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ふぁみりーかいめつ?

吾輩はスライムである。名前はまだない。

生まれも育ちも、ここ、魔界のニブルヘイム横町の一丁目の地下深くにある下水道のそのまた奥の……。

とにかくそんなところだ。

だいたいこの場所にそんな住所なんてない。

言ってみたいから言っただけである。


今日は生まれてから? いや、分裂してからようやく一週間だ。

この一週間を乗り切ると大抵の魔物は自力で生きていける程度には耐性がつく。

耐性がないとすぐに病気にかかるし、人間の攻撃にも耐えられない。

でも、そんなことを言っても私たちスライムは最弱の存在。

ひのきの棒でぽこんと叩かれただけで倒されてしまうのだけど。


だからスライムは成長すると自分の意志で分裂してどんどん増える。

母体はとても大きくて、家族もたくさんだ。

そろそろ狭くなってきたこのお家から引っ越すらしい。

このじめじめした暗くて静かで涼しい洞穴の中から。


母体を先頭にぴょんぴょん跳ねてみんなが移動する。

移動の前にはしっかり水分を補給しないとね。

スライムは乾燥すると休眠モードになって、そのまま乾燥すると寒天みたいになってしまう。

でもそうなったとしても水を吸えば元に戻る。みんなこうやって乾季を乗り切るんだ。

それでも、たまに水が吸えない時があって、その時は、もう……。


いやいや、そんなことは考えない。考えちゃいけない。

みんなもう出て行っている。このままじゃおいていかれてしまう。

私も思いっきり跳ねて、じめじめの快適な洞穴から出た。


外は乾燥した空気で、空は曇天。

それでも雨はたまにしか降ることがない。

ここの天気は少しおかしい。

昔は氷に閉ざされた大地だったらしいけど、神様とそれに刃向った人間の戦いで変になったのだとか。


砂と石ばっかりの、ざらついた地面を跳ねる。

一回飛ぶたびに身体に砂が混じる。

ああ気持ち悪いなぁ。


□□□


小一時間ほど跳ねていると人間に遭遇しました。

杖を持った男の子と、本を持った女の子です。

全体攻撃の呪文を覚えた魔法使いなら私たちの天敵です。

イ○とかギ○で薙ぎ払われたらひとたまりもありません。

しかしそれがないのなら物量押しでいけます。

魔法使いは防御力が低くて体力が少ないと聞きました。


「な、なんでこんなところにスライムが?」


男の子は杖を構えたまま私たちから離れました。

でも女の子は、


「焼き尽くせ、フレイム!」


呪文を唱えました。炎が円を描くように放たれて、だんだん迫ってきます。

私たちスライムにとって乾燥する攻撃は大ダメージです。

みんなのゼリー状の身体が溶けて、どんどん萎んでゆく中、私は逃げまどいました。

偶然見つけた炎の切れ目。

そこから飛び出します。


「う、うわっ! こっち来た!」


なんたることか、杖を持った男の子の前に飛び出してしまいました。

しかし男の子は慌てていたのか呪文を唱えずに、片手に持っていた小瓶を投げつけてきました。

小瓶は私の少し手前に落ちて割れて、液体が私にかかりました。

その液体の色は緑色でした。

人間がよく使う『回復薬』というやつです。

私は男の子が慌てているうちに必死に跳ねました。

ぴょんぴょん跳ねて、跳ねて、跳ねて。

やっと小さな小川にたどりつきました。

家族は誰もいません。

私たち魔物にとってはよくあることです。

魔物が増えすぎると危ないから倒す、これが人間の考え。

人間は増えすぎると厄介だから倒す、これが強い魔物の考え。

そして弱い魔物は人間に怯えながら毎日を過ごすのです。


今日はこの小川の中で川底に潜って眠ります。

おやすみなさい。

プロットがあるにもかかわらず執筆速度が鈍ってきたので書きました。

悪循環です。でもいいんです。

「遥か異界で」のプロットから抜き出してスライム視点で書いていきます。

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