転倒阻止!?ロゼリスの華麗なる受け止め
魔窟での戦闘を乗り越えたロゼリスとアーロンは、確かに変わっていた。
言葉少なでも、互いの視線が絡めば頬が熱くなる。
それを見た学院の生徒たちは、きゃーきゃーと黄色い声を上げる。
「見た? あの殿下の笑顔! ロゼリス様と一緒の時だけ柔らかいのよ!」
「やばい! あれ、恋人のオーラじゃない!?」
(アーロン殿下への気持ちももちろん大事ですけれどー。)
ロゼリスは胸の前で拳をぎゅっと握る。
(今の私の使命はただひとつ! ルチア様とシルビア様の恋路を守り抜くことですわ!)
鼻息が荒くなったその時、彼女の頭に、嫌なイベントの記憶がよぎった。
(もうすぐよ……リリネ転倒イベント!)
ゲームで見た、あの“悲劇の乙女演出”。
リリネがわざと転んでシルビアの胸元に飛び込み、
「ルチア様に突き飛ばされたの!」と泣きつく。
それが、二人の間に誤解と亀裂を生むきっかけだった。
(そうはさせませんわ……! リリネ嬢、今日こそその運命、私が止めてご覧に入れますの!)
そして、時は来た。
昼下がりの中庭。花びらが舞う中、リリネが軽やかに歩き出す。
その先にはシルビア、そしてルチアの姿。
(きたわね……リリネ転倒ルート)
リリネはわざと石につまづき――
「あぁんっ、痛いのっ! シルビア様ぁぁ~……!」
と、華麗に(?)前のめりに倒れ込む!
(流石の演技力、女優顔負けね……でも甘いですわっ!)
ロゼリスは地を蹴った。
風が彼女のスカートを揺らす。
その瞬間、彼女の赤い髪が弧を描いた。
「今ですわ――!!」
すっとリリネの背に手を回し、完璧なフォームでキャッチ。
リリネはロゼリスの腕の中でぽすっと収まった。
バランスを崩すこともなく、まるで舞踏会のダンスのように華麗に。
周囲「えっ……!?」「な、何この絵面!?」
ロゼリスは息を整え、
ぱっとリリネを立たせると、にっこりと笑った。
「ふふっ……残念でしたわ、リリネ嬢♡」
リリネの顔が、瞬時に赤から青、青から怒りの紅に変わる。
「なっ……!? あ、あなたねぇぇ!!!」
「ええ、私ですわ♪」
リリネは地団駄を踏み、
「覚えてなさいよ!!」と叫んで走り去った。
風だけが残り、ロゼリスはその場で優雅に髪を払う。
(ふふっ、これで転倒イベントは回避完了ですわね。よかったぁ……)
その一部始終を、少し離れた場所で見ていたアーロンはというと――
剣を持つ手をぽん、と額に当て、苦笑しながらため息をついた。
(……俺の婚約者、かっこよすぎねぇか?)
あの小さな体で魔獣を倒し、今度は乙女をキャッチ?
(かわいいだけじゃなくて、かっこいいとか……もはやなんなんだよ……)
彼の心臓は、戦場よりも激しく鳴っていた。
(好きだ。かわいい。かっこいい。……そばにいたい)
ロゼリスがこちらに気づいて手を振る。
その笑顔に、彼は思わず口元を緩めた。
(もう無理だな……完全に、惚れてる)
風が吹き抜け、花びらが二人の間を舞った。
恋のイベントは、確かに書き換えられていた。




