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聖夜に蠢く影

舞踏会も終盤に差し掛かり、甘く華やいだ空気が広間を満たしていた。

ロゼリスは、ルチア様とケーキをつつきながら楽しげに笑う。


(ルチア様、本当に美しすぎますわ!!

恋する乙女は綺麗になると言いますが、本当ですわね!!

幸せオーラがまばゆくて、こちらまで幸せになってしまいますわ!)


目をキラキラさせるロゼリスの横で、シルビア殿下は穏やかな目で二人を見守っていた。


一方、アーロンは険しい表情で会場周辺を警戒している。

護衛騎士ルミナスの言葉が頭から離れなかったのだ。


「アーロン殿下、私の勘違いならいいのですが……。

先ほどから、何人か妙な動きをしている者がいまして。

聖夜に何もなければ良いのですが……」


(見張りは増やしている。だが……何か、胸騒ぎがする)


兄シルビアに報告すべきか迷いながら、アーロンは再び会場へ戻ろうと足を速めた。


その頃、ロゼリスは、シルビア殿下とルチア様を眺めていた時、一人の男が異様な気配をまとって近づいてくるのに気づく。


男の手には、光をかすかに反射する刃物。


(!? こちらに向かってきて……っ!?

これってまさか、リリネ嬢が放った刺客!?

ゲーム内の暗殺未遂イベント!!

こんな大事なイベント、なぜ今の今まで忘れていましたの私!?)


悪行が成功しないことに苛立ったリリネ嬢が、最終手段としてルチア様の暗殺を画策する、シナリオ通りなら、これはその始まりだ。


(この男以外にも刺客が紛れている可能性がありますわ!

でも今ここで助けを求めても、“何で知ってるんだ?黒幕か?”って疑われてしまいますわ!

どうしましょう!? 詰んでますわ!!)


テンパりながらも、ロゼリスは二人を庇うように位置取りを変える。

忍足で迫る刺客。

ロゼリスは小さく囁いた。


「……出よ、もふもふの力」


すると刺客の身体がみるみる縮み、ぽちゃん、と床に落ちたのは

小さなカエル。


(よしっ!無力化完了ですわ!)


そのカエルを追いやり、騒ぎになる前に処理できたことにほっと息をつく。

だが


「ぎゃあああっ!」

「敵だ!黒装束だ!!」


広間に突如、複数の黒装束の刺客が乱入した。

生徒たちが逃げ惑い、悲鳴が響く。


(終わってませんでしたわあああ!!!)


向かって来る刺客たち。

ロゼリスはもふもふの力で応戦しながらルチア様を守る。

だが、ひとりの刺客がロゼリスへ刃を振り上げた。

目の前が勢いよく迫る刃。


(あ、刺される!?)


ぎゅっと目をつぶった

……しかし、痛みはこない。


恐る恐る目を開けると、炎を纏った剣が刺客の刃を弾き飛ばしていた。


「アーロン殿下!!」


「間に合ってよかったぜ。

だが……俺の婚約者に手を出すなんて、良い度胸してるな?」


アーロンの双眸には、燃えるような怒りが宿っていた。

すぐ隣には、青い炎を剣に宿したシルビア殿下も現れる。


「アーロン!続くぞ!」


二人の王子による華麗な連携が広間を制圧していく。

ロゼリスはルチア様を連れ、広間の外へ逃す。


廊下では召喚獣が吠えていたが、ロゼリスが力を使い幼獣化させて無力化。

ルチア様とともに生徒たちを誘導し、安全圏へ送り届ける。


やがて、シルビア殿下も戻り、ルチア様を託すとロゼリスは再び広間へ。

そこではアーロンが美しい炎を振るい、次々と敵を倒していた。


「アーロン殿下、加勢しに

って、必要なかったみたいですわね!さすがです!」


そう笑うロゼリスに、アーロンは驚いたように声を荒げた。


「どうして戻ってきた!! 危険なのは分かってただろう!?お前の身に何かあったら……俺は……俺は生きていけない……!」


ロゼリスはきょとんと、そしてすぐに怒りの色を含ませて言い返す。


「そんなの、アーロン殿下が心配だったからに決まっていますわ!

私の身を案じてくださってありがとうございます。

ですが、私よりも殿下の方が遥かに尊いお方でしょう!?

第二王子である殿下の身に何かあった方が大問題ですわ!」


ロゼリスの真っ直ぐな言葉に、アーロンはふっと笑みをこぼし、彼女の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。


「本当に……お前はもう……」


二人が笑いあった、その瞬間だった。


ヒュッ。


死に際の刺客が放った一本の矢。

ロゼリスへ向けられたそれを見て、アーロンが叫ぶ。


「危ねぇ!!」


ロゼリスを強く抱き寄せ

矢は、アーロンの背に深く突き刺さった。


「ア、アーロン殿下!!」


熱い血がロゼリスの腕に落ちる。

聖夜の舞踏会の煌めきが、一瞬で消えていくようだった。

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