表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/69

甘くて近すぎる看病ー君に触れたくて

アーロンの傷は、王宮専属治癒師の魔術と、ロゼリスの必死の看病によって驚くほど順調に癒えていった。


だが、アーロンの心は、まったく休まる暇がなかった。


なぜなら。


「殿下! お熱を測りますわ!」


いつものように朗らかな声を響かせて、ロゼリスがアーロンへ近づく。


次の瞬間、彼女の額がアーロンの額に軽く触れた。


……触れた。


距離は指一本分どころではない。

息が触れそうなほど近い。

まるで、キスの直前のように。


アーロンは心臓が跳ね上がるのをどうにも抑えられなかった。


(ちょ、ちょっと待て……!!

こんな距離……男なら誰だって、理性が吹き飛ぶだろ……!!

俺は傷の治療中だぞ!?

いやでもロゼリスは真剣に看病してくれてるのに……なんで俺はキスしたいとか思っちまうんだよ!!)


ロゼリスはまっすぐで、純粋で、優しい瞳で見つめ返す。


「お熱はありませんわ! 良かったですわ!」


にっこりと笑うロゼリスに、アーロンは胸が詰まりそうになる。


(……ああもう……その笑顔ずるいだろ……)


気を紛らわせるように、アーロンは視線をそらす。


「起き上がるときは、必ずお支えします!ですから、無理に動かないでくださいましね!」


そう言って、ロゼリスは慣れた手つきで薬を煎じ始めた。


***


アーロンが刺された事件はすでに国王の耳に入り、王宮を巻き込んだ大捜査となった。

刺客は全員死亡しており、黒幕はいまだ掴めていない。


だが、被害がアーロンだけで済んだことは、不幸中の幸いだった。


兄である第一王子とルチアが口をそろえて言っていた。


「ロゼリス嬢の誘導が素晴らしかったのだ」と。


そしてルミナスは、ロゼリスが国王に直談判した話をしてくれた。


『アーロン殿下の傷が塞がるまで、殿下の私室で看病させてくださいませ!』


元々国王も呼び寄せるつもりだったらしく、むしろその“必死な願い”に驚いたという。


“お前は愛されているな”


国王からそう言われた時、アーロンは顔に出さないまでも、心の奥が一気に熱を帯びた。


ロゼリスが自分を愛してくれている、その事実は、何よりの回復薬だった。


(……本当に……ロゼリス……

今すぐ抱きしめて、キスのひとつでもしたい……好きだ……)


だが、やれば間違いなく怒られる。


『殿下! まだ傷が塞がっていませんのに!!』


と、ぷくっと頬を膨らませて。


その顔を想像するだけで、胸が苦しくなるほど愛しい。

アーロンはそんなことを思いながら、深い眠りへ落ちていった。



「お薬、塗りますわね。痛かったら言ってくださいまし」


ロゼリスは穏やかに声をかけ、アーロンの背に巻かれていた包帯を慎重にほどいていく。


脱がされたシャツの下

矢傷の周りはまだ赤く痛々しい。


「すみません……少し沁みますわ」


綿に薬を含ませ、ロゼリスは恐る恐る指先を動かす。

触れる手は驚くほど優しくて。


「……大丈夫だ。ロゼリスがやってくれてるなら、全然痛くない」


その言葉に、ロゼリスはほっと息をつき、微笑んだ。


包帯を巻き直すとき。

その姿はさらに愛おしいものとなる。

ロゼリスがアーロンの背に腕を回し、身体を寄せて巻くからだ。

後ろから抱きしめるような体勢になる。


アーロンは背中どころか心臓まで痛くなりそうだった。


(な、なんでそんな近いんだよ……

心臓が爆発する……!!)


すると、ロゼリスがふいにぎゅっと抱きついてくる。


「アーロン殿下が無事で……本当に、良かったですわ……

こうして触れていると……安心できますの……」


アーロンの呼吸が、止まった。


(む、無理無理無理無理……!!

ロゼリス……そんなこと言われたら……俺の理性なんて一瞬で飛ぶぞ……!?)


着替えのときもロゼリスの動きは丁寧で、距離は常に近い。


シャツ越しに触れる指先。

肩や胸にかすかに触れる柔らかい感触。

そのすべてがアーロンを熱くさせた。


(ロゼリスが触れた場所……全部が熱い……

……どうなってんだ、俺……)


アーロンの鼓動は、傷よりも強く痛むほど激しくなっていた。


ロゼリスがそばにいるだけで。

胸が苦しくなるほどに、愛おしくてたまらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ