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やっと見つけた最愛の人

「死ね……!」


クロウがナイフを高く振り上げた瞬間


カキィンッ!


鋭い金属音が雪原に弾けた。

クロウのナイフは弾き飛ばされ、雪に突き刺さる。

突風のような熱気。

白い世界を紅く染める炎。


そこに立っていたのは、炎を剣に纏ったアーロン。

その赤い瞳は、獣のような怒りで燃えていた。


「ロゼリス!!」


アーロンは雪に横たわるロゼリスのもとへ駆け寄り、そっと抱き上げた。


腕の中にある身体は、氷のように冷たい。

顔には赤いあざがいくつも残り、

口元には乾いた血がつき、

拘束されていた手首には深い傷跡が滲んでいる。


まだ足には、鎖がついたまま。

それを見た瞬間、アーロンの呼吸が止まった。


「……ロゼリス……」


ロゼリスはアーロンの腕の中で、ほとんど力の入らない手を伸ばし、かすかに、微笑んだ。


「アーロン……殿下……

見つけて……くださって……

ありがとう……ございます……」


その声は震えていて、途切れ途切れで、痛々しいほど弱い。


アーロンの中で、何かが音を立てて切れた。


殺意が、燃え上がる。


「…………誰だ」


低く、地を這うような声。


「誰だ……ロゼリスに触れた奴は……

こんな目に……合わせた奴は……」


炎の剣が、怒りでさらに激しく燃える。


「俺が処刑してやる」


クロウはその気迫に、骨の芯まで震え上がり、後ずさった。

だがロゼリスは、震える指でアーロンのシャツをつかむ。

その手は、氷のように冷たかった。


「……私は……大丈夫……です……

殿下が……来てくれたから……

だから……お願い……

怒らないで……

……離れず……

そばに……いて……ください……」


その震える声がアーロンの胸に刺さる。

怒りが、涙に溶けた。

アーロンは彼女を強く、抱きしめた。


「……よかった……

生きててくれて……っ……」


彼の腕は震えていた。

肩が揺れ、声も掠れている。

ロゼリスの温度を確かめるように、必死に抱きしめながら。


「本当に……よかった……」



腰を抜かし、怯えたクロウは

アーロンが連れてきていた王国騎士団により、その場で拘束される。


雪原に吹く風が、ようやく冷たさを取り戻す。

ロゼリスは、アーロンの胸元に顔を預けたまま

静かに、息を落としていった。

意識を失ったロゼリスを、

アーロンは抱きしめ続けた。


どれだけ震える腕でも。

どれだけ胸が苦しくても。


もう絶対に離すものかという強い想いだけが、アーロンを支えていた。

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