殿下の溺愛と、ロゼリスの護らねば魂が疼く日々
アーロン殿下の怪我が癒え、
ロゼリスがアーバートン邸へ戻ってから数日。
学院では、いつも通り――いや、ある意味“平常運転”ともいえる光景が広がっていた。
ロゼリスは教室の窓際からじぃっと見つめる。
視線の先には、仲良く談笑するシルビア殿下とルチア様。
麗しい二人が並ぶ姿を拝みながら、頬を紅潮させる。
「尊い……っ!!今日もお美しい……!!」
机に突っ伏して悶えるロゼリス。
その様子を見て、アーロンは……ただただ甘い目を向けていた。
(……俺の婚約者、可愛すぎねぇ?)
最近のアーロンは完全に“盲目の男”である。
ロゼリスが笑えば可愛い。
頬を染めれば愛しい。
尊み補給で床を転げ回れば……それすらも愛おしい。
(尊みで転げ回る姿まで可愛いって……俺、もう終わってんだろ……)
むしろ幸せそうに微笑んでいる。
全部全部、愛おしくて仕方がない。
(……ほんと、好きだわこの子。
日に日に惚れ直すんだけど、どうすんの俺。)
ロゼリスがどれだけルチア様やシルビア殿下への愛を語っても、アーロンだけは微笑んで言う。
「ロゼリス。」
「? 殿下、どうされま――きゃっ!?」
腰を抱き寄せられ、胸元に引き寄せられる。
アーロンは幸せそうに呟いた。
「……今日も可愛いな、俺の婚約者。」
ロゼリスの顔は一瞬で真っ赤になる。
「~~~っ!? で、殿下!
私はシルビア殿下とルチア様の観察途中で――!」
「うん。頑張れ。
…でも、無理はするなよ。俺の大事な婚約者なんだから。」
ふわっと甘く微笑むアーロン。
ロゼリスの心臓は、ルチア様尊みの時とは別ベクトルで跳ね上がった。
⸻
その日の放課後――。
ロゼリスはアーバートン邸の自室で、ベッドの上をころころ転がっていた。
「キャーーー!!ついに来ましたわ!!
シルビア殿下卒業イベント!!!」
顔がとろけるように緩む。
そう、彼女――ロゼリス・アーバートン(中身転生者)――にとってこれは大切な“大イベント”。
三年生であるシルビア殿下がついに学院を卒業する日。
そしてその式典で――。
「婚約者のルチア様が白薔薇の花束を渡して……
シルビア殿下がルチア様の手を取って……
『君が卒業したら、王妃として迎えたい』
って愛の告白をするのよ!!キャーー!!尊すぎる!!」
ベッドの上でばたばたと両手両足を動かし、
クッションに顔を埋めて悶絶する。
尊死寸前である。
だが、ふにゃりと緩んでいた顔は、
急にきゅっと真剣になった。
「……この幸せなイベントを遂行するためにも、
リリネ嬢の企みを阻止しなければいけませんわ……!」
脳裏に浮かぶのは、ゲーム内で起きた“ルチア誘拐事件”。
リリネは嫌がらせがことごとく失敗すると、
ついに殺し屋を雇って行動に出た。
シルビア殿下卒業後、学院の外でルチア様を拉致。
そのせいでシルビア殿下は泣きながら駆け回り、
必死の推理で彼女を救い出す――という展開。
ロゼリスは手を握りしめ、ぴしっと決意に満ちた顔をした。
「私がいる限り、そんな悲しい事件は起こさせませんわ!!
絶対に阻止してみせますわ!!」
鼻息が強い。
「対策としては……まずルチア様のそばを離れないこと。
シルビア殿下が卒業なさる以上、私がルチア様の護衛を務めるしかありませんわ!」
“敬愛する二人の愛のためなら、何だっていたしますわ!"
という強い意志が燃えていた。
(必要とあらば、もふもふの力も使うことにしましょう!)
頼もしいんだか可愛いんだか、よくわからない。
「リリネ嬢……私がいる限りルチア様には指一本触れさせませんわ……!」
拳を握りしめ、背後には“ゴゴゴゴ”と擬音が似合いそうな勢いが醸し出していた。




