もふもふ同居!?ロゼリスと子犬アーロン、秘密の夜!
可愛すぎる。
目の前の光景に、ロゼリスは胸を押さえた。
「こ、これがアーロン殿下……? 信じられませんわ……(失礼)」
腕の中の金色の子犬は、くぅん、と小さく鳴いてロゼリスを見上げている。
紅い瞳がきらきらと輝き、ふわふわの尻尾をぱたぱたと揺らす。
「ひゃぁぁぁ……っ、可愛いですわっ! 世界の尊さを凝縮したような存在ですわ!!」
そっと指先で金色の毛を撫でると、子犬――アーロン殿下は気持ちよさそうに目を細め、「わふ」と一声鳴いた。
その姿にロゼリスの理性がどこか遠くに吹き飛ぶ。
(もう……だめですわ……尊い。殿下というより、天使ですわ……!)
◇◇◇
アーバートン邸に戻ると、玄関で出迎えた執事キースが、腕の中の子犬を一瞥した。
「……その犬は?」
「お、お友達の家のワンちゃんを、ちょっとお預かりしているのですわ!」
「……(察した)……畏まりました、お嬢様」
キースはそれ以上何も聞かず、深い溜息をついて去っていった。
(さすがキース、空気が読める男ですわ!)
◇◇◇
ロゼリスの部屋。
ベッドの上に並んで座るのは、ナイトドレス姿のロゼリスと、金色のもふもふ。
「アーロン殿下……ごめんなさい。まさか貴方まで魔法をかけてしまうなんて……」
そう言いながら、そっとその小さな頭を撫でる。
「でも大丈夫ですわ。私が責任を持ってお世話いたしますからね!」
子犬アーロンは、まるで言葉が分かるかのようにロゼリスの指をぺろりと舐めた。
「っ!? い、今……舐めました!? 可愛すぎますわぁぁぁ!!」
ロゼリスはベッドの上で転げ回りながら、子犬を抱きしめた。
そのまま頬ずり、頭なでなで、もふもふ堪能タイム。
もはや殿下への敬意も忘れ、ただひたすらに愛でるのみ。
(ああ……もふもふの神様……今夜は一生分の幸福をありがとうございます……)
◇◇◇
夜。
ロゼリスは柔らかなシルクのナイトドレスに着替え、ベッドの上で穏やかな寝息を立てていた。
その横で、子犬アーロンが体を丸め、尻尾を鼻先にくるりと巻きつけて眠っている。
しかし。
月明かりが差し込む中、子犬の体が淡く光り出した。
毛並みが光に溶け、骨格が人のものへと変わっていく。
数秒後、そこにいたのは素肌に月光を浴びる青年の姿だった。
アーロンは一瞬、頭を押さえながら目を開ける。
「……っ、戻ったのか……?」
視線を横に向けると、無防備に眠るロゼリス。
胸元まで落ちた髪が枕を覆い、薄いナイトドレスの肩口から覗く白い肌が月に照らされていた。
アーロンは息を呑んだ。
心臓が跳ねる。
「……まさか、俺……ロゼリスの部屋で寝てたのか?」
冷静になろうとするが、思い出すのは自分が“犬”としてロゼリスの腕に抱かれていた時間。
頭を撫でられ、抱きしめられ、頬を擦り寄せられ……。
あの柔らかさも、声も、全部覚えている。
「……バカ、俺、何してんだ……」
顔を覆って赤くなるアーロン。
すると、ロゼリスが小さく寝返りを打ち、彼の方へ身を寄せてきた。
無意識のまま、彼の胸元に手を伸ばし、ぎゅっと抱きしめる。
「……もふもふ……逃げちゃ、いやですわ……」
「!?!?!?」
アーロンの理性が吹っ飛びそうになる。
けれど、寝顔を見つめた瞬間、ふっと微笑んだ。
「……全く……お前は本当に……油断ならねぇ」
小さく息を吐き、アーロンは彼女の頭をそっと撫でた。
「……ありがとな、ロゼリス。助けてくれて」
ロゼリスは夢の中で、嬉しそうに微笑む。
「……もふもふ……だいすき……」
その寝言に、アーロンの心臓は限界突破した。
「っ……!!」
顔を真っ赤にしながらも、アーロンは彼女の隣で静かに横になり、瞳を閉じた。
月光の中、二人の距離はほんのわずかに縮まっていた。




