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推しに心配される奇跡、尊さで、昇天寸前ですわ!!

保健室の窓から差し込む陽射しが眩しい。

ロゼリスはベッドの上で、鼻に詰めた脱脂綿を指でちょん、と押さえながらぼんやりと天井を見つめていた。


(いやはや……私としたことが、推しの尊さのあまり、鼻血を出して倒れるとは。

まだまだオタクとしての尊さ耐性が足りませんわね……)


自省なのか誇りなのか分からない反省をしながら、

ロゼリスは保健医の先生に丁寧に礼を言い、軽やかに保健室を後にした。


(推しカプ初接触イベントをこの目で見届けられた……。はぁ、今日という日を永遠にカレンダーに刻みたい……!)


そんな幸せの余韻に浸りながら、

ロゼリスは「ふんふん♪」とご機嫌に鼻歌を歌いながら廊下を歩いていた。


その時


「ロゼリス様!」


澄んだ声が耳を打つ。

振り返れば、トパーズ色の瞳を輝かせた金髪の天使――リーナス・ルチアルーアン様が駆け寄ってくるではないか。


(!?!?!?!?!?!?!?)

(幻覚!? ルチア様が走ってくる幻覚!? 尊ッ……走っているのに美しいって、どういう物理法則!?)


混乱しながらも立ち尽くすロゼリスに、ルチアが息を整えながら話しかけてくる。


「鼻血を出して、保健室に運ばれたと聞いて……心配していましたの。

ごめんなさい。私の魔力の調節が上手くできなくて……爆発まで起こしてしまって……。

ロゼリス様、私を守ろうとしてくださったでしょう?」

「あの……その、ロゼリス様が助けてくださって……本当に、嬉しかったんです」


(………………???)


ロゼリス、完全に思考停止。

なぜなら今、彼女は――推しが自分を心配してくれているのだ。


(え、私、いま……推しに心配されている!?!?!?)


目の前の女神を前に、ロゼリスの脳内は白い光に包まれた。


「そ、その! 全然!! 鼻血ももう止まりましたし、大丈夫です!

ルチア様に怪我がなくて、本当によかったですわ!!」


ロゼリスが慌てて笑うと、ルチアもほっと微笑んだ。

その微笑みはまるで花が開くようで――ロゼリスはまた鼻血を出しかける。


「ふふ……。シルビア様が助けてくださったのです。

本当に……素敵な方ですわ……」


ルチアは頰を赤らめ、胸の前で手を組む。


(おおおおおおおおお!!!!!)

(これ!! これが恋の芽生えイベント!?!?!? ルチア様からシルビア殿下に恋愛フラグが立った瞬間ですわ!!!!!!)


ロゼリスは震える手で胸を押さえ、感動で涙目になりながら微笑んだ。


「シルビア殿下は、本当に素敵な方だと私も思いますわ。

私、ルチア様とシルビア殿下の恋を全力で応援していますからね!」


ルチアは少し驚いたあと、ぱぁっと笑顔を咲かせた。

その笑顔があまりにも眩しくて、ロゼリスは思わず両手を合わせる。


尊いぃぃぃぃ!


二人の間には、すでに淡い絆が生まれていた。

それを見届けて、ロゼリスは心の中で拍手喝采を送る。


(尊き推しカプ……今日も世界は美しい……!)


一方その頃。

廊下の陰から、ロゼリスとルチアのやり取りをじっと見つめる影があった。


第二王子アーロン・ジークス。


彼の視線は、ルチアではなく、ルチアと談笑するロゼリスに向けられている。


彼女は今まで見たことのない表情で笑っていた。

柔らかくて、優しくて――まるで春の光のように穏やかだった。


「……なんで笑ってんだ、あいつ……」


胸の奥が、ちくりと痛む。


「……あんな顔、俺には見せないくせに……」


その言葉は、誰にも聞かれず、風に溶けて消えていった。

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