第五話
結構執筆速度はバラバラで申し訳ないです(汗
「ここが私たちの村。アルハタです」
「へぇ、ここが……」
完全に日が暮れた頃、ボクたちがたどり着いたディーナ達が住んでいる村。というかもはや町と言っても良いじゃないかと言うほどに大きいアルハタは外を隔てるように丸太を積み上げられ、先を尖らせた丸太を登らせないように斜めに突き出させて塀が作られてあり、その外側に10mはありそうな溝が掘られてあった。
これは戦国時代とかであった防備などではないだろうか。門がいくつあるかはわからないが、そこにある吊り橋が上げられてあって、入れそうも無い。
だけど、これは空が飛べる魔物とかは易々と侵入を許してしまうのではないだろうか。
「これ、どうやって空から来る敵を守るの?」
「それはですね。中にある魔法壁を発動させる装置によって透明な膜が村全体に張られていて、門からしか入れないようになっているんですよ。どれだけ強い魔物でも、ここの魔法壁は王都並みに強いものですから大丈夫なんです」
ソーマが何やら得意げにこの村の魔法壁とやらを説明する。ここにくるまでにディーナ、ソーマとはそれなりに話すことができたのでかなり打ち解けたと思う。
その中でもソーマはこの村の村長の息子だそうで、村に一番詳しいとか。
「確かに、ここまで強度が高い魔法壁は王都以外ではほぼ見ませんね。これならドラゴン並みに強い魔物さえこなければ大丈夫でしょう」
にっこりしながらボクを見てくるフェイメル。
うん、言いたい事はわかる。山脈にドラゴンっぽい魔物居たね。何やら翼の膜が穴開いていたので飛べないドラゴンで、初めは変なトカゲだと思って出会い頭に首を斬ったりしていた。
後で聞いた所、フェイメルに地竜と呼ばれる種族だと教えてもらった。
つまり、ボクが力を出してあの薄く光る膜を殴ると破れると言う事か……。やめて、ボクは人間で居たいんだ。
「とりあえず中に入ろ、シオンちゃん」
「うん。でもどうやって?」
ボクがそう言った時だった。
何やら駆動音が聞こえ始めたと思うと、橋を上げていた鎖がギギギ、と音を立てて少しずつ下がっていたのだ。
「おぉ……」
「門番が居て、本来なら何の用で着たのかとか聞かれるんだけど、僕たちが居たので大丈夫だったみたいですね」
「へ〜。じゃあもし変な回答だったら入れてもらえないんだ」
「そうなりますね。ここは魔族領に近い事もありますから。少しでも警備は頑丈にするために入る前も一応検問は行うのですけど」
ソーマが説明している間に完全におりきる吊り橋。すると、門が開けられたと思ったらそこから男二人女一人の計三人の大人が走ってくるのが見えた。
そして、二人が同時に叫んだのであった。
「「(母さん!)(お)父さん!」」
なるほど。二人の両親だったのか。……あれ? ライナの親は?
背中に背負ったディーナを降ろしながら、ライナを見てみる。
だけどライナは少し顔をうつむかせたまま何も言わず、罰の悪そうにしている。
丁度そのときに両親がソーマとディーナへとたどり着いた。
「ディーナ大丈夫か!? 膝が……どうしたんだ!?」
「え、えぇっと……森で転んじゃって……」
「ソーマ! この時期に外に出ちゃ行けませんって行ったじゃないですか!」
「母さんを心配させるなど許さんぞソーマ。ちゃんと謝りなさい」
「ごめんなさい。母さん、父さん」
ひとしきり親が自分の息子、娘を心配した後にディーナ達がボクたちへと振り向いてきた。
「ライジングウルフの群れに襲われたときに助けてくれたの」
「「「ライジングウルフの群れ!?」」」
大人達がボクの事を見ると、何やらため息のような、苦笑まじりのような息を吐いた。
「あぁ、後ろの方? 女性なのにすごく強いんですね。私の娘を助けて頂き有り難うございます」
「え? いやそっちじゃ……」
ディーナが納得いかないと言ったような表情でいるがボクはまぁどっちでも良いかなって思う。
いやこんな齢10歳前半程度の見た目の幼子が無双するとかどこのチート人間だよ。ここに居るけどさ。普通は居ないわけで、普通の人ならそう考えるのが普通だろうし。
「それで貴女達は? 私はこの村の村長、マルクと申します」
「あ、ボクはシオンです」
「私はフェイメル。シオン様の従者で、旅をしております」
「あぁ、旅の御方でしたか。失礼ですが、一応規則ですので持ち物を拝見させていただいても? ディーナ達は中に入ってなさい」
「「はーい」」
村長のマルクと名乗った人物が三人を促し、先に村の中へと橋を渡らせる。
だがその前にライナだけ呼び止めた。
「あぁ、あとライナ君」
「なんだよ……」
「君のお母さんが心配していたぞ。ちゃんと謝るんだぞ」
「…………ふん」
何かあるだろうか。とぼとぼと去るライナの足取りがやけに重く感じさせる。
母さんが迎えにこなかったし、仲が悪いのだろうか。それはそれで心配だ。
「さて。シオン様、フェイメル様はこちらへ」
お願いだから様付けはやめて欲しいなぁ……。
村長に通された場所は門のすぐそばで、何やら丸い水晶に触れて欲しいと言われたので正直に触れる。
すると、なにやら白く光り輝き、目の前にステータスのような画面が出てきたのだ。
……ただ、文字化けしているのだけど。
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名前:※″≦
種族:°≧±‘◆
性別:‰
年齢:×※
レベル:″◆
==========
「これは一体……? す、すみません、もう一度お願い致しますか?」
なるほど、これは自分のステータスを表示させる奴なのか。とは言っても、もう一度やってみても同じ結果になるのではないだろうか。
そう思って手を離してからもう一度やっては見たが、案の定であった。
文字化けしたまま、内容を知る事はできなかった。
「こんな事は一度も……もしかして……。すみませんが、フェイメル様もお願いできますか?」
「えぇ」
ボクがどいて、今度はフェイメルが水晶の上に手を乗せると、ステータスが表示された。
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名前:フェイメル
種族:神族
性別:♀
年齢:(閲覧不可)
レベル:(閲覧不可)
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「し、神族!? もしかして翼があるのですか!?」
「えぇ、ありますよ。ほら」
フェイメルが背中を見せると、そこからは服の上からではあるものの、純白の翼が見えていた。
普段はフェイメルは翼をようで、ディーナ達の前では隠していた。ボクはまだ翼を上手く制御できていないので消す事ができない。
「ほ、本物だ……一体なぜ楽園から……?」
「いろいろと事情がありまして。あぁ、シオン様は人族ですので気になさらないでくださいね」
楽園とかボクの知らない単語が出てきたのだけど?
後で聞く事にしようと心に決めて、とりあえず中に入ってもいいのか聞いた所、村長が案内してくれると言う事だった。
「仮にも息子を救ってくれた恩人です。今日の所は私の宿にお泊まりください」
「それは助かります。シオン様、行きましょう」
「ん、わかったよ」
◆
私は気が気で無かった。
今朝目覚めたら息子がおらず、また三人でどこかで遊んでいるだろうなど思っていたために特に心配はしていなかった。
それに、今日は息子の友達であるディーナの誕生日だ。隣なだけあって良く知っているし、手伝う事があれば手伝ったりしている。
つまり今日のディーナの誕生会を行うために飾り付け等を手伝うのだ。そのために三人が外で遊んでいる事は都合がいい。
今日の分の仕事をなるべく早く終わらせ、ディーナの両親の元へと挨拶しに行き、飾り付けを手伝い始めた。
おかしいと思い始めたのは日が沈み始めた頃だ。
いつまでも帰ってこないソーマ達。ソーマには今日はなるべく早く帰るように昨日の内に言っておいた。
ソーマを約束を破るように育てた覚えは無いし、日が暮れ始めても帰ってこなかったのは今日が初めてだ。
だがそれはソーマだけではなかった。ディーナもそうだったし、いつも一緒に遊んでいたもう一人のライナも帰ってきていないと言う事だ。
気が気でなく村中を探し始めたが、どこにも見つからなくて途方に暮れていたのだ。
そのとき、門番をつとめていた男が急いで駆けてきた事に何か悪い事が起きたのではないかと思って焦りが生じた。
だがその内容がソーマだけでなく、ディーナ、ライナの姿と他二名が堀の向こう側に居るというではないか。
急いで向かった所、確かに息子だけでなく他二人も居た。焦る心を抑えながら吊り橋を降ろすように伝え、門を開けて走った。
私の悪い予感は当たり。ライナ達が無断で森に入っていたというではないか。
運良くディーナが足を怪我しただけですんでいて本当によかったと思った。下手をすれば命まで無かったかもしれない。
だが、それと同じくらい私たちが離している間待っていたソーマと似た年齢の女の子と、その後ろに控えている女性が気になった。
第一印象は、美しい。
高貴な金色の髪に意思の強そうなツリ目はどこかの令嬢を感じさせるほどで、着ている白いワンピースが高級ドレスを纏っているように感じた。
そして後ろに控えている女性は目立つ深紅の長髪をたなびかせていながらも、女の子を立てるかのように少し存在を薄くして静かにして佇んでいて、まるでメイドのようだ。
このような危険な場所にいていいような人物ではないかのように感じ、少し緊張する。
だが話してみればメイドのようなフェイメルと名乗った彼女の印象は変わらないまでも、女の子はまるで男の子のような話し方で、少し眩しく感じるもとても気さくに感じた。
驚いたのはその後だ。神族しか見れないというステータスなるものを表示させるドワーフが作った特殊な魔道具で彼女達を調べた所、何とシオンのステータスが表示されないと言った不具合が起こったのだ。
こんな事は初めてで、訳が分からなかった。今度これを設置したドワーフを呼ぶ必要がある。
そして、次に驚いたのはフェイメルの種族が神族だった事だ。
神族とは本来、楽園と呼ばれる浮島でしか生活していない所為で、一般人が見る事はほぼ無い。
言い方は悪いが浮島で引きこもり状態なはずなのが神族だ。基本平和を愛しているがために魔族と人間の戦争でさえ鬱陶しさを感じているようで、神からの天命とやらが無い限り絶対に降りてこないだとか。
そんな神族がただの人族だというシオンの事をシオン様と呼び、付き従っているなどあり得ない。神様を主としているが故に余計にそう思う。
まさか彼女が神などとは言うまい。一見上品な雰囲気を纏っているように見えても、話してみればなんと話しやすい女の子か。
だが神族である彼女が付き従う時点で普通の子ではない事は確定だ。天命を受けているのかもしれない。
私は彼女の事をできる限り支援して、失礼の無いようにすると心に決めた瞬間であった。




