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凍てつく雪の中で

どれほどの時間が経ったのか。

廃墟の割れた窓から吹き込む冷気は、容赦なくロゼリスの体温を奪っていく。


ひどい空腹。

凍える寒さ。

意識は霞み、視界は白く滲んでいる。


それでも消えかけた心に浮かぶのは。

アーロン殿下の、優しい笑顔。

大切な推しカプの未来。

自分を必要としてくれる人たち。


(……あぁ、殿下……。

どうか……どうか、ご無事で……)


その想いだけが、ロゼリスを生かしていた。



ロゼリスは一晩中、自身の魔力を結界へと注ぎ続けていた。

その魔法は特殊で、使えば使うほど体力を激しく削る。


すでに指も震え、唇は紫色になり、呼吸だけがか細く続いている。


「……っ……あと少し……ですわ……」


結界に、ようやくヒビが入った。


その瞬間、ロゼリスの胃がひっくり返るような吐き気に襲われる。

だが、弱音は飲み込んだ。


(こんなところで……終わるわけにはいきませんの)


アーロンに会いたい。

ルチア様とシルビア様の幸せを見届けたい。

婚約破棄を撤回する未来を、自分の口で殿下に伝えたい。


そのすべてを胸に、ロゼリスは、最後の魔力すべてを、結界へ叩きつけた。


眩い光が走り、結界は砕け散る。


(……これで……外へ……)


膝が抜け、床に手をつく。

しかしロゼリスは、這うようにして廃墟の出口へ向かった。



外に出ると、そこは純白の世界。

雪は静かに降り続け、風は鋭い刃のように肌を刺す。


ロゼリスは一歩踏み出した瞬間、ふらりと足を取られ

雪の上へ倒れ込んだ。


「……あ……冷た……」


それ以上、体は動かなかった。


視界の隅で雪がゆっくりと降り積もる。

まるで世界が自分を静かに飲み込んでいくようだった。


(殿下……アーロン殿下……

……会いたい……触れたい……

抱きしめられたい……

今……この時も……

心から……愛しています……)


そのとき、雪を踏みしめる音が近づく。


ザッ……ザッ……


人影が近づき、ロゼリスの視界に黒い靴が映る。

見上げる力もない。

ただ、冷たい気配だけがわかった。


魔法の効力が切れ、人間に戻ったクロウがそこにいた。


「……逃げるとは。しぶとい女だ」


クロウはロゼリスの首元に刃物を突きつける。


その冷たい光は、まるで命の終わりを告げる刃。


(……あぁ……

本当に……ここで……終わりかもしれませんわ……)


ロゼリスはそっと目を閉じた。

頬を一筋、涙が伝う。


雪の白さに、その涙が静かに吸い込まれた。

そして意識は、ふっと闇に落ちた。


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