なわばりあらそい?
お久しぶりです。
今、のんきに話している暇がありません。
私の目の前には海人族がいます。
思い切り戦闘中です。
生まれて初めての戦闘です。
海底洞窟に入ったはいいのですが海人族の方々に見つかってしまい、逃げ回りました。
そしてこの海人族の方が最後までしつこいのです。
青い肌に首には鰓が、手には水かきがついているのが海人族の特徴です。
水中戦では勝ち目がありません。
だからと言って陸上戦で勝てるわけでもありませんが。
「異物 排除 する」
確かにそうですね。
私はいきなり洞窟に入ってきた『異物』ですね。
でも私もここに住みたいのです。
昔から魔物は縄張り争いをして住処を勝ち取ってきました。
私にもそれがきたのです。
「ここ 俺 縄張り お前 いらない」
だったらあなたに勝ってこの縄張りをいただきます。
私は魔法を使えます。『アクア・シュート』と私は呼んでいます。
と、言っても近くにある水を浮かせて投げつける程度ですが。
しかし魔法があるというのはいいことです。
外敵から身を守ることに使えます。
弱いので威嚇程度にしかなりませんけど。
でもここは水が豊富です。
海人族の方には水で窒息させる攻撃が効かないのが難点です。
どうしましょうか。
私のもう一つのワザ『ストライク』をつかいましょうか。
これはいくつかやりかたがあります。
身体をぎゅっと縮めて相手に向かって突進する方法。
身体をびよーんと伸ばしてゴムみたいにバチンとぶつかる方法。
そして素直に突進して体当たりをする方法です。
今回は比較的ポピュラーな二番目のやつでいきます。
身体をびよよぉ~んと伸ばして、狙いを定めて、ストライク。
海人族の顔に向かって一気に飛びます。
当たったら痛いですよ。
「むっ とった つぶす」
反射神経が恐ろしいほどに高いです。
簡単にキャッチされてしまいました。
しかもつぶすといっています。
やめてください。
そう思いましたが、海人族は手に力を入れてきました。
私はまるでハンバーグを捏ねる時のようににゅるっと指の隙間からばらばらになって零れ落ちました。
しかし大丈夫です。
この程度なら再び合体してすぐに復活です。
スライムは簡単にはやられないのです。
乾燥しない限りはいつまでも不滅なのです。
今度はこちらの番です。
海底洞窟というだけあってあちこちに水があります。
なので『アクア・シュート』を使います。
私はしゃべれませんが、イメージするだけ魔法は使えます。
イメージすると水たまりの中の一番近くにあるものから水弾が浮かび上がります。
大きさは私と同じです。
それを海人族の顔にぶつけます。
間断なく投げ続けます。
しかし、さすがあの反射神経。
すべて手で叩き落としています。
でも水弾に意識が集中しています。
と、いう訳なので足にストライクしたら転倒させられるでしょう。
私はギュッと体を縮めて思い切り突進しました。
思った通り、命中しました。
海人族は転倒します。
そして私は首から上に張り付きます。
ここからは持久戦です。
私が剥がされるか、海人族が窒息するか。
海人族は私をつかもうとしますが、身体を薄く延ばしているのでつかむことはできません。
そぎ落とそうともしますがゼリー状の身体なのでにゅるっとすべります。
そして三分ほど経ちました。
まだ動きます。
いい加減ギブアップしてください
五分ほど経ちました。
そろそろ苦しくなってきたのかあまり動きません。
さすが水中慣れした種族です。
普通の人間ならとっくに気絶している時間なのにまだ抵抗します。
しかしここではなれるとまた復活するでしょう。
七分ほど経ちました。
海人族の方が地面を三回たたきました。
降参の合図です。
私は剥がれました。
するとぜぇぜぇ息をし始めました。
よほど苦しかったと見えます。
「おで 負けた ここ ゆずる」
やりました。
お家を獲得しました。
今日からここが私の住みかです。