過保護すぎる殿下に困っています
軽い散歩程度なら問題なく歩ける、はずなのだが。
「殿下〜〜!!下ろしてくださいまし!!
私はもう一人で歩けますわ〜〜!!」
廊下に響くロゼリスの情けない叫び。
しかし彼女を軽々と抱き上げるアーロンは、まったく耳を貸す気がない。
「暴れるな。危ないだろうが。」
「暴れてませんわ!下ろしてくださいと言っているだけですの!!」
「それを暴れると言うんだよ。」
アーロンは、ロゼリスの抗議を完全に無視して歩き続ける。
腕の中の彼女の体重など、羽のように軽いとでも言いたげだ。
そして、ごく自然な顔で言う。
「婚約者なんだから黙って俺の腕の中にいろ。
ほら、こうして抱えてるんだ。盛大に甘えてもいいんだぞ?」
ロゼリスは真っ赤になり、アーロンの胸元をぽすぽすと叩いた。
「こ、こんな……ひ、人が見ていますのに……は、恥ずかしいですわぁぁっ……!」
しかしアーロンは、そんな反応さえも嬉しそうに笑って受け止める。
(な、なんですの……この過保護っぷり……!
好きですけれども!好きですけれども……!!)
やっと自室に着き、ベッドへと座らされたロゼリスは
ふくれっ面でアーロンを見上げた。
「殿下……好きですよ?」
ぽつりと、心の奥の言葉を落とす。
そしてロゼリスは、アーロンの頬に軽く、ちゅ。とキスをした。
アーロンは一瞬、呼吸を忘れた顔をして目を見開いたが……すぐに、ロゼリスの大好きな笑顔を浮かべた。
「……俺も愛してるぞ、ロゼリス。」
次の瞬間、後頭部へそっと手が回り、深く、甘く、温かいキスが落ちる。
「ん……っ……殿下……っ。
や、病み上がりに、こ、こんな……キスは……だめです……」
名残惜しげに唇が離れると、アーロンはロゼリスの額に自分の額を重ねた。
「ロゼリス。」
低い声。胸に響くほどの真剣さ。
「俺の誕生日に……正式に婚約を復活させたいと思う。」
ロゼリスの瞳がぱちりと開く。
「も、もう一度……正式に……?」
「ああ。そもそも婚約破棄は、お前が言っただけで……
陛下は一ミリも破棄するつもりはなかったらしい。」
「えっ……じゃあ……」
「だから、形式上はまだ俺の婚約者のまま。
でも……これは俺のケジメだ。
改めて、正式に婚約を復活させたい。
お前に……ちゃんと“迎えに行きたい”。
覚えておいてくれ。」
ロゼリスの顔がぱあっと花が咲いたように明るくなる。
「殿下……!
いえ……アーロン様……!
ありがとうございますわ……!」
喜びに震えるロゼリスに、アーロンは軽くちゅ、と口づけを落とす。
そして悪戯っぽく囁いた。
「正式に婚約復活したら、“殿下”呼びは禁止だ。」
「えっ!?」
「俺の名前で呼べよ。“アーロン”って。」
ロゼリスの耳まで真っ赤に染まる。
「で、できませんわ!そんな恥ずかしい……!」
「……できなかったら、お仕置きだな。」
「お、お仕置き……?」
アーロンは、わざと甘い声で耳元へ口を寄せる。
「一日中、離さず……ずっとキスする。」
ロゼリスは、真っ赤な顔のまま布団に飛び込み
「ア、アーロン様……っ……!
ず、ずるいお方ですわぁぁ……!!」
布団の中でくるんっと丸まり、悲鳴のような声を上げた。
アーロンはそんなロゼリスを見て、
心の底から幸せそうに笑ったのだった。




