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一話「日常描写」

続編です。初代よりⅡのほうが探索要素が強かったりします。

 「それで? ハネムーン(いちゃいちゃ旅行)はどんなだった?」

 「うるさいわねー」


 居酒屋AQUAの店内にて、そんな会話をしている一団が居た。





 『Diver's shellⅡ』





 第一話 「日常描写」





 なんだかんだといって、飲み会は盛り上がるものだ。

 その場に居る全員が下戸で吐いてしまうというのはありえない。その場に居る全員が泣き始めるのもありえない。それに、酒の力は普段言えないこともさらりと出してくれる、まさに加速装置なのである。


 ビールジョッキを持っているのは金髪眼鏡のユトと、服の上からでも分かる激しい凹凸な体に黒と青を足した色のクセッ毛を腰まで垂らした女性……クラウディア。

 クラウディアの隣には顔を真っ赤にして酒を呷る黒のショートカットのジュリア。一人ちまちまと赤色の飲み物を飲んでいるのはポニーテールのメリッサだ。


 席は、ユトとメリッサが隣同士で、向こう側にジュリアとクラウディアがいる状況。

 夕方時の飲み会。

 ユトとメリッサのダイブ仲間であるジュリアとクラウディアの計4人は、それぞれが好きなものを注文し、古臭いテーブルの中央に置かれたツマミを突きながら談笑していた。

 独特な臭気と熱気に満ちた店内には、客の笑い声や、泣き声、食器が立てる賑やかな音が作り出す喧騒に包まれており、油の臭いや、タバコの臭いと相成ってなんともいえぬ空間を形成している。

 話題を逸らそうとしたメリッサに、酒に酔ったジュリアが顔を接近させた。

 両手で赤色の飲み物をちまちまと飲んでいるのは、普段の快活で強気なメリッサには似合わないのだが、酒の効能とは違う意味で顔を赤らめているのは可愛らしくもある。

 ユトとクラウディアは、競争するようにジョッキの中のビールを空にした。いくら呑んでも大丈夫な人種なのである。

 メリッサは、ちらりとユトを見遣ると、不機嫌そうに鼻を鳴らして、コップに口をつけた。中身が半分近く無いのに酔った風ではないのは、酒ではないからかもしれない。

 対するユトは、顔を赤くするでもなく、ワザと聞こえなかったように装って料理を摘んだ。


 「なんにも無かったわ……よ」

 「嘘つけぇ~……あったンだろぉ~……とってもあったんだろぉ~?」


 酔った中年親父のようにネチネチと質問してくるジュリアに、強気に出ることも出来ずに視線を逸らし続けるメリッサ。その様子を、クラウディアとユトが横目で観察している。

 と、魚のから揚げを一つまみ口に放り込んだクラウディアが、思いっきり口の端を上げて悪戯っぽい笑みにて質問をした。ユトの顔がたちまち引きつる。これはヤバイと本能が告げてきたのだ。


 「感想は?」

 「へ?」

 「へって、感想♪ 旅行行って、泊まって、………んふふふ……その、感想はっ?」

 「いい……宿でし」

 「分かってるクセにぃ♪ 吐けばラクになるよん。イッちゃえイッちゃえ♪」


 ユトの頭が真っ白になった。いつの間にかテーブルにあった並々注がれたビールジョッキを一口飲む。苦味がしっかりとした答えをだしてくれると思ったがそんなことは無かった。


 ……そう、ユトとメリッサは結婚したのだ。


 その証拠に二人の指には指輪が光っている。結婚したから、旅行というには距離が余り無いが遠出をして遊んで帰ってきた。そのことに関して言っているのだ、ジュリアとクラウディアは。

 ユトは、黙秘に入ったメリッサとは違って、酒を飲んでいるという事実と、突然話を振られたことで動揺してしまったわけで。


 「お、思ったよりやわらかがあががががいたたたた……!!??」

 「余計なこと言わないでよっ!」



 ガッ!  ぐぐぐぐぐ めりめり。


 ユトの足にメリッサの靴の一番固い部分がロケット弾よろしく凄まじい勢いで突き刺さった。

 痛いのか、痛くないのか、正解は激痛であった。顔面をテーブルに叩きつけて悶絶するユト。メリッサは、ふんっ、と鼻を鳴らし、顔を隠すように合成イチゴジュースを呷った。ちなみにめり込ませたまま。

 クラウディアとジュリアの気味が悪い程輝く笑みが二人に向けられる。同時に二つのグーサインが突き出された。


 「おめでとう♪」

 「おめでとう♪」

 「あ゛――ッ! うるさいうるさいアンタらちょっと黙っててよ!」

 「足が足がぁ!?」

 「あっ、ゴメン」


 踏みつけたままでは痛かろう。「ギブギブ」と連呼してテーブルを叩いている。メリッサは、我に返って足をどけた。

 思わず、大丈夫痛くなかったごめんね、と声をかけたが運の尽き。

 ジュリアとクラウディア二人の笑みが止まらなくなりはじめ、一人突っ伏して悶絶状態のユトと両手をわたわたと振って否定しようとするメリッサの姿が居酒屋に流れることになったとか。








 「――――………?」


 眼が覚めた。


 昨日の宴会の余韻はすっかりと消えていた。幸いなことに二日酔いにはならなかったようだ。

 瞳を開けたジュリアは、今自分がどこに居るのかが分からないという顔で口元の涎を拭うと、この上ない倦怠感に顔をしかめながら首を動かした。


 夏の終わり。


 あろうことか潜水機の格納庫の中で寝てしまっていたようだ。

 背面部スラスターの分解整備をしていた記憶があるのだが、途中で意識が消失してしまっている。


 上はタンクトップで下はホットパンツという軽装備にて、彼女は身を起こした。体の起伏に乏しいのでタンクトップでも凹凸が目立たないのが悲しい。その分肉食獣にも似た引き締まった肢体がある。

 コンクリートの地面に体を丸めて寝ていた影響だろうか、間接やら手やら首やらが痛む。

 目の前にどっかりと鎮座しているスラスターを確認してみると、組み立てまで終わっていた。憶えていないが整備してから眠ったのだろう。

 体から埃を叩き落し、寝癖のついた黒髪をかきあげながら立ち上がる。

 腕時計へと眼を落とすと、まだ朝早いことが分かった。クラウディアが起こしにこないのはいつものこと。自堕落が常なクラウディアが起こしにきてくれることを期待するほうが変なのだ。

 朝食を作るにしても早すぎる。


 ジュリアは、眼を擦りながらポケットからタバコの箱を取り出そうとしたが、全て残らず吸い尽くしていることを思い出す。

 実のところは禁煙中だったのだが、どうにも我慢が効かなくなってついこの前再開していた。


 「……ちっ」


 舌打ち一つ漏らせば、乾いた唇を舌で湿らせながら格納庫から出て行く。


 全体的に散らかった部屋を通り、リビングにでると、毛羽立ったソファーで死体のように眠っているクラウディアがいた。

 顔は体液で酷い有様であった。ふっと鼻で笑うと心の中で言う。

 涎と涙を拭け。


 無視して家の外に出る。

 鳥が鳴いていた。群青色の空に白い雲が千切れて浮かんでいる。

 鉄製の扉を開くと新鮮な空気が家の中へと流れ込んでくる。涼しい大気を肺に収めつつ、家の直ぐ前に迫る埋め立てで造られた海岸へと歩み寄り、海面を覗き込んだ。木やらなんやらがコンクリートの岸壁に集まっていた。

 脳か、心か、肺か、どこかがニコチンを求めている。タバコを吸っている人間にはニコチン欠乏は非常に厳しいことなのだ。


 ジュリアは家の前のコンクリートの道路を歩いていき、スクラップを売っている店の前で足を止めた。ガラクタの隙間に椅子があり、仙人を思わせる風貌の老人が座っている。その手にはタバコの箱。

 ちゃりん。無言でお金を渡し、タバコを受け取る。仙人は小さく頷きながら店の奥へと消えていった。ちなみに名前は知らない。見事なハゲ頭が印象的な老人である。

 タバコのパッケージを開け、とん、と叩いてタバコを一本せり出させると、唇に引っ掛けるように銜え、ほぼ自動で出していたライターで先端に火を灯す。タバコを指先で安定させ、煙を吸い込む。冷蔵庫の冷気が肺に流れ込むような感覚がした。


 「止められないよなぁ……」


 岸壁へと足を進め、そこに腰を降ろす。ぶらぶらと足を揺らしながら地平線を眺め、やっとのことで明るくなってきた空へと視線を当てる。

 タバコをすーと美味しそうに吸ってはーと煙を吐き出す。濛々とした白い紫煙が顔を包み込む前に潮風に流されてどこかに消えていった。

 首を後ろに回して仙人の家を見る。ガラクタを集めてガラクタを売っているといったところか。耐震強度が心配でならないほどにボロく、店先にぶら下がっている「商売繁盛」の紙が哀愁を誘う。


 旧都市区の端の端に彼女の家はある。

 開発から取り残されて老朽化が進む街であるが、彼女はここが気に入っている。整然と並ぶビル群や、ゴミ一つ落ちていない清潔過ぎる道路はどうにも生に合わないのだ。

 無論、海に面している方がダイバー家業には有利というのを知っていてである。

 物事を考えるにはまだ鈍い頭で考え事をしながら紫煙をふかす。岸壁に腰掛けたまま猫背になって、両手を顎において海の向こう側を眺め続ける。決して長くはない髪が海からの風に揺られている。

 足音が耳に入ってきた。振り返ってみると、知り合いが一人、佇んでいた。タバコを人差し指と中指で挟んで持ち上げながら挨拶をする。


 「朝早くから暇だなー、お前」

 「そっちこそ暇じゃないですか」

 「敬語はいいって言ってるのに律儀な男だな」


 灰色の長めの髪、中肉中背、中性的な容姿の青年が、買い物袋を片手に立っていた。

 ジュリアのタバコを見るや目が細くなる。すっ、と青年の指が伸びて、ジュリアの指に挟まれているタバコを指し示す。


 「禁煙したはずでしょう?」

 「うっさいなぁー……いんだよこんなの。死ぬわけじゃあるまいし」


 ジュリアは、タバコを持っていない方の手をパタパタと振ると、タバコを銜えなおして思い切り煙を肺に補給して、海に投げ入れると見せかけて携帯灰皿にねじ込んだ。


 青年はまるで教師のように説教をし始める。曰く、タバコは健康にどうの、曰く、少しは忍耐を、等。どれもこれも聞いているだけで嫌になるので、曖昧に頷きながら時間が経過するのを待つ。

 青年もジュリアが話を聞いていないことに気が付くと、溜息を吐きながら首を振って、やや距離をとって岸壁に座り、両脚をぶらぶらとさせ始めた。


 「ブルー」

 「ストリートって続けたら海に放り込むぞ。名前で呼べばいいのに。ジュリアでいいよ。ジュリでもなんでも」

 「いえ、でもほら、ねぇ………」

 「私がオルカって名前で呼んでるんだから、いいんだよ。なぁオルカ」

 「………むむ……。ジュ、ジュリア」

 「よし」


 ジュリアが相手の名前を呼ぶと、青年……オルカ=マクダウェルは、動揺を隠せずに視線を明後日の方向に流した。ジュリアは爽やかな笑みを浮かべてオルカの肩を叩く。


 二人の関係を端的に言うと、『幼馴染』である。子供の頃によく遊んだ仲で、途中で逢えなくなり、つい最近再会したという、どこかで聞いたことがあるありきたりな関係だ。

 その所為か、あだ名で呼び合っていた仲だったのに、オルカは名前で呼ぶことを恥ずかしがっているのだ。恐らく。これはあくまでジュリアの主観だ。真実はわからない。

 オルカとジュリアは暫くの間のんびりと地平線を眺めていたが、いつまでも居るわけにも行かないわけで、ほぼ同時に立ち上がった。ジュリアが腕時計を見ると、驚くほどの速さで時間が進んでいた。

 ジュリアがオルカの買い物袋を指差した。


 「それは孤児院の?」

 「ええ。ちょっとした備品です。注文していたのが朝一に届いたと聞きまして」

 「暇じゃなかったんだ。意外だ」

 「分かってて言ってました?」

 「もっちろん」


 袋はさほど大きくはない。電球か、日用品か、その程度だろう。オルカは袋を視線の高さまで上げて見せた。

 ジュリアは頷くと、自宅のほうへと足を向けつつ口を開く。


 「ふーん……頑張れよ―――……じゃなくて、またそのうち顔を覗かせるわ。その時は掃除でも料理でも修理でもコキ使ってくれてもいいや」

 「期待して待ってます」

 「じゃあな」


 オルカは、岸壁に立ち並ぶ店や家の隙間に無理矢理確保されたかのような小道へと姿を消していった。あの先には孤児院がある。慣れた者には迷いようが無い道なのだ。


 ―――……孤児院。


 周囲の人間は余り知らないことなのだが、ジュリアとオルカは孤児院出身である。と言ってもオルカが今勤めている孤児院ではない。もっと遠くの場所にある孤児院だ。

 孤児院を出て直ぐにジュリアはダイバーになるために修行して働いて、今がある。オルカは孤児院に居るうちに任されるようになり、他所の孤児院に移って今の場所に居る。

 最も、孤児院出身だからどうというわけではない。肉体的、精神的にも極めて健康なのだから、何をやるにしても問題にはならない。

 オルカが居なくなってはやる事も無い。タバコを吸ったからニコチン補給は十分だ。となると、同居人を何とかしないといけないであろう。放置しておくとどこまでもだらける人種なのだ、クラウディアは。


 ジュリアは、朝食とか掃除とかをどうしようかと考えながら、朝日を尻目に家に帰っていった。






 このまま夕方まで眠り続けるのではないかという勢いで惰眠を貪るクラウディアを起こし、朝食を作り、掃除洗濯を高速で済まし、二人は仕事に取り掛かっていた。


 二人の仕事と言えばダイバーに他ならない。


 潜水機の整備作業は最低限の部分で終了している。遺跡の資料を纏めるのも終わっている。情報収集なども大丈夫。となると、引き上げたものをなんとかしなくてはならない。


 遺跡から引き上げられるものを分類すると、主に二つある。

 『分かっているもの』『分からないもの』だ。

 あまりに大雑把な分類であるが、そう思っても特に問題は無い。


 ここは格納庫兼作業部屋。潜水機が天井から吊り下げられ、各所を拘束具で支えられるように立っている。作業することのみを考えてか、飾り気が無い。

 頑丈そうな手袋を嵌めたジュリアは、タンクトップの肩掛けがズリ落ちそうになるのにも気がつかずに目の前の物品を観察していた。部屋の隅にある作業机では、クラウディアが円盤状のなにかを専用の機械で調べている。


 「もー、わかるわけないじゃーん!」


 解析機に金属製と思われるフリスビー程度のソレを入れても何一つ分からない。ただ頑丈な金属であるというのは分かるが、内部構造だとか、なんの為に造られた、とかが分からない。


 ―――アンノウン(わからん)。

 ―――アンノウン(なんだこれ)。

 ―――アンノウン(知らん)。


 クラウディアは、最後の円盤の解析結果が出るや、機械の電源を落として椅子に座って大きく伸びをした。

 ジュリアも、机の上に置かれている謎の文章が刻まれた薄いプレートから眼を離すと、手袋を放り投げて椅子に腰掛けた。

 円盤の解析結果は『不明』。情報記憶媒体の可能性もあるが、解析できない。薄いプレートに関してもそうだ。コンピューターの専用ソフトを使ったところで一文字も読めない。

 この二つの品も例によって専門家に売るか、クズ値で闇市辺りで叩き売るしかない。

 まぁ、『この』二つが大したお金にならなくても、既に二人は十分元を取れるだけのモノを引き上げてきている。

 それにである。

 二人には他のダイバーにはない『ルート』があり、こんなシロモノでもお金に変換することが出来る。

 ジュリアは、目頭を揉み解しつつタバコを口に咥え、かちりと音をさせてライターの火を移した。白い煙が格納庫に広がる。


 「ジュリアー。次潜るのいつだっけ?」

 「え……、あぁ………一週間以内には行きたいんだけどさぁ」

 「でもさ、この子結構疲れてると思うんだよネー。一回全部バラしてほうがいいんじゃない? スラスターだけじゃおっかないもん」

 「メンドクサイ。凄く面倒」


 二人は椅子に腰掛け、背もたれに体重を預けながら会話をし始める。

 クラウディアの眼が格納庫中央にある潜水機を捉えた。


 潜水機『ハルキゲニア』。


 ジュリアの師匠から譲り受けた潜水機の素体を元に、やれ高性能センサーだ、とか、やれ補強装甲だ、とか、ライト、とか、ごちゃごちゃと取り付けた機体である。体の所々からセンサーやライトが飛び出して不恰好。十字型のモノアイも不審さを増長している。

 ついこの間潜ったばかりで、スラスターの整備程度なのに、一週間以内に潜る。万が一故障箇所があったまま潜航したら眼も当てられない。だから、クラウディアはそう言ったのだ。

 背面部スラスターの整備を終えたばかりなのにこれでは困る。施設こそ整っていても結局人の力で整備するわけで、疲労は溜まっていく。

 ジュリアは嫌な表情を隠すでもなくタバコを吸い、たっぷりと肺に押し込んでから机の上の灰皿に押し付けて消火した。じゅっと音がした。


 「んにゃー私がやっておこうカナー? その間オルカ君と遊んでればいいんじゃない?」


 ふとクラウディアの方に眼を向けてみるなら、無意味に笑みを浮かべて楽しげな表情を見せている姿がある。ジュリアには、話でオルカが出てくる理由を今ひとつ理解出来なかった。

 眉を寄せ、口元を指で撫ぜる。


 「クラウディアが全部やるって? 悪いモンでも喰った?」

 「酷いわ……そんなにおねぇさんが信じられないなんて……」


 しくしくと泣く真似をしながら椅子の上で体を丸めるクラウディア。特徴の一つの青黒クセ髪がしなやかな肢体を覆い隠す。髪の隙間から豊かというより大きすぎる胸が服を圧迫しているのが見えた。

 未確認飛行物体が空を通過した後に登場した自称超能力者を見るかのような胡散臭さ満載の眼がクラウディアに注がれる。目的も無く整備を引き受けるとは思えなかったのだ。

 すると、クラウディアは泣き真似を、見てるこっちが噴出するほど素早く怪しく止め、片目を瞑って舌を出して親指を上げてくる。意味が分からないにも程がある。首をカクカク動かすのも意味が分からない。


 「行ってきなさいな。わたくしがなんとかしておきますわよオホホ」

 「………」

 「うふふんだいじょーぶ、整備技術持ちの知り合い呼ぶからん♪」


 喋り方が不審者丸出しである。口調が安定しないとかそんなレベルではなかった。普段からこんな調子のクラウディアだが、今日もエンジン全開であった。ついでにアホ毛のノリもいい。

 やれやれ。

 ジュリアは疑問と、納得の行かない顔をしつつも、その話に乗ることにした。頷き、クラウディアに整備を任せることにする。


 ――そうだ、オルカの居る孤児院に行ってみよう。

 そう考えた彼女は、明日にでも行こうと、格納庫の中を片付け始めた。

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