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悪役令嬢たち

ごきげんよう、悪役令嬢ですわ!只今わたくしの体が絶賛ドアマット中ですわ!

作者: つゆこ
掲載日:2026/02/09

 ごきげんよう、幼女ですわ。7才ですわ。

 何が起こったのかありのままに話しますわ。

 今、唐突に突然にわたくしの体が乗っ取られたのですわ。


 何を言っているのかわからないと思いますけれどわたくしも現状をどう説明したらいいのかわからないのですわ。


 どういう理屈なのかは存じませんけれど、今、まるでわたくしが背後霊? とやらになったかの如く眼前に乗っ取り小娘に乗っ取られたらしきわたくしの体がわたくしの意思に反して勝手に動き回っているのが見えるのですわ。

 その上なんか小娘の考えている事? 脳内の情景? 潜在意識? か何かが怒涛の様にわたくしの方にも流れ込んでくるのですわ。

 ちなみに今正にわたくしの体を乗っ取った乗っ取り小娘は現在泣き言を延々とぴーぴー喚いていてうるさいですわ。


 ‘’あくやくれいじょう‘’……ってなんですの?

 悪役? の令嬢?

 悪役ってどの視点からの悪役ですの?

 ‘’しゅじんこう‘’? ……主人公……ってなんですの? 誰もが自らの人生の主人公ですわよ?

 つまりわたくしも主人公ですわ。

 なのに何かこの娘の言うところの‘’しゅじんこう‘’ってやつは意味合いが……そう、‘’にゅあんす‘’? とやらが違うのですわ。


 つまり、悪役令嬢とは物語の中で悪役にされた令嬢のこと?

 うーん。よく分かりませんがそれがどうしてわたくしを指すんですの?

 わたくし悪役になった覚えはありませんのことよ。

 え? これからなるですって?

 えぇー……。

 つまりやってもないことで今決めつけられてる?

 えぇえ〜……。

 微妙〜な気分ですわぁ〜。

 なんで見ず知らずの他人に一方的に決めつけられなきゃならないんですの?

 納得いきませんわ〜。

 理不尽ですわ〜。

 しかもそんな事を考えてるよくわからない小娘にわたくしの体は現在進行形で乗っ取られておりますし。

 理不尽ですわ〜。

 神も仏もないのですわ〜。







 ごきげんよう、幼女は卒業いたしましたわ。10才ですわ。

 何が起こったかありのままに話しますわ。

 王子と婚約させられましたわ。


 あれから、まぁ色々ありましたけれども、乗っ取り小娘にはどうやら背後? に居るわたくしの存在はまったくもって欠片も伝わっていないようですわね。色々と勘違いをしたまま今日も元気に突っ走っておりますわ。わたくしの目の前? で。


 しかしこの乗っ取り小娘。

 3年もの間滔々と眺めさせられて最早確信に至りましたけれどもなんというか、よく言えばひっじょーに奥ゆかしい、わたくしのものさしで言えばもんのすごく卑屈で臆病で小心者の小者なのですわ。

 見ていてイライラしますわ。

 で、王子様との婚約なんですけれども。

 王家主催のお茶会に家族総出で出席したその日の内にお父様に話を持ってこられた傍から挙動不審を最大限に発揮し、ああぁあー、そんな、流される様にお父様の物言いに言いくるめられてしまってちょっとお待ちなさい今の情勢をわかってないんですの?


 そこは! 断固拒否! 一択でしょうがー!!!


 まあ、そりゃあ家格の高さ故かいずれは王子妃になっても恥ずかしくない様にと教育だけは受け始めておりましたけれども、その内容を鑑みるに今の情勢でそれは悪手ですわ。もんのすごく面倒な立場になるのですわ。

 お父様なんて結局わたくしには甘々なのですからちょっと断固としてわがままを言えばよかったのですわ。

 何を提示された中からなんだかんだ選ぶなんてぬるい事をやっておりますの! そんなもの一切合切全拒否でよかったのですわ!

 だいたいお茶会にはお父様の言うところの複数の婚約者としての候補がもろもろ出席していたのですからせめて他の相手もおりますでしょうに、なぜよりによって選ぶのがこいつですの?!

 そりゃあ王子だけあっていかにもザ・王子様な見た目をしておりますけどぶっちゃけ見るからに性格が悪そうなのですわ……。

 そう、わたくしには判りますわ。なんか態度とか行動一挙手一投足に至るまでがそこはかとなく偉そうというか隠しきれない底意地の悪さが滲み出ているのですわ。

 乗っ取り小娘の故郷で言うところの地雷物件というやつですわ。


 だってこの王子、お茶会での初顔合わせ初対面の時……!

 わたくしと顔を合わせた開口一番のセリフが、


『お前が俺様の婚約者候補か……ふん(鼻で笑う)……俺様の方が美人だな。ハッ(鼻で笑う)』


 とか連続で鼻で嗤いやがりましたのよー!

 はぁぁぁぁ?!!

 ‘’むかちゃっかふぁいやー‘’ですわー!!

 わたくしだってこれ以上なく美人ですわよ?!!

 こんな野郎には負けませんわ! 負けてませんわ!!

 こんな野郎と婚約なんてしたくなかったのですわー!

 ‘’こうりゃくたいしょう‘’は危険だとか‘’あくやくれいそく‘’の方がまだマシとかそんな問題じゃないのですわよ!

 だいたいなんですの‘’あくやくれいそく‘’って! は? 悪役令嬢の男性バージョン!?

 一緒にしないで頂きたいですわー!!

 そして‘’こうりゃくたいしょう‘’って何ですの!

 攻略される対象? は? 女性側から攻略する前提ですの?! はしたなくありませんこと?! 破廉恥ですわー! ふしだらですわー! めくるめく夜の蝶ですわー!!(大興奮)



 まあ、かの様に相変わらずこの娘の考えてる事がなんだか怒涛の様に頭の中に流れてくるのですわ。

 要らない情報ですわ。

 何かにつけて悪役令嬢だの攻略対象だのとぴーぴーうるさいのですわ。

 だいたい相変わらずわたくしを悪役令嬢扱いしてますけれどね、知らない未来のわたくしとやらがとったかもしれないというその行動、どうしてそれが悪役という事になるんですの。

 身の程を弁えず馬鹿にされたのなら報復……こほん、抗議するのは当然でしてよ。

 ええ、どう考えても当然の事しかしておりませんわ。

 まったく度し難いですわぁ〜。

 それを悪役令嬢と言い張るならもう悪役令嬢上等ですわ。

 勝手に言ってるといいですわ。


 ちなみにどうやらこの乗っ取り小娘のうじうじいじいじした思考をまとめて、‘’にほんじんきしつ‘’とか言うらしいですわ。

 基本礼儀正しく協調性が高く温厚であるものの、極端に自己主張がヘッタクソなのですわ。

 ‘’にほんじん‘’という人種の性質はよくわからないのですけどみんなこんな感じなんですの?

 もっと自分を出すがいいですわ。

 権謀術数渦巻く宮廷で性善説を唱えて控えめに静観してても事態はよくなりませんのことよ!

 主張すべき事はきちんと主張しませんと誰も庇ってはくれないのですわ!

 なんでそれがわからないんですの!

 イライラしますわ。

 めちゃくちゃイライラしますわー!!!


 言いたいことも言えないこんな世の中じゃですわー!






 ごきげんよう、もう立派な淑女ですわ。異論は認めませんわ。12才は淑女なのですわ! よろしくて?!

 それで、何が起こったのかありのままに話しますわね。

 婚約者の王子に‘’どあまっと‘’扱いされてますわ。あ、ちなみに‘’どあまっと‘’とは、なにやら踏みつけられるかの如く虐げられているような状況のことらしいですわ。へーほーふーんですわーぁ(棒読み)


 ふぅぅ……(深い溜息)案の定ですわね……。

 悪役令息という肩書はなるほど見せ掛けだけではなかったのですわね。そもそも悪役はともかく令息って、一応は王子なのですから悪役王子とか悪役殿下とかじゃありませんの? は? 役割としての‘’悪役令嬢‘’と対である‘’悪役令息‘’というものだからこまけぇこたぁいいんだよって……な……なんて適当な小娘なんですの……。

 何にせよそんなまがりなりにも悪役な人物を所詮乗っ取り小娘ごときに御せる訳がなかったのですわ。


 実にいいように言いくるめられてますわ!

 騙されておりますのね。あるいは洗脳ですわ。

 まったく気付かないのですわこの愚か者は。


 は? 顔が良すぎて強く出れない?

 な……何を言っておりますのこのお馬鹿娘は!?

 たしかに? まぁ……まぁまぁ綺麗な顔の作りしてなくもないですけれどもそれとこれとは違うのですわ!


 ……まぁ認めますわ。顔だけはいいですわ。

 でも顔だけですわ。


 どう考えたってこいつが悪いでしょうよ。

 なんでそうなるんですの?

 阿呆なんですの?

 そんなようだからこんな殿下野郎に弱味を握られるような羽目になるのですわ。

 お、ば、かー!

 まったく先が思いやられますわね!




 身の回りの変化といえばそう、学園に入学しましたわ。幼等学部ですわ。

 この国で貴族子息子女が通う事を義務付けられている12歳から14歳までを過ごす勉学の園ですわね。

 そう、勉学の園。

 間違ってもドアマットを履修する為の学舎ではありませんわ。

 ええ、その筈なのですけれどもね……(遠い目)




 そうそう、小娘の思考回路はだいたい要らない記憶なんですけれどもたまに混じる‘’にほんじんのさぶかるちゃあ‘’とやらはなかなか面白くってよ。

 ‘’にほん‘’というのは実に娯楽が溢れかえっている世界ですのね。

 ‘’まんが‘’に‘’あにめ‘’に‘’げぇむ‘’に‘’らいとのべる&小説さいと‘’にエトセトラエトセトラ。架空の魅力的な物語がわんさかと。

 暇つぶしにはちょうどいいですわー。


 惜しむらくは情報がそれぞれぶつ切り! ぶった切り! なのですわよ!

 乗っ取り娘の思考そのものは流れてくるもののこちらからその頭の中を覗くなんて事はできませんので何かの弾みでチラッとやってくるもののすぐに通り過ぎていくので尻尾が掴めないというかうぅ〜ん消化不良。

 実にふんわりとした簡素な‘’あらすじすとーりー‘’? と共にせいぜい‘’きゃらくたぁ‘’の名言? 迷言? とやらがシーンと共に流れてくる感じで物語の起承転結のあらかた転のみもしくは結のみ? というか……。

 しかしもっとこう、続きが! 知りたいんですのよ! 勿論前フリも!

 気になりますわー! 気になりますわー!

 乗っ取られ生活も惰性に満ちてきましたし娯楽が欲しいのですわー!


 それにしてもこの様に娯楽に溢れた世界で生活していた割に‘’にほんじん‘’とやらはなかなか勤勉な性質ですのね?

 まぁ2才から淑女教育が始まり5才から王子妃教育の始まったわたくしの勤勉さには負けますけれども?

 ええ……おやつがかかっておりましたのでやらざるを得なかったのですわ……。今のわたくしでしたらおやつごときに惑わされませんのにこの小娘ときたら今だに毎日毎日真面目に授業を受けておりますわ。

 幼少期は家庭教師より、学園に通う様になってからは授業も真面目に出席し、聞くともなしにわたくしも聞かされておりますわ。

 聞いてたら嫌でも覚えてしまうのですわ。

 体を乗っ取られた事でのささやかな利点として、せっかくつまらない王子妃教育から逃げられると思いましたのに。というかわたくしだったらなんだかんだ言い訳付けて逃げまくりましたわね、きっと。あんなナルシスト殿下の為にお勉強なんてやってられませんわ〜。

 だから、本当にもう、そんな真面目にやらなくったっていいですのに! 小娘が授業を聞いたり勉強したりしている間わたくしも強制的にやらされているも同然なのですわ……。

 ああもうこの体から離れられないのも面倒ですわー!

 何度か頑張って乗っ取られてしまった体から離れてみようと挑戦はしましたものの、駄目なのですわ……一定の距離からはどうやっても離れられないのですわ……。

 ……ぶっちゃけていえば、ある程度の距離以上に離れようとすると、それでおしまいになる強迫観念がぞわぞわと這い出てくるのですわ。多分これはきっとアカンやつですわ。なのでできないのですわ。無念ですわ……。


 そんなこんなで、お勉強とか、雑務とか、この小娘ときたらそこそこ優秀なものですから気がついたら殿下野郎を筆頭にあれこれ押し付けられて今に至る、って感じですわね。


 まあでもこの乗っ取り娘、なんだかんだ言われるままに引き受けつつもその実、割と心の中での突っ込みとやらは旺盛ですわね?

 愉快なボキャブラリーですのことよ。


 ‘’ねっとすらんぐ‘’? とか‘’みーむ‘’? とかなんとか言うらしいですわ。

 よくもまぁこんなうまいことを言うもんですわね。

 言葉遊びが面白いですわ。

 全く、そんなにぶつくさ言う位なら引き受けなければよろしいですのに。


 まぁ、到底お淑やかな淑女が呟くべき言葉ではありませんけれど!

 精神だけの住人? となったわたくしには知ったことではありませんわー。

 どうにもならないならそれはそれで今の状況を最大限楽しむだけですわよ!






 ごきげんよう、学園への入学から一年ほどの月日が経ちましたわ。まぁまぁあっという間でしたわ。

 あれからもすくすくとわたくしの体は成長いたしましたわ。

 そんなわたくしの体の現在はというとまぁ相変わらずですわ。

 そう、相変わらずドアマットとして色々なものをすり減らしておりますわね。

 なんかもう事ここに至っては最早他人事ですわ。


 相変わらず割と心の中ではどうもテンション高くなかなか的確に現状を示す突っ込みとやらをうまいこと言っている割に行動は伴わないんですのね。相変わらず気弱で流され体質で臆病者ですわ。

 まぁわたくしたち貴族令嬢も淑女の笑みを浮かべて心の中で罵詈雑言なんてよくあることですけれども。


 それにしてもこの乗っ取り小娘、自称‘’らいとおたく‘’を名乗り浅く広くにその興味を伸ばしていたようですわね。

 どうやら一括りに‘’さぶかるちゃあ‘’といっても随分と‘’じゃんる‘’? が細分化されているものらしくふらふらと興味の赴くままあれこれ覗き見していて、‘’のべるさいと‘’? とやらは勿論の事、‘’にゅーすさいと‘’? ‘’ちえぶくろ‘’? ‘’まとめさいと‘’? なんてものにも入り浸っていたようで。

 個人的には‘’ふぃくしょん‘’の物語よりもより‘’りある‘’な対人模様が興味深いですわね。

 おーっほっほ、他人の不幸は蜜の味ですわぁー!

 それはもう、いろんな人間がいていろんな事情があってたまーに目から鱗が落ちる事もありましたわ。

 まあ、色々覗き見ている内になんだかんだでお硬い貴族令嬢の枠にハマるのが馬鹿馬鹿しくはなりましたわね。

 時代は多様性ですわー!

 しかしこれだけ革新的な様々な思想に触れますと思うのは、

『この国遅れてるんじゃないですの?』

 ってことですわね。

 王族を頂点に貴族と平民からなる搾取と強権の構図。だなんて、革新的な世界を知った後だと実に前時代的ですわぁ。

 伝統と格式に囚われて頭の硬い年寄りどもの言いなりなんて古臭い! もはや古臭いのですわ! おーっほっほ!


 ……まあ、ね、他の世界を知らず与えられた情報だけで生きていればこのわたくしだってそれはもうエベレストの様にプライドは高く貴族の誇りを胸に生きていた可能性も……‘’びれそん‘’? ‘’びれぞん‘’? ありますけれども!

 もう知ってしまったのだからしょうがないのですわ! ええ! もう! 知ってしまいましたわ!

 この際悪役令嬢呼ばわりも甘んじて受けて立ちますわよ?! だって最早(都合の)いい子ちゃんになんてなり下がる気はこれっぽっちもございませんもの!

 新生悪役令嬢ですわー!

 やりたいように生きてナンボですわよー!







 ごきげんよう、幼等学部学園生活も残り一年を切りましたわ。

 何が起こったのかありのままに話しますわ。

 婚約者の王子が聖女さまに現を抜かしておりますわ。


 今も婚約者の義務として学園での昼食を共にしながらも実に自慢げな小憎たらしい表情をわたくし(の体を乗っ取った小娘)に向けてさも当然の様に聖女さまを隣に侍らせてますわね。

 聖女さまはウルトラピンクの髪色にショッキングピンクな瞳の色をした実にピンクピンクしいお方ですわ。

 いわゆる‘’ピンク髪の聖女様‘’というやつですわー! ‘’てんぷれ‘’ってやつですわー!

 アレですわね、物語の登場人物に出会った心地ですわ。異世界用語で言うなら‘’げいのうじん‘’? に出くわしたみたいな?

 それとも‘’こすぷれいやー‘’? に会ったみたいなものなのかしら? 知らんけどですわ。

 しかしそれにしてもあまりにも主張の激しい配色故かじっと眺めていると実に目がシボシボしてきますわね。


 さて、どうやらこの殿下野郎は聖女さま狙いのようですわ。


 王子としての公務に生徒会の仕事(うちの学園は慣例で王族が入学中は基本王族が生徒会長を務めるのですわ)に授業のまとめエトセトラエトセトラ……をすべて乗っ取り娘に丸投げした上で空いた、結構な量の自由時間を聖女さまを追いかけ回すことに費やしまくった成果ですわね。

 本来ならそんな呑気に聖女さまにちょっかいかける時間なんてないはずですのに。


 つまり乗っ取り小娘ときたら正に自分で自分の首を絞めていたのですわね。

 ほんっとうにお馬鹿ですわ〜。

 わたくしだったら絶対にそんなもの引き受けませんのに。自分の仕事は自分でやれですわよ。

 それで困る人がいるとかなんとか知ったこっちゃないのですわ。

 困るなら困った側の人間がなんとかしたらいいのですわ。

 わたくしはちっとも困りませんわ〜。

 ハイハイ悪役令嬢悪役令嬢。もうそれでいいですわ好きに呼ぶといいですわ〜。

 なんと言われようとわたくしは痛くも痒くもないのですわよ。

 ただ‘’えいが‘’とやらを見る様に神の視点から成り行きを見守るばかりですわ〜。おーっほっほっほ!


 それにしても、‘’さぶかるちゃあ‘’の中の登場人物でこの娘のように‘’てんせい‘’〜だの‘’てんい‘’〜だの‘’ひょうい‘’〜だのに見舞われる者のお話もありましたけれど、しかもそれらも皆ほぼ‘’にほんじん‘’とやらでしたけれど、このびくびくおどおどした小娘と違ってそもそもそれはまぁ皆様バイタリティありますのよ。

 え? あれは物語だから‘’きゃら‘’がたってるのであって実際に現実で‘’いせかいてんせい‘’なんて起こった日には普通は何もできずに流されるだけだ、ですって?

 相変わらず考え方が軟弱ですわね〜。

 軟弱軟弱ぅ〜でーすわー!

 まぁ、自らの境遇に‘’たいとる‘’を付けて自虐ネタにする位なのだからバイタリティそのものはこの小娘にも備わってるのではなくて?


 そういえば、そもそもこの小娘が提示された婚約者候補の中から顔だけ殿下(笑)をチョイスしたのも、多分なんかいずれやってくるらしい断罪から逃れる為に攻略対象とやらではなく悪役令息を選んだとかなんとか……。


 お馬鹿なんですの? お馬鹿なんですのね?

 そんな小癪な野郎を制御出来るとでも思っていたのかしら? やたらと‘’にほんじん気質‘’な引っ込み思案小心者流され体質と三拍子揃った小娘が!

 ちゃんちゃらおかしいですわー!

 でもまぁわたくしの敵ではありませんのよ。

 は? 何言ってますの殿下野郎なんてわたくしにとっては小者ですわ! 小者!

 ええもう、乗っ取り小娘でなくわたくしであればもうぎったんぎったんのばったんばったんにしてやりますのにーあー残念ですわーつらいですわーまじつらいですわー(棒読み)







 ごきげんよう、悪役令嬢ですわ! 只今わたくしの体がリアルタイムで絶賛ドアマット中ですわ!

 おーっほっほ、これが所謂‘’たいとるかいしゅう‘’? というやつですわね。

 知らんけどですわ。

 え? のっけからテンションが高い?

 さもあらんですわーだって今まさにリアルタイムライブ中継で佳境真っ只中なのですわー!


 そう、今現在は大人監修にて有志により定期的に行われる学園内開催の大規模社交パーティーの最中。

 唐突にわたくしの婚約者(不本意)である筈の殿下がわたくしをエスコートするでもなくその腕に聖女さまを侍らせてやってきたかと思えば何やら戯言をほざいてますわね。

 それを相変わらず言葉少なに無表情で粛々と聞いている風の乗っ取り小娘は、今正にその神経もといドアマットが擦り切れる寸前というところ。

 そんな小娘の心持ちを思いやるでもなく、なにやら得意げに演説をする殿下野郎の宣う曰く、


「既に信頼できる筋からの告発により、おまえが聖女を妬んで貶めていた証拠は揃っている!」


 とかなんとか……。

 聖女さまも聖女さまで、そのショッキングピンクの大きな瞳にうるうると涙を滲ませておろおろとした仕草をされてますわ。

 ついついと殿下の服の上着袖を引く姿はなかなかにあざといポーズですわね〜!

 それに対して殿下野郎はなんか気持ち悪い感じの本人は優しげだと思い込んでそうだなと窺える表情で聖女さまに小声で『大丈夫だ、この俺様に任せろ』とかほざいてますわね。

 それに対して聖女さまはうるうるの瞳をさらにうるうるにして小さくかぶりを振っておりますわ。

 まー何とも庇護欲をそそりますわぁ〜護りたいその笑顔! な仕草ですわね。笑ってはいませんけど。

 つまりこの場合、護りたいその泣き顔! ということになりますのかしら?

 なかなかサディスティックな響きですわね。


「あ……あの、貴女が私に嫌がらせをしていたって聞いて……その……でも、もうそういうことはやめて、今までやった事を認めて謝ってくれたなら私、私、それでいいですから……!」


「おお、流石聖女、なんと清らかな心持ちだ……だが罪は罪、きちんと償ってもらわねばならん」


「王子様……でも……」


「だいたいこの女は端から俺様の婚約者には相応しくなかったのだ、こんな女よりお前の方が美しく清らかで優しくまさにこの俺様に相応しい……」


 とかなんとか頭おピンク劇場が繰り広げられており……。(遠い眼差し)

 返す乗っ取り小娘は無言。真っ青な絶望顔に二の句を告げない無言ですわ。


「ふっどうやら言い訳すら出来ないほど心が真っ黒のようだな! お前のような女などお前の有責で婚約破棄だ破棄! 何処へなりと俺様の前から消え失せろ!」


 ……。

 ふー……。

 すー、はー、すー、はー、(深呼吸)

 ……。

 ……。

 ……こ……このク◯殿下野郎めがーッ!!!

(強制的に)黙っていれば何を好き勝手にほざいてますの?!

 いい加減堪忍袋の尾が切れそうですわ!

 ムカ着火ファイヤーですわ!!

 激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームですわぁ〜ッ!!!





『…………(因果応報スキルのレベルが10になりました。獲得ポイントが10倍になります。ドアマットポイントが満額になりました。ざまぁポイントに変換されます)』




 ……んん? ……今、何かよくわからない音が聞こえたような……?





「あ」



 ん? あら? なんか眼前が鮮やかですわね。

 身体が重いですわ。


 ぱちぱちと瞬きをすればよりはっきりと、目の前には遺憾ながらわたくしの現在の婚約者である(あ、今婚約破棄を宣言されましたから元婚約者?)殿下野郎、聖女さま、殿下野郎の取り巻き令息ども……。


 ……あー、あーなるほどね、なるほど……。


 なるほどあの子ったら限界が来ましたのね。

 ‘’おーけーはあく‘’ですわ。

 まあ最近に至っては追い詰められるだけ追い詰められて一日中青い顔をしておりましたし夢見も悪そうで睡眠もよく取れてなかったようですしいつ倒れてもおかしくない様相をしておりましたけれども。

 まったくもって軟弱ですわよね。

 まぁいいですわ。

 これでようやく言いたいことも言える世の中ですわ!


「こほん」


 あ、あー、マイクテステス。

 よし、声は普通に出そうですわね。


 手、指、つま先、うん、ちゃんと動きますわ。

 身体への意思の疎通ができてますわ。


 ちらり、と視線を流す。真正面に、ドヤ顔の面々。


 さて。

 どうしてくれようかこの阿呆ども。


 ええ、勿論……答えはひとつ、ですわね。


 さあ!

 悪役令嬢の逆襲ってやつですわ!

 おーっほっほっほ!

 いざ!

 スーパーざまぁタイムですわよー!!




「まあ、何をおっしゃっておりますやら……」



 さて。

 ここで馬鹿正直に自らに起こった事情を話すなんて事はしませんわよ。

 だいたい誰が信じるんですのこのわたくしの身に起こったもろもろを。

 選択肢なんてあってないようなものですわ。

 やるのは責任逃れと辻褄合わせ一択ですわ!


「わたくしが、聖女さまを、貶めた、ですって?

 わたくしにはそんな事をする必要も、暇もないのですけれど?」


「は……?」


 あらあら、殿下ったらなにやら初めて口答えらしい口答えをしたわたくしに目を丸くしておりますわね。


「学生である身分なのですから学業は当然として、本来なら殿下のやるべき生徒会の仕事、通常の王子妃教育に加え殿下が不出来であった殿下が受けるべき教育まで何故かわたくしの方に上乗せされて更に当然王族が熟すべき公務のあれこれも……なんだかんだわたくしに押し付けてくれてましたわよね?

 そんな忙しくて忙しくて忙しいわたくしの何処に、聖女さまに対してどうにかするような時間の余裕があると?」


「は……は……はぁあ?!!!」


 どよ……と、周りの野次馬がざわめいてますわね。

 まぁ、この殿下野郎、なんだかんだ周りにはいい顔してさも自分は優秀でござい! みたいな顔して偉そうに振る舞ってましたものね。

 当然ドアマットよろしくあくせく働いていた乗っ取り小娘の手柄はみーんなこの男に掠め取られていたのですわ。

 それらしく振る舞って信じさせるような、そういうセコい事だけは上手い男でしたのよね! 流石悪役とでも言うのかしらぁ〜?


「なん……っおま……なに……を言っ……」


 虚を衝かれたかの如くもごもご言ってる殿下野郎はほっといてざっと辺りを埋め尽くす学生諸君の顔を確認しますわ!

 あ、うん、居ますわね、見覚えのある顔どもが。


「そこの伯爵令息!」


「は……はひっ?!」


「先日生徒会の予算案をわたくしから貴方へ直接手渡ししたのを覚えておりますかしら?」


「あっハイ……確かに受け取りまし……た」


「その予算案の筆跡! それから過去生徒会から提出された書類もろもろの筆跡とわたくしの筆跡鑑定をしてそれが同一人物と証明された場合、生徒会の仕事の把握も実務も主にわたくしが担っていたと、証拠になりますわね?」


「あっハイ……それはまぁ……」


「それからそこの子爵令嬢!」


「ひぇっは、はい!」


「貴女この間の学期末試験で全学年2位を取ってましたわね? 学生の本分は学業ですもの、素晴らしい事ですわ」


「あっありがとうございますぅ……っ」


「それで、貴女の成績が2位、では1位を取ったのは誰だったかしら?」


「はい、貴女様でございますぅ……!

 あの、あの、公開された試験に提出されていた論文読みました、本当に素晴らしくて私感動しましたの、そんな貴女様に声をかけて戴けるなんて光栄ですぅ……!」


 そう言って子爵令嬢はキラキラとした瞳で見詰めて来ますわね。

 おほほ、苦しゅうなくてよ!


「ところで先の試験、殿下の成績は……?」


「……」


 ざっ、と皆様の視線が殿下に集中いたしますわね。

 そう、張り出された試験上位五十名の何処にも殿下の名前なんて載っておりませんわ。

 レポートやら論文やらほぼほぼ乗っ取り小娘に丸投げで試験のヤマまで張らせてましたけれどこの程度、流石顔だけ殿下とわたくしの中で評判なだけあって実にあんぽんたんですわね。

 この男とんと学業に興味がないのかその上聖女さまのお尻を追いかけ回すのに必死で授業もサボりがちでしたものね〜、王族の公務が〜とか言ってお茶を濁していたようですけれど判る方は判っておりますのよね、だからこそ王子教育の一部がわたくしに回ってきていたのですし、王族の務めるべき公務をわたくしが肩代わりする事も黙認していたのですわ。

 ク◯喰らえですわね。

 でもまぁ公務を肩代わりしていた事の具体的な暴露は此処ではやめておきますわ。わたくしも王子の婚約者という事で準王族扱いにはなっておりますし、王族にまつわる公務については本来王族の誰かしらが監督するべきですし、気付かなかったのかだとか知ってて黙ってたのかとかどちらに転んでも殿下個人だけに咎が留まらず関係ない王族の威信にも余波が降りかかってしまいますし。

 要らぬ恨みを買うべきではありませんわ。

 勿論、表立っては言いませんけれど裏の方から……ね? チクチクっと……ね? 多少の便宜ははかってもらいますわよ?

 使えるネタは此処ぞという時にこそ上手に使ってあげるのが淑女もとい悪役令嬢の嗜みでしてよ。

 当然ですわね。


 まあ、そもそもそれこそこの俺様殿下なら、俺様よりいい成績を取るな! とか言い出しそうなものですけど、そこは悪役の面目躍如というか、小娘におんぶに抱っこでも成績が振るわなかった時点で寧ろ逆に小娘に学業でも結果を出させる方向にシフトしてましたわね。

 何故って、この悪役令息たる殿下野郎は自らの権威拡大なんて大それた事を企んでおりましたのよ? そんな中婚約者と共に成績が振るわないだなんて何の足しにもなりませんわ。

 それなら小娘だけでも優秀さをアピールした方が有意義ですわね。

 そう、そんな小者っぽい計算だけはできますのよ小賢しい事に。

 しかもなんか自分のやるべき公務を小娘に肩代わりさせるのをお上に納得させた過程で‘’この優秀な婚約者はワシが育てた‘’感まで出してましたわ。

 実際小娘は殿下野郎に対してほぼほぼイエスマンでしたもの(内心はどうあれ)。お上もうっかりお目溢ししてしまったのですわね。




 さて、わたくしの歯に衣着せぬ暴露により、不特定多数の生徒に頭の出来のよろしくない仕事も周りに押し付けるばかりの無能王子、と言う印象を植え付ける事にはまぁまぁ成功したようですわね。

 皆様疑惑の瞳で、二の句を告げずに固まったままの殿下を伺っておりますわ。これで仮に殿下野郎の曰く‘’信頼できる筋からの告発による証拠‘’とやらを出したとて、一方的に殿下の意見だけが罷り通ることもなくなったでしょう。まあそもそもこれだけわたくしに言われて尚出そうとしてこないあたりお察しですわ! どうせわたくしにそんな暇などない事実で破綻するような杜撰な証拠なのですわ!


「お……おまえ……なんだ急に豹変しやがって」


 あらあらまぁまぁ顔を真っ赤にしてなにやらボソボソ言ってますわね、図星ですものね公衆の面前で本当のことを洗いざらい暴露されちゃって恥ずかしいですわよね〜!

 ねぇねぇ今どんな気持ち?

 どんな気持ちぃ〜?(ニヤニヤ)


「まあ……わたくしは何も変わってなどおりませんことよ?」


 余裕たっぷりに嘯いてやりますわぁ〜。

 ぎりぎりと睨みを飛ばして来やがりますがちっとも怖くありませんわねぇ。

 所詮小者ですものぉ。


「だって殿下がわたくしにおっしゃいましたのよ?

 そう、今このように婚約を破棄されたくなければ、でしゃばるな、女は黙って男を立てるべきだ、反論を言うな、俺様の言うことにはただはいとだけ言っていればいいのだ、でしたかしら?」


 そう。わたくしすぐ傍でかぶりつきで一部始終を覗いていましたもので(いや別に見たくも無かったのですけれど問答無用でリアルタイム劇場が目前で繰り広げられるんですもの、仕方ないですわよね、仕方ないですわ)、だいたい何を言われたか何をされたかもしっかりばっちりくっきり覚えておりますのよ。


「今までは婚約者であった殿下のお立場を! 思い! 顔を立ててあげていたまでのこと」


「なっ……貴様俺様を騙していたのか?!」


「いいえ?

 婚約者の務めとして、淑女の嗜みとして、粛々と従っていたまでですわ?」


「じゃあちゃんと俺様に従えよ!」


「なぜ?」


「なぜって……」


「だってたった今、殿下が宣言なされて、婚約と言う名の契約は破棄されましたわよね?

 これまでずっと殿下のご下命に沿うように精一杯務めてまいりましたが……結局は婚約破棄をなされたのですもの。

 でしたら別にもう婚約者ではなくなった殿下をお立場以上に慮る必要はありませんわよね?

 だってわたくしだって、順位はそれこそ末端とはいえ王位継承権を持つ、直近では現国王妹殿下が降嫁なされた公爵家の令嬢ですのよ?」


 つまりわたくしのお母様は元王族で現国王陛下の妹なのですわ。

 王位継承権が引き継がれるのは王族降嫁の場合その子の代までですからわたくしの子供には再び王族との婚姻を結ばない限り継承権は発生しませんけれども。

 ‘’さぶかるちゃあ‘’もろもろで価値観刷新された今となってはわたくしそんな面倒くさいもの寧ろ要らないですわね。

 まぁつまるところ目の前の殿下野郎は従兄弟でもあるのですわ。薄っすら血の繋がりがあるのも小癪ですけれど。


 そう。わたくしの身分はたっかーいんですのよ!

 さっきの今まで身体は指一本自由にはならなかったですけれど頭は働いておりましたからね!

 知識だけはキチンとありますのよ。

 この娘が勉学を特にサボらなかったものだから、しっかりばっちりわたくしも勉強させられてたようなものなのですわ。

 もともと幼少の頃から記憶力はよかったですしこの娘も何やら勉強しながらこの身体スペック高すぎる! とかめっちゃするする頭の中に入ってくる! とかさすが悪役令嬢スペック高すぎ! とか言っておりましたけれども。

 だがしかし、ですわ。この娘はそういう学んだ知識なり手に入る情報を持って色々と根回しをするとかそう根回しをするとか故に根回しをするとかをまっっったくやらない性分だったものだから色々といーろーいーろーと! 社交界で遅れを取りまくっておりましたけれども!

 まったくなんで情報を得てもそれをうまく生かすことができないんでしょうかしらね愚鈍ですわ怠慢ですわ愚かですわ〜!

 何度歯痒い思いでハンケチを噛んだ事か!


 今になって! ようやく! 知り得た情報を活かせますわ〜!

 あ~すっきりしますわね!


「ねえ、殿下……いえ、第七王子様?

 ……何か問題がありまして?」


 第‘’七‘’を強調して言ってさしあげますわ。

 ドヤァァァア!

 という効果音が聞こえるようですわね!

 わたくしは胸を張りましたわ。


 そう、第七王子! こいつこんな偉そうにしていて第! 七! 王子! ですのよ! 七番目! 上から数えて七番目!!

 だいたい第七王子なんてそもそも身分の高さなんてあってないようなものなのですわ。

 現状優秀な第一王子殿下がおりますし第二王子殿下第三王子殿下もみなさままぁまぁ優秀な方々でこいつの出る幕なんて端からないのですわ。

 そもそもこいつは側姫さまにもなれなかった妾姫さまのお子ですのよ?

 あ、うちの国は妃の称号を戴けるのは正妃だけですわ。一夫多妻は許されておりますけれど第二夫人以下お妾さんなどには王族でも一番高くて姫の位までですわ。正妻の権力はきっちりと守られてるんですのよ。過去に泥沼の愛憎劇が殺伐と陰惨に繰り広げられた結果、法としてキッチリ明文化することになったのですわ。うちの国何気に物騒ですわね?

 そんな訳で貴族階級に許されているのは正妻と、第二第三夫人とは名ばかりの妾のみ、王族になると王妃様に側姫様に妾姫様の三種ですわね。

 側姫様であれば王妃様が不都合な時などには公的なお仕事もできますけれど妾姫様はまあ……ね。御飾りとか賑やかしとかそんなもんですわ。

 いわゆる愛玩人形とでも言うのかしら。

 世間の評判もそんなもの。

 ですからみなさま必死で正妻の座を狙うのですわね。

 つまりこの殿下野郎のいいとこなんて、それはもう美しさだけで国王陛下のお眼鏡に叶って妾姫までになった母親譲りの顔の造形だけですわよ、顔だけ! 顔だけなのですわ!


「ぐ……ぅぅ……」


 その顔だけの王子は今端正なお顔を歪めてギリギリと歯噛みしておりますわ!

 みっともないですわね!

 おほほーですわ!


 多分この男の中では聖女さまを正妃に、優秀な公爵令嬢たる乗っ取り小娘を側姫になんていう‘’ぼくのかんがえたさいきょうの布陣‘’が当然の様にまかり通っていたのですわ。

 実際良い線をいってますのよ。聖女さまを婚約者に持つ王位継承権持ちなんてつよつよカードな上に、公爵令嬢であるわたくしの両親である公爵家、以下派閥貴族の後ろ盾。この正妃が強い我が国で本来なら公爵令嬢を側姫にだなんて問屋が卸しませんけれども聖女さまを貶めた罪をおっ被せた上であれば側姫もやむなしとなりますわね確かに。小娘の態度だと殿下野郎以外に嫁ぐ選択肢もなさそうだと踏んで恩着せがましく話を持っていくつもりだったのでしょう。そして側姫として娶る小娘の優秀さはアピール済、と……。

 あらホントに宮廷がひっくり返りそうですわね?

 でもそんな浅はかな考えなんてこのわたくしがぶっこわしてやるのですわ!

 おーっほっほっほ!


「それに……ねぇ?

 どうやら事実、聖女さまへの嫌がらせとやらは本当にあった事実の様。

 それをやったのがわたくしでないのなら、一体どなたが聖女さまを貶めたりなんてなさったのでしょう……?」


「うっ……」


 今、殿下野郎はサッと顔色を変えてぎくり、とされましたわね。


「そ……それは、そうだ、仮にお前には時間ががなかったとしても、命令してお前の取り巻きが……」


 苦し紛れに責任逃れをしようと試みますが、そうは問屋が卸さないのですわよ!


「あらぁ? 殿下の取り巻きが、の間違いではなくて?

『花を踏みつければ、こちらを頼りに寄り添うだろう、そのようにしろ』でしたかしら?」


 ざぁっと顔色が変わりましたわね。

 どうやら聞かれてるとは思ってなかった御様子。


 そう! この王子、何を考えたやらこの騒動!

 マッチポンプ! ですのよ!!!


 家政婦は見た! ならぬ、悪役令嬢は見た! でーすわー!!

 あれは忘れもしない殿下野郎に押し付けられた生徒会の仕事を捌くべく乗っ取り小娘が死んだ魚の瞳で生徒会室に籠もっていた時、ちょうど一息入れようと生徒会室に隣接された簡易給湯室にお茶を淹れに行ったところ、どやどやと取り巻き令息を引き連れて生徒会室に殿下がやって来たのですわ。小娘が、殿下野郎の目に付いたらまた仕事を押し付けられてしまうと息を潜めて隠れたところ、他に誰もいないと思った殿下野郎がペラペラペーラと自分語りを始めましたのよ。王族にまつわる隠語(あれですわ、他国なり自国の貴族なりに面倒な言質を取られない為の要するに責任逃れの為の遠回しな言い草のことですわね)を使って側近達に言っておりましたので、小娘は何を言っているのか全然まったくわかってなかったようですけれども(おかしいですわね〜同じ王子妃教育の授業を受けていましたのに何故理解出来ないのか)、わたくしにははっきりばっちりわかりましてよ。

 小癪にも聞かれたらまずい事を話しているという意識はあったのか具体的な指示を示さず回りくどい持って回った言い回しをしてましたけれどもね。

 まったく、この乗っ取り小娘、権謀術数が本当に苦手なんですのね。基本平和な世界で生きてきた甘ちゃんなのですわ。


「ち……違う! 知らん! そんな事は知らん!」


「聖女さまも、あまりにも都合がいいとは思いませんでしたか? いじめに遭われて物が壊された時にばかり都合良く殿下が現れましたよね?」


「そういえば……!」


「ぐ……偶然だ……!」


「偶然……偶然ねぇ……偶然であればそんなにも都合良く毎回出くわします? その、偶然の出会い、何回ありました?」


「た……確かに……!」


 色々思い出したのか聖女さまがハッとした顔をなされますわ。

 えっわたくしの方から誘導しておいて何ですけれどめちゃくちゃ流されやすいですわねこの方……。

 まぁ素直な分こちらの誘導通りに動いてくれそうですからいいですわ。


「そしてその、殿下の腰巾着よろしく取り巻きの令息の隣の御令嬢の御髪に見覚えはありませんこと?」


「え……あ……っ!」


 そう、その取り巻きの令息の隣にこういう場で居るという事は婚約者であるだろう貴族令嬢の髪の色……わたくしの髪の色に大変良く似ておりますわね。わたくしに罪をなすりつける為にと、わたくしの髪色に似た令嬢を選んで連れ回してわざとらしくちらちらちらつかせてましたものね、見覚えがあるはずですわ。


 聖女さまにまじまじと見詰められた取り巻き令息の婚約者が、ガタガタと震えてガクリと腰を抜かしてますわ。まぁ〜語るに落ちましたわね、その態度が肯定してますわぁ〜。


「王子様……本当ですか? 私が嫌がらせに遭ってたのって、王子様が命令していたからだったんですか?!」


「ち……ちがう、違うんだ……!」


「ひどい……! 信じてたのに……!」


 う〜ん。

 聖女さまはこう……なんというか、お花畑脳なのですわね。

 流石に聖女と呼ばれるだけはあると申しますか、基本善人で何でも信じやすいのですわ。

 良く言えば純粋、悪く言えば流されやすい、そしてイケメンにぽーっとなってしまうくらいにはメンクイなのですわ……。

 こいつ本当に顔だけはいいですものね……。

 まぁ……そんな訳で聖女さま自体はそんな悪い子という訳ではではないのですわ。残念な事に。

 ほんっとうに残念な事に!


 そもそもこの殿下野郎が聖女さまを狙ったのも、妾姫様の子として継承権なんてほぼ役に立たないのを一発逆転できる唯一のカードが聖女さまの夫というステータスだからなのですわ。

 ぶっちゃけわたくしの公爵令嬢という身分よりも聖女さまの方がまぁステータスとしては上等なのですわ。

 慣例というものがありましてね。

 もともと聖女さまは馬が合えば王太子殿下や国王陛下に嫁ぐ事もあるのですわ。勿論妾姫なんかではなく正妃として。

 つまりこの国において聖女さまという地位はそのくらい身分的には高いのですわね。

 だって当たり前でしょう、一国の退魔結界をたった一人だけで構築できますのよ?

 居るのと居ないのとで大違いでしょう。

 そんなもの囲い込むに越したことはないのですわよ。

 それはもう己にはできない特殊なことをやってもらうのですから気持ちよくお仕事してもらうに越したことはないのですわよ!


 それで、逆に言えば聖女さまを駒として手に入れたとなれば、ワンチャン立太子する可能性も無きにしもあらず、なのですわ。悪役(役割)たるこの小者殿下はそこに目を付けたのですわね。たまたま年代が合ったがために聖女さまに近付く事が容易で、それでわたくし(の身体を乗っ取った小娘)を利用して時間を捻出しつつ聖女さまに近付いて手に入れようと画策していた、と……。

 悪役と言えど小者が考えそうな事ですわね〜。

 でもそうは問屋が卸さないのですわ〜。

 だって! わたくしが! 漸く言いたいことも言える世の中になったのですもの!!(ドヤァ)

 全部ちゃぶ台返ししてやるのですわ!

 御覚悟はよろしくて?!


「それでは、後は国王陛下に判断を仰ぎましょう?

 勿論、洗いざらい、すべて、今までのわたくしの知り得た情報をきちんと何から何までお話しして差し上げますわ?」


 わるぅ〜い笑みでニヤリと嗤ってやりましたわ。

 殿下ったら血の気の引いた真っ青なお顔になって力が抜けて崩れ落ちる様に……ああこれ、アレですわ、所謂orzポーズってやつですわ、わぁ〜リアルで見るのは初めてですわ〜。


 これぞまさに。ざまぁってやつですわね!

 おーっほっほっ、ざまあ、気持ちいいですわー!!

 これだけ気持ちいいのなら‘’にほん‘’とか言う異世界でなんか流行ってるっていうのもさもありなんですわね!

 だってこんなに気持ちいいのですもの!(確信)




 そんなこんなで茶番劇はわたくしの圧倒的勝者感で幕を閉じたのですわ。

 何やら放心している殿下野郎を尻目にしっかりと念入りに根回しした上で国王陛下にも報告を上げて婚約もばっちり破棄できましたわ。

 もちろん野郎の有責ですわ。

 なので元婚約者はきっちり牢にぶち込めましたわ。

 冤罪捏造マッチポンプで国の宝と言っても過言ではない聖女さまを騙したのですわよ? ついでに公爵令嬢たるわたくしを貶めていたのも明るみに出ましたし、もちろん継承権剥奪廃嫡幽閉コースですわぁ〜愉快ですわね!

 小躍りしてやりますわぁ〜!



 え? そうしてるとやっぱり悪役令嬢っぽいですって?


 まぁまぁ何をおっしゃるやら、おほほ、ほほほほ……。








 ごきげんよう、みなさまお元気にしてらっしゃる?

 こちらみなさまの心のアイドル、悪役令嬢マークII(改)弐式セカンドですわ!


 え? 元わたくしに乗り移っていた‘’にほんじん‘’とやらはどうなったかですって?


 あぁー、まぁあれからなんやかんやありまして無事わたくしの身体から追い出せましたわのことよ。

 結局居なくなったと思ってたあの娘は何故かまだしつこくわたくしの中に居たようで、その後も何かある度に入れ替わらさせられましたのですけれど!

 ええ! まったく遺憾ですわ!

 まあまあそれはそれで紆余曲折あって、それはもうなんやかんやでなんだかんだで現在は妖精霊としてわたくしの横で寝てるわですわ。

 おほほほ意味がわからない? わたくしにもよくわかりませんわ。なんか流れに流れて流された挙句にそんなことになっていたのですわ。イミフですわね。

 でもまぁ小娘も色々解放されてどうやら楽しそうですからいいんじゃありませんの?

 知らんけどですわ。


 そ、れ、で! 何が嬉しいかってそう!

 ‘’さぶかるちゃあ‘’あれこれですわ!

 同じ身体を共有ではなく別離も果たして意思疎通もできるようになったので、それはもうあの頃から気になって気になって仕方のなかったあれこれについて尋問……ごほん、聞き取りが叶う様になったのですわ!

 印象深いシーンまわりの断片的な情報だけが流れ込んでくるのではなく!

 きっちり! 起承転結筋道立てて最初から最後までの物語を語らせておりますのですわー!

 まあまあ本当に娯楽には事欠かない世界でしたのね、あらゆる物語があってまったく飽きないですわね。


 あ、ちなみに例の断罪後自室に戻った時に、異世界ものではお約束らしいステータス! と叫ぶやつも実はやらせてもらいましたのよ。

 びっくり本当にステータスとやらが出てきましたわ。(まぁ断罪の舞台であの変な声が聞こえた時点でそんな気はしておりましたけれども。ほら、某元殿下野郎にざまぁをキメたあのパーティーの時の事ですわ)

 それでまた一騒動もありましたし、なんていうかわたくしの身のまわりって本当に波乱万丈ですわね。


 まぁそんなこんなで、たまに羽虫かというくらいわたくしの横でぱたぱたと飛び回りますので多少鬱陶しいこともありますが概ね平和に過ごしておりますわ、わたくしも、あの娘も。


 え? その話も聞きたい、ですって?

 そうですわね、今日はもう時間も押していることですから無理ですけれど、そのうち、気が向いたら、またオハナシしてあげないこともないですわね!



 ではみなさま、また会う日まで、ごきげんよう!






みなさま

★評価というものを知っていらして?

そう、ちょうどこの下あたりにあるやつですわ! それを押すのですわ! 押した★の数が多いほど作者が喜ぶのですわ!


そうするとどうなるか!

なんと! わたくしと再会できる可能性が微レ存なのですわ!


わたくし、知っていてよ!

これが!

メタ発言というやつなのですわー!!(ドヤァ)




_____________________________


悪役令嬢にメタ発言言わせたかったついでにあわよくばおこぼれに与ろうとした模様(震え声)



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