第三夜/前編
日が経つごとに増えていく、被害者。原因となっている蝶を倒そうという話が一同の中で持ち上がったため、実際にあの街へ行ってみるものの、見つかるどころか気配すら感じられないという結果に終わったのであった。
「うひゃー、ダメだったねー。他に方法考えなきゃ!」
なぜか満面の笑みで言うタルネスに、タルテナは溜息をつく。もちろん、アルエたちも同様に溜息をついた。
「タルネス、後半のほう遊んでた。」
「タルテナ、僕は遊んでなんかいない。タルタルコンビの名に誓って否定するよー。」
タルテナは怪訝そうな顔をしつつ、じゃあ何してたの、と聞いた。タルネスは一瞬ピタッと動きを止めたが、すぐに動きだし
「何してたんだろー、忘れちゃった!」
と、しらばっくれた。この発言には一同唖然。なんとなく空気を読んだタルネスは、両手を合わせて素直に謝る。だが、そんなタルネスを無視して、アルエたちは会話を進めていく。
「どうしましょう?根本的な原因がわかっているというのに、退治すらできないなんて」
と言って、街の景色を見渡しながら落ち込む、サーチェ。他の仲間たちより落ち込むのは、この街が光夜蝶と呼ばれ始める前、住人の一人として住んでいたからだ。
「蝶にね、限りってあるのかな?」
タルテナが唐突に投げかけた言葉に、ワズルフが冷たく返す。タルネスはというと、なんで無視するんだよー、などと叫んでいた。
「恐らく無いだろう。人間が存在する限りな。」
タルテナは、そっか、と小さく呟くと、口を閉じた。サーチェは黙ったまま、ワズルフの言葉に耳を傾けていた。リゼルは意見が同じなのか、うんうんとうなずく。
「でも、これ以上は被害を出すわけにはいかないですわ。」
アルエは少し歩く。不意にくるっと後ろを向いたかと思えば、可愛らしい笑みを見せ、
「だからこそ、私たちが止めましょう?この街を、光夜蝶なんかの好きにさせるなんて許せないですもの。」
一同、大きなリアクションは見せないものの驚きを隠せないといったような表情を見せた。そんな一同を見て、アルエは不思議そうに首をかしげる。
「アルエ、変わったよねー!何かあった?」
タルネスが少し嬉しそうな表情へと変えた。それにつられてか、アルエ以外のみんなが微笑む。
アルエは、数秒ほど考えて首を横に振って、空を見上げ言った。
「簡単にお約束なんてするからいけないんですの。守れないお約束などするだけ無駄ですわ。」
空を見上げたまま続ける。
「はっきり言って、制限時間に支配される人間たちに興味などありませんわ…。ただ、支配された人間たちが増えれば増えるほど、関係のない人たちが巻き込まれるのが辛いだけですの。」
言葉だけでは感情が読みとれない。だが、空を見上げているアルエの顔は、どこか寂しそうだった。