帰ってきた日常、取り戻した笑顔
リリネは国王の裁断により、王城で罪状を読み上げられたあと、国外永久追放の命を受けた。
泣き叫び、喚き散らす彼女の姿は誰の同情も買うことなく、重厚な扉の向こうへと連れ去られていった。
***
一方そのころ、王宮の一室。
ロゼリスは驚異的な回復を見せていた。
元々の体力もさることながら、彼女の生命力は誰よりも強い。
アーロンは、日に日に血色が戻り、表情に明るさが戻っていくロゼリスを見て、安堵と驚きを隠せなかった。
そんなある日のこと。
「ロゼリス嬢、ルチア様がお見舞いに来たいそうだ。」
アーロンが告げると
「えっ…!ルチア様が!?もちろんですわ!ぜひ会いたいです!」
ロゼリスはぱっと花が咲いたように明るい表情になり、勢いよくベッドから飛び起きた。
そのまま部屋を出ようとするロゼリスの腕を、
アーロンが慌てて掴む。
「まっ……待て待て待て!
まだ回復しきってないんだから、お前は寝てなきゃダメに決まってるだろ!」
ロゼリスは「でも!」と口を開くが、アーロンは彼女の額をそっと押し戻し、困ったように眉を下げる。
「ルチア様は俺が呼んでくる。
だから……お前はちゃんと寝てろって。」
そう言って、彼はとても優しい手つきでロゼリスの頭を撫でた。
ロゼリスは小動物のように目を瞬き、素直に布団へ潜り込む。
***
ルチアが現れると、部屋の空気は一気に華やいだ。
ふたりは笑顔で再会を喜び、推しカプ談義が始まる。
ルチアがほんの少し照れながら婚姻式の準備の話をすると、ロゼリスの瞳はキラキラと輝きを増した。
「まぁぁ!ルチア様とシルビア殿下の婚姻式……っ!
きっと素晴らしい式になりますわ!わくわくが止まりませんっ!」
「ロゼリス嬢、そんなに目を輝かせないでください…照れます…」
と耳まで赤くなるルチア。
その横で、アーロンは命を吹き返したように笑うロゼリスを見つめ……胸の奥が温かくなっていった。
(ああ……戻ってきた。
俺の大切な日常も……この笑顔も……
やっと、取り戻せたんだ。)
ロゼリスの笑顔は、アーロンにとって最も大切な“光”だった。
***
ルチアが部屋を去った後、静けさが戻り、二人きりの空気が満ちる。
ロゼリスはベッドに腰掛け、微笑みながら言った。
「推しの力は偉大ですわね……。
なんだか体が軽くなってきた気がしますもの。」
その無邪気な笑顔に、アーロンは息を呑んだ。
「……そっか。よかった。」
ロゼリスが何気なくベッドの上で毛布を整えるたび、
アーロンの視線は自然と彼女へ吸い寄せられる。
どんな傷跡も、どんな涙も、今、この笑顔のために全部忘れさせてやりたい。
ロゼリスが気づけば、アーロンはすぐそばに立っていた。
「アーロン殿下……?」
アーロンはしゃがみ込み、そっとロゼリスの手を包み込む。
「ロゼリス……。
お前が笑ってくれるだけで……こんなにも救われるんだなって……今日、改めて思った。」
真っ直ぐな瞳。
揺るぎない熱。
「だから……これからは、“甘える側”にもなれよ。
全部、俺が支えるから。」
ロゼリスの頬が赤く染まる。
「……では、少しだけ……甘えても、いいですの……?」
アーロンは微笑む。
「少しじゃない。
ずっと甘えていい。」
その手が、そっとロゼリスの頬へ触れ
二人の距離は、自然とゆっくり縮まっていった。




