表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/69

取り戻した平穏な日々

アーロンの看病という名のもと、いつの間にか同じベッドで眠るのが“当たり前”になっていたロゼリス。

だが夜の入浴後、ふと正気に返る。


(さすがに……婚前ですのに……!

いくら婚約者とはいえ、これは自重すべきですわ!)


意を決したロゼリスは、そっとソファに横たわった。

だが

(……眠れませんわ……!)

(殿下の腕の中で寝るのに慣れすぎてしまいましたわ……!

どうしましょう、わたくし、殿下依存になってしまいましたわ!!)


ソファでゴロゴロしながら、ついついアーロンの寝室をチラチラ見るロゼリス。


そんなとき、足音が近づいてきた。


「ロゼリス……今日はここで寝るのか……?」


寝室の扉の前に立つアーロンは、肩を落とし、しゅんとした表情、まるで雨に濡れた子犬。


「そ、その……婚前に床を共にするのは、やはりよろしくないかと思いまして……」


「俺は……もうお前がそばにいないと眠れない。

だから……来てくれないか?」


(!?そ、そそそそそんな、子犬みたいな顔で見つめないでくださいまし!!もう〜〜!降参ですわ!!)


ロゼリスは完全に白旗を上げた。


アーロンのベッドに戻ると、アーロンは嬉しそうにロゼリスを抱き寄せた。


「やっぱり、お前がそばにいるとよく眠れる。……おやすみ、ロゼリス」


額に落とされる優しいキス。

胸がきゅんと甘くなる。


「ふふ……アーロン殿下、おやすみなさいませ」


ロゼリスもアーロンの胸に顔を埋め、静かに微笑んだ。

温かい胸、心音、腕のぬくもり。


(やっぱり……わたくしも殿下のそばが、一番落ち着きますわ……)


ロゼリスはそのままアーロンを抱きしめ返し、眠りに落ちた。


***


翌朝。

アーロンは珍しく早く目を覚ました。


「……動けねぇ……」


腕も腰も、ぎゅ~~~っとロゼリスに抱きつかれていて、完全に拘束状態。


「離れろ、ロゼリス……可愛いけど……起きられねぇ……」


そっと腕を外そうとすると


ぎゅうううっ。


さらに強く抱きしめられた。


そして寝言。


「んぁ……もう少し……殿下……好き……」


アーロンの心臓は爆発した。


「……くっ……ロゼリス……!

可愛い……可愛すぎる……!」


ベッドの上で悶え苦しむアーロン。

その気配でロゼリスがぱちりと目を開く。


「殿下!?どうなさいましたの!?どこか痛みますの!?怪我が……!?」


寝癖の髪をばさばさ揺らして慌てるロゼリス。

アーロンは顔を覆って呻いた。


「……違う……」

「え?」

「お前が可愛すぎて、愛おしすぎて……痛い……」


「~~~~~っ!!!」


ロゼリスの顔が一瞬で真っ赤に染まり、今度はロゼリスが悶えた。


その朝、寝室からは、甘すぎる悲鳴と笑い声がしばらく止まなかったという。


***


そのまた別の日の朝、アーロンは寝台の縁に腰掛け、ロゼリスは目の前で丁寧にネクタイを結んでいた。


「殿下、じっとしていてくださいまし!ネクタイが結べませんわ!」


真剣そのものの表情で、細い指が器用に布を操るロゼリス。

けれどその距離は近い。あまりにも近い。


うるうるとした瞳。

少し開いた唇。

首元にかかる甘い吐息。

髪からふわりと香る薔薇の匂い。


(……そんな顔で近づくな……反則だろ……)


アーロンはもう限界だった。


ネクタイが締まるより先に、彼の心が締め上げられてしまう。


「……ロゼリス」


「はい?」


「好きな女にそんな顔されて、耐えられると思うか?」


「へ――?」


問いを最後まで聞く前に、アーロンはそっとロゼリスの腰を引き寄せた。

後頭部に手を添え、逃げられないように優しく包み込み

深く、甘いキスを落とした。


「んっ……!?」


突然の口づけにロゼリスは目を見開き、真っ赤になってアーロンの胸をぽかぽか叩く。


「で、殿下っ……!あ、あさ……っ!」


アーロンは微笑みながらキスをゆっくりとほどき、額をこつんと重ねた。


「朝でも夜でも関係ない。俺の婚約者なんだから、キスくらい普通だろ?」


「ふ、ふつうじゃ……ありませんわぁ……!」


ロゼリスが恥ずかしさのあまり震えだしたその瞬間――


「おはようございま――って、いやいやいやいや!!!」


ドアを開けて飛び込んできたルミナスが絶叫した。


「朝からなにをしてるんですか殿下!!!

本当にあなたという方は!!今回は何回目ですか!?毎日毎日!!」


ぱんぱん、と怒りに震えながら手を叩くルミナス。


ロゼリスは羞恥心の限界で、きゅうっとしゃがみ込み、手で真っ赤な顔を覆っている。


「うぅぅ……し、死にますわ……恥ずかしくて……」


アーロンはというと


「婚約者にキスして何が悪い?」


開き直っていた。完全に。


「悪いとかじゃなくて!!ロゼリス嬢が毎度思考停止してるでしょうが!!

もう少し相手の心臓の強度を考えてあげてください!!」


「ロゼリスの心臓は強い。俺が保証する」


「いや全然強くないですよ!?毎回固まってますよね!?可愛さで処理落ちしてるんですよ!!」


アーロンは涼しい顔でロゼリスの肩に上着をかけ、そっと手を引き起こす。


「大丈夫か?」


「……だ、大丈夫ではありませんわ……」


「可愛いな」


「殿下ぁぁぁぁぁ!!」


朝から、アーロンの部屋は騒がしく、甘く、幸せに満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ