からだのいろが?
おはようございます。
朝はちゃんとおきなきゃですよ。
私は寝ている間に食べられてしまわないように、岩の下にもぐっていました。
そこから出て川から上がります。
朝起きたらまずはおはようのお水をコップ一杯分くらいごくごく。
そして水面を鏡代わりに身だしなみを……あれ?
私たちの一族は身体は透明か薄い水色のはずなのですが……。
なぜでしょうか、私の身体が緑色になっているのです。
もしかして昨日の「回復薬」でしょうか?
スライムの身体はなんだって吸収してしまうのです。
だからそのせいでしょう。
でも、この色だとバブリーなスライムさんたちに怒られそうです。
この色は彼らの特色らしいので。
しかし、なってしまったものは仕方ありません。
それにこの色は毒がある色として知られているので食べられることもなくなるはずです。
そう考えるとお得じゃないですか?
そうですよね、そうですよ。
さて、今日は新しいお家をさがそうと思います。
私たちは暗くてじめじめした場所を好みます。
でも、水さえあればどこでも住み着いちゃうんですけどね。
丸石の転がる川原をぴょんぴょんと。
空は昨日と変わらず曇天です。
ここにはおひさまの光が届くことがほとんどないのです。
おひさまの光が届くのはここから西に行ったところにある、ドラゴンさんたちの住み処だけです。
変温動物なので彼らはおひさまのない場所には近寄らないのです。
だから私もあちらにはいきません。自分から危険なところに行く気はないのです。
ぴょんぴょん、ぴょんぴょん。
川原は跳ねやすいです。
砂がないから身体が汚れることもありません。
だからこのまま川原に沿って跳ねていきます。
身体が乾いてきたら川に飛び込みます。
でも、ここで気を抜くと流されるかもしれないので深いところにはなるべく行きません。
ぴょんぴょん、ぴょんぴょん。
跳ねていると大きな岩が見えてきました。
岩の下には袋があって、そこからみずみずしい葉っぱが覗いています。
ちょうどお腹が空いてきたのでいただきます。
もしゃもしゃ食べます。
袋から出ている分がなくなると、袋中に入って引っ張り出します。
そしてまた、もしゃもしゃと。
食べていると、ふと私の身体に影が差しました。
「チェストォォーー!」
振り向こうとしたところで、何か固いものが私を払い飛ばしました。
この程度はなんてことありません。
ゼリーの身体は衝撃の吸収率がいいのです。
昨日はひのきの棒で……と、いいましたが、あれは冒険の始まりの場所に住んでいる方たちのことです。
「なんでスライムが薬草食べてんのよ!」
叫び声のしたほうを向くと、背中に翼と尻尾のある女の子がいました。
竜人族と呼ばれている方々で、凶暴だと聞いています。
そして炎をよく扱うとも。
しかし、彼女は片手に持っていた、棒の先に斧と槍がついているようなものを振り上げました。
まるでゴルフのスイングの構えです。
これはもしかしなくてもショットされます。
「フン!」
私はそれをかわします。
親戚には灰色の身体でとても素早いかたもいるのです。
私だって負けませんよ。
再び振り上げられて、それが振るわれます。
私は身体を平たく伸ばしてかわします。
「このぉ……」
今度は振り上げませんでした。
まるでパターでフルスイングするような構えです。
これはどうしようもありません。
「吹き飛べぇぇっ!!」
ばごっと音がして、地面ごと私は空に舞い上がりました。
まずいです。
このままではちょうど川の真ん中に落ちてしまいます。
引っ付くものがなければ、そのままどこまでも流されてしまいます。
ぼちゃんっ!
ぶくぶくぶくぶく……。
大丈夫です。
スライムは呼吸する必要がありません。
でも、ながいこと水の中にいると溶けてしまうかもしれません。
ぶくぶくぶく……。
こうなったら流れに乗って行けるところまで行きます。
それでは今日はおやすみなさい。