番外編 第一編 推しカプが遂に尊き夫婦になりました!
アーロンとロゼリスの婚約が正式に復活してから、もう二年が経とうとしていた。
アーロン、ロゼリス、ルチアはロイエンス学院を卒業した。
ロゼリスは第二王妃候補として、王宮公務に出る日も増えていた。
アーロンもまた、公務に追われる毎日。
それでも必ず時間を作り、
「ロゼリス、今日こそは飯を一緒に食うぞ。」
「帰る時間になったら護衛を寄越せ。迎えに行く。」
……などなど、彼女との時間だけは頑なに死守していた。
けれど、アーバートン邸の“婚前同居禁止”の掟は鉄壁で。
ロゼリスが王宮から邸へ帰る時間になると、彼女は毎度名残惜しそうにアーロンの袖をつまむ。
「殿下……いえ、アーロン様……もう少しだけ一緒に……」
「……言うな。俺も同じだ」
そんな夜を何度過ごしただろう。
アーロンは毎回、背を向けて歩き出すたび、喉を締めつけられるような思いでいた。
(早く……早く妻にしたい。隣に置いておきたい)
***
夜のアーバートン邸。
自室の机の上にそっと分厚いノートを広げる。
尊みノート。
いまや100冊目に突入しようとしている、ロゼリスの魂の結晶。
「ふふふふ……あぁ……また筆が止まりませんわ……!」
明日は、遂に遂に!!!!
ルチア様とシルビア殿下の婚姻式!!
「尊い……尊さが限界突破して……鼻血出そうですわ……!」
先日の舞踏会での、あの尊死シーンを思い出すだけで両頬がゆるむ。
シルビア殿下が、静かに赤薔薇の花束を差し出しながらルチア様の手を取って言った、あの名台詞。
『君も学院を卒業した。約束通り、君を王妃にしたい。
生涯、君だけを愛すると誓うよ』
「あれは……尊みを超えて……神域……!!」
ロゼリスは机に突っ伏しながら足をぱたぱたさせる。
思い出すたび魂が浄化されるとはこのこと。
「明日……本当に楽しみですわ……!」
***
翌日。
ロゼリスは、できるだけ花嫁を引き立てないように、青いダイヤが流れるように縫い込まれた上品なドレスを身にまとった。
隣には、漆黒のスーツを着たアーロン。
相変わらず、隣に立たれるだけで心臓が忙しい人である。
「ロゼリス、緊張しているのか?」
「い、いえ。あの……尊みが……その……」
「……また始まったな」
アーロンは呆れたように笑うけれど、視線は優しく私の頬に触れる。
「泣きすぎて化粧が落ちても、俺がどうにかしてやる。好きに泣け」
「……っ!」
開始前から優しすぎる。
***
やがて、煌びやかなファンファーレが鳴り響き、会場全体が光に包まれる。
入場してきたのは、純白のドレスに身を包んだルチア様。
その隣には、同じく純白の燕尾服を着たシルビア殿下。
まさにゲームCGそのまま。
いや、あれを超える輝き。
「……っ……っっ……!」
瞳がうるんで止まらない。
尊すぎて呼吸すら忘れそう。
誓いの言葉が交わされ、二人がゆっくりと指輪を交換する。それだけで胸がきゅうっと締めつけられ、ぽたり。
涙がこぼれた。止まらない。
「やっぱり泣いたな」
アーロンがそっとハンカチを差し出し、微笑む。
その手がロゼリスの肩を優しくなでた。
「泣きすぎだ、ロゼリス。……可愛いけど」
「っ! そ、そのような……!」
(式の最中に甘やかさないでいただきですわ…!心臓に悪すぎますわ!)
***
式が終わり、退場した二人が祝福の中でゆっくりと歩き出した頃。
ふと、ルチア様がこちらへ駆けてきた。
幸せに満ちた笑顔で、ロゼリスの両手をぎゅっと握る。
「ロゼリス様!見てください、私……本当にシルビア様のお隣に立てましたわ……!」
「ル……ルチア様……おめでとうございます……っ」
涙がまた溢れて止まらない。
ルチア様はロゼリスの濡れた頬を指でふきながら、にっこり笑った。
「次は、ロゼリス様とアーロン様の番です!
お二人の婚姻式、とても楽しみにしておりますわ!」
その言葉に、胸が一気に熱くなる。
「……そんな……っ……嬉しすぎますわ……!」
後ろからアーロンの大きな手がそっとロゼリスの腰を抱き寄せる。
「聞いたな、ロゼリス。
……俺たちも、次だ」
「アーロン様……」
彼の低い囁きに、涙の理由が一瞬で変わった。
尊い二人の幸せが、
ロゼリスたち自身の未来と重なって見えた瞬間だった。
***
こうして
ロゼリスの大切な“推しカプ”は、
現実の世界で正式に夫婦となった。
(胸がいっぱいで、幸せすぎますわ。
私たちの未来も、こんなふうに輝いていけたら、いいですわね…。)
そう心から願いながら、ロゼリスはそっとアーロンの手を握り返した。




