第二夜/前編
会議室のような部屋で、少女と男の他に四人の男女の姿。それぞれ真剣な眼差しで三対三のような形で向かい合っている。
「また被害者が。ここ最近、異常なまでの増加ですよ。光夜蝶が心配です。」
眼鏡を掛け、胸の辺りまでの長さがある赤茶色の髪を三つ編みにして結ぶ女が言うと、少女の横に座っていた男がニコッと笑って
「サーチェちゃん、いっそのこと俺と蝶退治でもしに行っちゃう?」
人差し指を立てウインクまでする男に対し、深く溜息をつくサーチェ。半ば面倒くさそうに、こう言った。
「リゼルさん、退治するのは結構なことです。どんどん殺っちゃってください。でも私は行きません。リゼルさんと行くぐらいなら、ワズルフと行ったほうが数百倍マシですから。」
今まで立っていたサーチェは席につく。リゼルは、ひゅーっと口笛を鳴らしたかと思えば、つれないね、と諦めたように一言。ワズルフは何事もなかったように目を閉じているだけだった。
「あの、一つ…質問。」
ワズルフの隣で小さく手をあげ弱々しく発せられた声が聞こえ、一斉にそちらを向く一同。だが、その光景に声を発した本人が怯えてしまい、みんなから目を逸らして何も喋らなくなってしまった。
「みんなー、怖がらしちゃダメじゃん。タルテナも、いちいち怯えない。いい?」
タルテナを宥めるように頭を撫で、言った女。一同は、それぞれ短い言葉で謝罪をしていく。タルテナは落ち着いたのか、頭を撫で続けている女に小さな声で、ありがとうと伝えたあと、恐る恐るみんなを見渡し、口を開いた。
「タルたちがやってること、人殺し…なの?タルはね、助けたいって思いながら…いつも制限時間に支配されてしまった人たちを死へと導いてる。でも、結局は助けてあげられてないんじゃないかなって…」
一同、それぞれ顔を見渡して黙った。タルテナにどう応えたらいいのかわからないと言いたげな表情を浮かべて。
「あの蝶たちとお約束したのは、制限時間に支配された人間自身ですのよ?」
今まで黙っていた少女が静かに口を開いた。そして続けるように口を開く。
「己の願いを叶えるために自ら命を捨てるといった愚かな契約…をね。」
不適に笑みを浮かべる少女に、一同は言葉を失っていた。