君を護りたい、ただそれだけ
ロゼリスの胸が、かすかに上下している。まだ、生きている。
アーロンは震える息を吐き、彼女の身体に自分の上着をかけた。
「……やっと見つけたんだ。
絶対に、死なせない」
ロゼリスをしっかり抱き抱えると、馬に飛び乗り、王宮へ向けて走り出した。
雪を蹴り、風を裂き、ただ一つの願いだけを抱いて。
◆
王宮に着くと、アーロンは自室のベッドにロゼリスを寝かせた。
すぐに城医を呼び寄せ、薬を煎じ、手当ての準備を始める。
震える手で、ロゼリスの傷にそっと触れる。
冷たい肌。
動かないまぶた。
かすかにかすかに続く息。
アーロンの胸が痛みで軋んだ。
濡らした布で血を拭うたびに、堪えていた涙が頬を伝う。
「ロゼリス……
本当に、生きていてくれてよかった……」
唇が震え、声も掠れた。
「痛い思いをさせた……すまない……
もう二度と……こんな目には遭わせない。
絶対にだ」
彼は丁寧に、丁寧に薬を塗り、包帯を巻いていく。
ロゼリスの指が冷たすぎて、怖くなるほどだった。
「……ロゼリス。
どうしようもないほど、愛している」
その言葉は、誰に向けたものでもない。
彼女に届くことを願う祈りだった。
「だから……目を覚まして。
これからもずっと、そばにいてほしい」
◆
煎じた薬を口元へ運ぶが、ロゼリスは弱々しく身じろぎし、薬が零れ落ちてしまう。
アーロンは少しだけ目を伏せ、覚悟を決めるように息を吸った。
自分の口に薬を含み、
ロゼリスの唇に優しく、触れるように口づけて、薬を飲ませた。
彼女を救いたい、それだけ。
アーロンはロゼリスの手を包むように握りしめ、その脈を確かめ続ける。
その鼓動は弱いが、確かにそこにあった。
「……ロゼリス……」
◆
「さ……寒い……
殿下……助けて……」
震える寝言。
苦しそうな顔。
アーロンの胸が、また痛んだ。
「……大丈夫だ。ここにいる。離れない」
ベッドにそっと滑り込み、ロゼリスを胸に抱き寄せる。
温もりを分け与えるように、優しく包み込む。
すると
ロゼリスの表情が少しずつ和らぎ、呼吸が静かになっていく。
安心したように、彼女は深い眠りへ落ちていった。
アーロンはその髪を撫でながら、静かに目を閉じる。
食事も休息も忘れ、アーロンは夜通し看病を続けた。
◆
その頃、捕えられていた殺し屋クロウから証言が入った。
「……リリネという女に……雇われた……」
これまでの襲撃、刺客、誘拐、すべての線が、一点に繋がった。
リリネ嬢は、自分の罪を必死に否定したものの、
証拠と証言は揃いすぎていた。
逃れることはできず、彼女は投獄された。
ロゼリスに向けられた全ての悪意は、暴かれた。
そしてアーロンの腕の中には
確かに、守るべき“最愛”がいる。




