すると思う。


 適当にぶらついていると、チラチラとボクの事を見てくる視線が増えてきた。

 はて? ボクは何か変な格好をしているだろうか。服は昨日と同じ服装であるとはいえ、ちゃんと綺麗にしたワンピースだ。

 まぁ気にしても仕方ないと考え、ボクはボクでこの村の観光と行こうかな。異世界に来て初めての村(?)だし。少しわくわくしている所もある。

 どんな物があるのか、期待に胸を躍らせながらボクは歩き始めた……所で声をかけられた。


「初めて見る顔です。この村は初めてですか? マドモアゼル」


 金髪にカールをかけたイケメンの男性がポーズを取りながらボクに礼儀正しいお辞儀を披露した。

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