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魔窟での攻防戦

ロゼリス・アーバートンは、今にも跳ね出しそうな胸を押さえながら、自室でメモを書き込んでいた。


(アーロン殿下のことを考えると、心臓がドキドキして止まりませんわ……。

これが“好き”という感情ということなのでしょうか……!?)


しかしそんな乙女心を落ち着かせる暇はない。

明日はロイエンス学院最大の園外研修、魔窟での魔物討伐の日。

これまで以上に慎重に、計画を立てねばならないのだ。

ロゼリスはノートに、明日の作戦を細かく書き込む。


園外研修・魔窟攻略計画

・リリネ嬢の後をつけ、呪文をかけた魔窟を確認

・ルチア様が入る前に自分が魔窟へ

・必要物品は全てリュックに詰め込む

・万一閉じ込められても、魔力“もふもふの力”で安全確保


(リュックは重くなってしまいましたけれど……仕方ありませんわ。これで一晩魔窟に閉じ込められても大丈夫ですもの!)


◇◇◇


翌日。

誰よりも大きなリュックを背負ったロゼリスは、静かにリリネ嬢の後をつけていた。


(リリネ嬢……一体どの魔窟に呪文をかけるつもりですのか……!)


リリネ嬢は一つの魔窟の前で立ち止まり、細かく呪文を唱える。

それを確認した瞬間、ロゼリスは心の中で決意する。


(よし……ここね。これを放っておけば、ルチア様が閉じ込められてしまうわ!)


誰もいないことを確認すると、ロゼリスはそっと魔窟の中へ足を踏み入れた。


(暗い……。不気味ですわ……。もしお化けとか出たら……!?)


足元の石が、足音に反応するかのようにドサドサと落ちていき、入口が音もなく塞がった。


(やっぱり……人が入ると閉じ込められる仕組みになってるのですわ……!)


魔窟の奥に目を向けるが、魔物の気配はない。

石段に腰を下ろし、重いリュックをぎゅっと抱きしめる。


(身代わりで閉じ込められることにしたのはいいけれど、何もしないのも退屈ですわね……)


そう思った瞬間


魔窟の入り口付近から、コツコツと不気味な音が響く。


「ひぃぃぃ! お化け……!? 幽霊……!?」


思わずリュックを胸に押し付け、身を縮めるロゼリス。


しかし、音はゆっくりと近づいてくる。

その正体は


「……お前、ここにいたのか。」


低く、落ち着いた声。

思わずロゼリスは目を見開く。


そこに立っていたのはアーロン殿下。


「アーロン殿下!? なんでここに……!」


「ふふ、俺もお前の魔窟作戦を阻止するために、ちょっと先回りしただけだ。」


(な、なにを言ってますの!?魔窟に一緒に入るなんて……っ)


アーロンは、ロゼリスのリュックをちらりと見て、にやりと笑った。


「……重そうだな。手伝おうか?」


「い、いえ!私が持ちますわ!」

思わず強くリュックを抱え込み、意地を見せるロゼリス。


しかし、アーロンはぐいっと近づき、ロゼリスの腕にそっと手を添える。


「じゃあ、一緒に行こう。俺も魔窟の中でお前を守るから。」


その言葉に、ロゼリスの心臓は爆発しそうなほど早鐘を打った。


(きゃっ……!?守ってくれるって……!

…まさか、アーロン殿下……私を……意識してくれてますの……!?)


暗い魔窟の中、二人の距離は自然と近づく。

肩が触れ、手がかすかに重なる。


(胸が……ドキドキが止まりませんわ……!

もしかして……私、本当にアーロン殿下のこと……好きなのかもしれませんわ……!)


目の前には、頼もしく微笑むアーロン。

そして、その瞳の奥には、いつもとは違う、少し優しい光が宿っていた。


魔窟の奥深く、静寂を破るように、突然ひんやりした風が吹き抜けた。


「……これは……!」ロゼリスが目を凝らすと、石畳の奥に魔法陣が光っていた。


「ロゼリス、危ない!」

「はいっ!」

アーロンは咄嗟にロゼリスを庇いながら剣を抜く。炎が剣に舞い上がり、魔法陣から飛び出す光の矢を次々と弾き返す。


だが、魔法陣は複雑に組まれており、放たれる光の矢は連射のように次々襲いかかる。アーロン1人では防ぎきれない。


「アーロン殿下、私も加勢しますわ!」

ロゼリスは背中のリュックを地面に置くと、手から黄色い光を放った。

「出よ、もふもふの力!」


魔法の光が魔法陣に触れると、矢は消え、陣は弱体化。陣の中から召喚された黒い魔物が姿を現した。大きな熊のような魔物だ。


「私に任せてくださいませ!」

ロゼリスが光を広げると、魔物はみるみる小さな子熊に変化した。

「くぅ……」子熊はロゼリスの足元にすり寄り、毛並みはふわふわで柔らかい。


「……か、かわいいですわ……!」ロゼリスはすりすりして子熊を抱き上げる。


アーロンはその様子を見ながらふっと笑う。

「……さすがだな…。やっぱりお前は俺の婚約者だ。力も人一倍だし」


子熊が魔窟内を嬉しそうに駆け回る間に、アーロンは魔法陣の前へ進む。

「ロゼリス、陣を完全に封じるには奥まで行く必要がある。危険だが、俺と一緒に来い」

「は、はいっ!」


二人は息を合わせて陣の奥へ進む。光の矢や魔法障壁が次々現れる。アーロンが剣で切り払い、ロゼリスが魔法で包み込む。二人の動きはまるで呼吸を合わせた舞のようだ。


「アーロン殿下が一緒だと、なんだか心強いですわ!」

「俺もだ……お前と一緒だと、何でもできそうな気がする」


魔法陣の中心で、リリネ嬢の幻影が姿を現す。

アーロンとロゼリスは互いに目を合わせ、頷く。


アーロンの炎の剣と、ロゼリスの光の魔法が交錯し、リリネ嬢の幻影を包む。

「これで終わりです!」

ロゼリスが叫ぶと、魔法陣の光は消え、リリネ嬢の幻影も消滅した。


息を切らせる二人の前に、魔窟の静寂が戻る。


「ふぅ……危なかったな……」

「はい……でも、アーロン殿下と一緒に戦えたから、私は……とても安心しましたわ」


アーロンはロゼリスの額にそっと手を置く。

「……お前がそばにいてくれたから、俺は全力を出せた」

ロゼリスの頬が熱くなる。心臓が跳ねる。


「……アーロン殿下……」

「……ロゼリス、これからはお前のこと、絶対に守るって誓ったんだ。」


アーロンはそっとロゼリスを抱き寄せ、二人の額が触れ合う距離になる。

「……ふふ、ありがとうございます。そんなことを言われてしまったら、もうアーロン殿下から離れられませんわ……」

「俺もだ……絶対に離さない」


魔窟の闇の中、二人だけの世界がそこにあった。

戦いの後の息遣い、温もり、そして互いを思う心。すべてが二人をさらに近づけ、確かな絆を結んだ。

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