決死の捜索
ロゼリスの執事キースを筆頭にアーバートン邸の従者たち。それに数人の騎士、そしてアーロンが率いる王国騎士団。
総力戦で朝から晩まで王都とその外れまでを捜索した。
だが見つからない。
時間だけが無慈悲に流れていく。
ロゼリスが行方不明になってから、四日が経とうとしていた。
アーロンの身体は、限界を超えていた。
まともに食事も取らず、睡眠もほぼゼロ。
疲労とストレスで免疫は落ち、ついに熱を出した。
視界がぼやけ、足元がふらつく。
(くそ……! なんでこんな時に……俺は……)
額を押さえながらも、胸の奥で思い出が次々と溢れ出す。
ロゼリスの笑顔。
馬車でのひそやかな会話。
膝枕で微笑んでくれた優しい顔。
邸に着いてからも、離れがたくて繋ぎ続けた手。
照れながら愛を受け止めてくれる、あの真っ赤な頬。
全部、全部がたまらなく愛しい。
(ロゼリス……俺は、お前がいない世界なんて……)
胸が締め付けられ、息が漏れる。
(耐えられねぇよ……)
アーロンの目から、熱とは別の涙が落ちた。
「……ロゼリス……」
立ち上がる。
熱で身体は鉛のように重く、眩暈が襲う。
それでも足は止まらなかった。
「探しに……行く……!」
部屋から出ようとしたその時
「殿下!!」
護衛騎士ルミナスが、必死にアーロンを押し止めた。
「そんな状態で外に出るなど自殺行為です! どうか休んでください!!」
「どけよ、ルミナス!!」
アーロンは怒鳴り、涙がこぼれる。
「ロゼリスが……どこかで痛い思いしてるかもしれねぇのに……俺が寝てるなんて……できるか……!」
その必死な声に、ルミナスの目も揺れる。
「ですが――ここから先には絶対に行かせません!!」
「……っ!」
「殿下がお休みの間に、必ず我々騎士団がロゼリス嬢を見つけ出します!
ですから……どうか……どうか御身をお大事に……!」
アーロンの肩が震えた。
「ロゼリス……ロゼリス……」
「どこなんだよ……俺は……お前に会いてぇよ……」
涙を流しながら、アーロンはルミナスの肩に崩れ落ちた。
◆
その時
重い扉が開き、凛とした声が響く。
「アーロン! 何をしている!」
シルビア殿下だった。
弟を見下ろしたシルビアの表情は、見たことがないほど険しい。
「お前がここまで取り乱すとは……」
シルビアはゆっくりアーロンに歩み寄り――肩を掴んだ。
「気持ちは痛いほどわかる。だが、まずは休め。
ロゼリス嬢の捜査には、私も加わる。」
その言葉に、アーロンは力尽きたように立ち尽くした。
シルビアに支えられながら部屋へ戻る途中
アーロンは弱った声で呟いた。
「兄上……俺……悪いことばっか考えちまうんだ……」
赤い瞳に涙が溜まる。
「もしロゼリスを失ったら……俺はどうしたらいい?
ロゼリス以上に愛せる人なんて……いない……
ロゼリスがいない世界なんて……生きていたくねぇ……」
シルビアは一瞬だけ息を呑んだ。
そして、幼い頃と同じようにアーロンの頭に手を置いた。
「……悪い想像をするのは、熱のせいだ。」
「兄上……」
「そして、ロゼリス嬢は弱くない。
一番近くで見てきたお前なら知っているだろう?」
アーロンの瞳が揺れる。
「俺の全てを使って捜す。
だからお前は休んで備えろ。」
静かにベッドに横たえられたアーロンは、力なく目を閉じた。
シルビアが部屋を出ていったあと、ひとり、天井を見上げて涙を零す。
(ロゼリス……どうか……生きててくれ……)
祈り続け、願い続け、アーロンは涙を流しながらゆっくりと眠りに落ちた。
明日こそ彼女を見つけるために。




